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大規模イベントでの初展示に長い列

<CES>ゼンハイザーの650万円超え超弩級ヘッドホン「Orpheus」を聴いてきた

2016/01/10 山本 敦
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昨年ブランドの誕生から70周年のアニバーサリーイヤーを迎え、プレミアムブランドとしての新たな一歩を踏み出したゼンハイザーが、「Next Milestone」のプロジェクトを象徴するスーパーハイエンド機として発表した「Orpheus」がCESの会場に登場。デモ展示で試聴できたサウンドのファーストインプレッションを報告しよう。

ゼンハイザー「Orpheus」

ゼンハイザーの新たなフラグシップモデルとなる「Orpheus」は、ヘッドホン部の「HE 1060」とヘッドホンアンプ部「HEV 1060」により構成される静電型ヘッドホンシステム。本体の電源を入れると、フロントパネルから操作ノブなどインターフェースが、天面からは真空管がゆっくりとせり出してくる。ヘッドホンは本体向かって左側のボックスの中に格納されており、電源を投入するとカバーが開く仕掛けも話題を呼んでいる。以下は昨年行われた70周年記念イベントでの実機の動作をその様子を撮影した動画だ。



「Orpheus」が大規模なイベントに展示され、試聴機会まで設けられるのは今回が初めてということもあり、CESの開催期間中はゼンハイザーのブースにいつ訪れても長蛇の列ができていた。

ゼンハイザーの特設試聴ブースの前にはOrpheusの試聴希望者が長蛇の列をつくる

同時に最大10人前後までが入室できるほどのコンパクトな特設試聴ブースに鎮座するOrpheus

筆者も本当はイベントの開催初日に試聴の予約を入れていたのだが、デモルームのエアコンが壊れるハプニングなどにも見舞われ、結局CESの開催最終日にようやくその音を聴くことができた次第だ。もちろん最終日の本日も予約や飛び込みの試聴希望者が行列を作っていた。

電源オフ字には真空管やフロントパネルの操作系が格納される

真空管がせり上がったところ

筆者にとっても新しい「Orpheus」を試聴するのはこれが初めての機会。胸を高鳴らせながらラスベガス入りして、4日間待ってようやく試聴の時が訪れた。デモルームに入場すると、ゼンハイザーのドイツ本社からやってきた「Orpheus」がブースの中央に堂々と鎮座している。そして遂に自分が試聴できる順番がやってきた。汗ばんだ手をハンカチで拭いて、「Orpheus」を手に取る。「おお、これが650万円超えの超弩級ヘッドホンか!」

本体のケースにヘッドホンを収納。内側に4pinのXLRヘッドホン出力が設けられている

カラーラ大理石素材を採用するベース

手に取った感覚は「HD 800」よりも少し重さを感じるほど。筆者の前にもCES最終日のホールが開場してから2時間の間、何人かの試聴希望者が本機の音を確かめたはずだが、アンプを内蔵するヘッドホン本体もアルミ製エンクロージャーの恩恵によるものか、過度に熱を帯びていることはなかった。

ハウジングは開放型

イヤーパッドは内側がベロア素材となっている

恐る恐るヘッドバンドをひねってみると、これもまた「HD 800」のようにしなやかに曲がる。そのまま頭に装着してみると、何とも心地良い装着感。イヤーパッドの内側には肌触りの良いベロア素材を使っている。「おお、これが650万円超えの超弩級ヘッドホンか!」。喜びが繰り返し胸を打つ。

いよいよ「Orpheus」のサウンドを試聴!装着感もデラックスだった

試聴環境にはマランツのSACDプレーヤーが用意され、「Orpheus」との間はバランス接続。イーグルスの「ホテル・カリフォルニア」のSACDをリファレンスにその音を確かめることができた。

SACDプレーヤーとはバランスケーブルで接続

イヤーカップの後ろ側にもアンプを内蔵している

そのサウンドは静電型らしい緻密な解像感と圧倒的な情報量の再現力に満ちていた。ボーカルとバンドを構成する各楽器の音が驚くほどに生き生きとしていて、まさにスピーカーリスニングに匹敵する自然な定位感と雄大なスケール感を描き出していた。

海外オーディオ誌の取材でやってきた記者も、Orpheusのサウンドにうっとり

12弦ギターが奏でる前奏はオクターブの音がきれいにほぐれて、高音域がどこまでも伸びやかに突き抜ける。音の輪郭が力強く輪郭の彫りも深い。シンバルの余韻成分が濃厚に広がって漆黒な静寂の中にゆっくりと溶けていくような見事なS/N感だ。

低域はバスドラムの打ち込みが鋭く駆け抜けていく。ボーカルの声質もナチュラルで透明感にあふれていた。

一人ひとりが試聴できる時間は極限られたものだったが、待ちに待った「Orpheus」の音が聴けただけでも、遠くラスベガスまで足を運んだ甲斐を心の底から感じた幸せなひとときだった。

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