HOME > ニュース > <CES>TIDALでMQAストリーミングが近々開始。ボブ・スチュアート氏に聞いた最新状況

音源や対応機器が続々発表

<CES>TIDALでMQAストリーミングが近々開始。ボブ・スチュアート氏に聞いた最新状況

公開日 2016/01/09 16:10 山本 敦
  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE
英メリディアン・オーディオが開発したロスレス・オーディオの新たなコーディング技術「MQA(Master Quality Authenticated)」。そのプロモーションやライセンス管理を行うMQA社がCESに出展。ハード・ソフトの両方にまたがるMQAの新たな成果を紹介している。

MQAブースの展示内容は、基本的に「CES Unveiled」のブースレポートで紹介されたことを踏襲していたが、本項では代表のボブ・スチュアート氏に、出展内容の総括とこれからの展開を聞くことができた。

MQA代表のボブ・スチュアート氏

スチュアート氏は常日頃から、「MQAはスタジオでミュージシャンが演奏し録音された音楽を、コンパクトなファイルサイズでユーザーの耳に“エンド・トゥー・エンド”で忠実に届ける技術です」とその特徴を語っている。

MQAをサポートするブランドが着々と増えつつある

マスター音源を独自のエンコード処理により「カプセル化(Encapsulation)」したファイルを、ソフトウェアあるいはハードウェアのMQA対応デコーダーを通して再生することで、ハイレゾ品質の高音質音源をコンパクトにユーザーの手元へ届けられるのがMQAの大きなメリットだ。

リニアPCMの44.1kHzから768kHzまで、ファイル形式もFLACやWAV/AIFF/ALACなど既存のデータコンテナに幅広く対応している。またMQAデコーダーを搭載しない機器で再生しても、CD品質での再生互換が保たれている。

このMQA技術により製作された音楽ファイルが、今年ついに海外や日本国内の音楽配信サービスで提供されそうだ。MQAのデコードに対応しているオーディオ機器については、言わば生みの親ともいえるメリディアン・オーディオから「Primeヘッドホンアンプ」や「Explorer2」などいくつかの製品が発売されていたが、他社からも様々なカテゴリーの製品が加わることで、実力をオーディオファンが確かめられる環境が整備されていく。

「まずダウンロード配信のかたちで、2LがMQA音源を販売し始めています。欧州ではOnkyo Musicや7digitalもこれに加わる予定です。ストリーミングサービスとしては、TIDALがいよいよβテストを完了し、MQAによりエンコードした200タイトル/2,000曲のアルバムを公開するという報告を受けていますが、近くTIDALから正式なアナウンスがあるものと思います。日本国内でもe-onkyo musicやHQM Storeのプラットフォームが着実に整備されていると聞いています」(スチュアート氏)

MQAブースではメリディアン・オーディオのDSPスピーカーによるMQA再生のデモが行われていた

TIDALで配信がスタートするMQAファイルのサンプル(青いジャケットの左側)が試聴できた

MQAは、スチュアート氏が「オーディオ折り紙」と呼ぶプロセスにより、マスター音源からハイレゾの音楽信号のエッセンスを取り出して“折り畳み”ながら、ファイルの容量を段階的に約1Mbpsの低ビットレートにまで圧縮することができることが大きな特徴だ。

TIDALでは既に約1.4MbpsのCD品位ストリーミングサービスを商用化しており、理屈ではそのプラットフォームにMQAの音源を乗せるのはさほど難しいことではない。「実際にTIDALで配信を間近に控える2,000曲以上の楽曲も、全て最大1.4Mbps以内のビットレートに収められています」とスチュアート氏も語っている。

MQAのブースにはMytek DigitalのUSB-DAC「Booklyn DAC」が展示され、MQAのサンプル音源を再生するデモを行っていた。またファームウェアのアップデートによるMQA対応を予告しているパイオニアのハイレゾ対応ポータブルオーディオプレーヤー「XDP-100R」、オンキヨーの「DP-X1」も7digitalのMQA対応プレーヤーアプリをインストールした状態で展示。MQA音源をヘッドホンで聴くことができた。

Mytek DigitalのUSB-DAC「Brooklyn DAC」

Brooklyn DACのフロントパネル。MQAファイルの再生時には青い表示が点灯する

今回発表されたトピックスの中で特に注目したいのは、新しいMQA対応ハードウェアのデバイスカテゴリーにスマートフォンが加わったことだ。対応製品はHTCが昨年10月に発表した「HTC One A9」で、24bit対応のDAコンバーター機能を内蔵するほか、ドルビーオーディオのサポートなど、音楽再生に力を入れるハイエンド端末だ。

オンキヨー「DP-X1」もファームウェアの更新によりMQA対応を予定する

HTC One A9は初めてのMQA対応スマホ

スマートフォンなど通信機能を持つモバイル機器については、ストリーミングベースのMQA配信にとても親和性が高いデバイスであると、スチュワート氏も以前から強い期待を寄せていたが、いよいよ最初の対応端末が現実のものになる。

なおHTC One A9の場合、MQAのソフトウェアデコーダーで処理された音楽信号が、ハードウェアDACに送り込まれる方式になっているようだ。

「今回のCESで、ハードを開発するオーディオメーカーや音楽配信のプラットフォームを展開するサービス事業者、そしてコンテンツプロバイダーに多く参加いただいたことを、晴れやかに発表でき心から嬉しく思っています」とスチュアート氏はコメントしている。

なおメリディアン・オーディオでは、MQAの展開をさらに強く後押しする新製品の開発も進めているようだが、今回のCESでは、その具体的な内容は明かされなかった。近く正式なアナウンスがあることを期待して待ちたい。

この記事をシェアする

  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE