リクルートの研究ラボが開催

全身で体感するスーパーVR体験会。東京から座間味島の海を“バーチャル飛行”

編集部:杉浦 みな子
2016年03月17日
(株)リクルートテクノロジーズの研究開発機関アドバンスドテクノロジーラボは、東京タワーに隣接する東京タワーメディアセンターにて、「未来アミューズメントパーク」と題したVR技術アトラクションの体験イベントを17日・18日の2日間にわたって開催している。

会場では、「視覚・聴覚・触覚を刺激する、VRを超えたスーパーVR体験」をテーマに、VR映像と連動して風や振動を起こす特設装置を駆使した6種類のアトラクションを用意。視覚だけではなく、触感や聴覚も含めた全身で体感できるアトラクションによって、深い没入感を実現するVRエンターテイメントを展開している。記者が体験した内容をレポートしたい。

■座間味島の近海をバーチャル飛行する「座間味島 ロケットジャンプ」

会場内でも特に人気があったのが、「座間味島 ロケットジャンプ」のアトラクションだ。これは、沖縄の離島である座間味島の近海上空を、まるで自分が飛んでいるかのような“バーチャル飛行体験”ができるもので、(株)ハシラスとの技術協力によって実現した。

座間味島 ロケットジャンプのアトラクションの様子

座間味島 ロケットジャンプ

特殊装置に体を固定し、Oculus Riftとヘッドホンを装着すると、体験者の目の前に座間味島の砂浜と青い海の実写風景が広がる。バーチャル飛行の行き先として、慶良間島など3つの島が用意されており、体験者が自分の目線をずらすことで、行き先の島をVR画面上で選択できるようになっている。最終決定の操作は、右手に持ったボタンを押して行う。

目線をずらして行き先の島を選択すると、自分の体がロケット発射したように飛び上がり、行き先の島を目指して飛行がスタートする。目の前の映像と連動して、特殊装置から向かい風が吹いてきたり体が持ち上がったりすることによって、本当に青い海の上を飛んでいるかのような感覚に没入できる。

座間味島 ロケットジャンプの概要

本アトラクションに使われているヘッドマウントディスプレイは「Oculus Rift(Development Kit 2)」で、そこに映し出されているVR映像は、ドローンを使って実際の座間味島近海を空撮した360度映像だ。

ソース映像の撮影時には、Freedom 360製の360度全天球パノラマ撮影マウントを使って、GoProのウェアラブルカメラ「Hero 3 Black Edition」をドローンに合計7台固定し、360度映像を4K撮影した。なおソース映像は4Kだが、視聴時の表示解像度はOculus Rift(DK2)の仕様に準拠することになるので、最大1,920×1080になる。

ドローンによる360度映像の撮影は、通常は専用マウントを使って上下左右前後の6カ所を各1台/計6台のカメラで撮影するのがスタンダードだが、それだけでは上部にあるドローン本体も映像に映ってしまう。そこで、今回の撮影ではドローンのさらに上部にも7台目のカメラを取り付けて、完全に遮るものがない真上の映像まで撮影したことがポイントだ。

これら7台ぶんのカメラ映像をつなぎ合わせて、リアリティの高い360度映像を制作しており、体験者が撮影機材の存在をほとんど感じることなく、バーチャル飛行に没入できるようにしている。なお、今回は映像撮影時にたまたま天気が曇りだったとのことで、撮影機材の影が映像に入りにくかったことも功を奏したそうだ。

装置の仕組みとしては、体験者をハーネスで吊り、テコの原理を利用して後部から人力で持ち上げる。操作者は手元のモニターを見ながら、その映像にあわせて持ち上げ操作を行う。今回のイベントでは、体験者の身長や体重にあわせてファジーな判断が必要になるため人力で行っていたとのことが、将来的には機械制御も可能とのことだ。

こんな感じで、後部から人力で持ち上げている

被験者は背中に仮想のジェットパックを背負う形になり、このジェットパックの中のファンが体験者のジャンプにあわせて回り、ロケット噴射を演出するようになっている。体験者の足下には大型のファンが設置されており、VR映像にあわせて風を起こす仕組み。体験者が手に持つコントローラーからの入力信号(行き先を目線で選択したあと、最終決定するときに押す)や、映像、ファンなどはPCなどの機材から制御している。

なお、人間は実際の風圧よりも、風が肌にあたる面積が広い方が「風が強い」と感じやすいというデータもあるそうだ。今回のイベントではそういった研究も応用して、体験者がよりリアルに風を感じて映像世界に没入できるよう工夫しているという。

■CGの東京をブランコ型コースターで遊ぶ/四季折々の世界遺産をドライブ

上述の「座間味 ロケットジャンプ」は実写映像のVR展開だったが、今回のイベントではCG映像をフルに使ったVRアトラクションも3つほど用意されていた。

1つめは「四季の世界遺産 ドライブ」で、フルCG制作された世界遺産の映像世界を大型バイクでバーチャルドライブするアトラクション。体験者はバイク型の特設装置にまたがり、Oculus Riftとヘッドホンを装着する。バイクによる疾走感を出すため、前方からは大型ファンと霧吹きが用意されており、映像にあわせて体験者に向かって風や霧が送られる。体験者が座るシートはガイドスライド形式で前後に動く仕組みで、底面にはローラーが仕込まれており、路面のガタガタ感などを演出できるようになっている。

四季の世界遺産 ドライブの様子

CGの映像世界をドライブ。地面のガタガタ感も感じられる

2つめは「TOKYOスカイラン」で、フルCG生成された東京の町中をスカイコースター(ブランコ型コースター)に乗って超高速でバーチャル疾走するというアトラクション。(株)ハシラスの「Urban Coaster」コンテンツを、リクルート向けにアレンジしたものになる。体験者はブランコ型の装置に座り、Oculus Riftとヘッドホンを装着する。体験者の目の前には大型ファンが設置されており、VR映像の動きにあわせて大型ファンから風を起こし、ブランコの細かい動きを人力で制御する仕組みとしている。

TOKYOスカイランの様子

CGの東京をブランココースターで超疾走。かなり気持ちよい

3つめは「美瑛の丘レース」で、(株)ハシラスによる乗馬型のVR体験器「Hasilus」を使って、美瑛の丘を再現したCG映像の中で乗馬レースを楽しめるもの。PC側でHasilusを制御して、映像の坂道やカーブにあわせて加速・原則処理を行い、本当に乗馬をしているかのような臨場感を楽しめる。

美瑛の丘レース。4人1組で乗馬レース。かなり白熱する

■テレイグ型のVRアトラクションも

また、遠隔地にあるモノや人が、あたかも近くにあるかのように感じながら、操作などをリアルタイムで行う技術「テレイグジスタンス型」のアトラクションも2つほど紹介されていた。

1つめは「ペンギンロボットコントローラー」で、品川のプールに設置したペンギンロボットを、会場内にある装置で遠隔操作するもの。ペンギン型の装置をかぶった体験者が動くと、その動きをジャイロセンサーと加速度センサーが検知し、遠隔地にあるペンギンロボットに反映させてペンギンロボが一緒に動く。操作しているペンギンロボットの視界は、体験者が装着するヘッドマウントディスプレイにリアルタイムで映し出される。

ペンギンロボットコントローラーの様子。記者は時間ぎれで体験できなかったのだが、かなりペンギンになりきれるようだった

2つめは「指サッカー」で、これは近距離環境で簡単なテレイグ体験を実現するもの。手の指を足に見立てて、デスクトップサイズのフィールドでサッカーをプレイする。ここで、体験者の首の動きと、体験者の手首に装着したカメラが連動することで、手首のカメラ視点の映像がヘッドマウントディスプレイで体験できる。デスクトップサイズのミニチュアの視点になって卓上サッカーを楽しむことができる。

指サッカーの様子。自分の目線がミニチュアサイズになってデスクトップを走り回っているような感じになる

■紙、モニターに続く新しいアウトプットの形・VR/AR

今回のイベント1日目となる17日には、リクルートテクノロジーズの執行役員 CTO ITソリューション統括部 統括部長 兼 アドバンスドテクノロジーラボ 所長 米谷修氏が、プレス向けにイベント趣旨の説明と挨拶を行った。

米谷修氏

米谷氏は「2016年はVRイヤーであり、VR/ARにどんどん投資が進んでいくと思われる。2007年にiPhoneが登場したことは市場の潮流が大きく変わるきっかけだったが、2016年のVRもそういう新しい潮流を作り出すことになるだろう」とコメント。今回のイベントを「視覚だけではなく、五感に働きかけるVR体験イベントとなるよう企画した」と語った。

「VRは体験こそが重要」と考える

すでにリクルートでは、ゼクシイなどの雑誌でVRを応用した付録を展開している

また「情報インプットの形態は、キーボードやマウスに始まり、タッチパネルの登場でタップができるようになり、最近ではIoT技術の発展に伴い音声やジェスチャーに対応するようになった。しかし一方で、アウトプットの形態は紙がモニターに進化して以降は停滞している」とし、「今回のイベントでフィーチャーしたVR/ARは、そこに続く新しいアウトプット体験を実現する技術。今後もより研究を重ねていきたい」とした。

紙、モニターに続く新しいアウトプットの形・VR/AR

同社では今後とも、エンターテイメント性とリアリティを高めた仮想現実の構築を研究し、リクルートグループにおける様々なメディアやサービスへの技術展開を視野に入れて取り組んでいくとしている。

関連記事