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イーライセンスとJRCが統合

新たな著作権管理団体「NexTone」誕生。“JASRACにはない強み”で健全な対抗軸目指す

2015/12/17 編集部:小澤 麻実
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管理事業者は複数あれど「JASRAC独占」が現状

日本で著作権に関する仲介業務に関する法律「仲介業務法」が制定されたのは1939年のこと。国の指導監督のもとで著作権を集中管理する団体を1分野1団体作ることが定められ、音楽分野では「JASRAC」が設立された。

2001年に「著作権事業等管理事業法」が施行され、JASRAC以外の業者も著作権管理事業を行えるようになった

しかしそれから月日が経つにつれ、新しい利用形態の使用料決定に迅速さを欠いたり、独占状態であるため競争原理が働かないという声が挙がりはじめ、1998年にはアーティスト・坂本龍一氏が「著作権管理業務に公正な競争を導入し、新しい時代の文化の創造に適した環境が作られるよう願ってやまない」と提言(全文はこちら)。2001年「著作権事業等管理事業法」が施行され、著作権管理業務を行う業者は「国による認可制」から「登録制」に変更された。今回合併したイーライセンスやJRCは、こうした経緯を受けて設立され同事業に参入した。しかし現在もJASRACのシェアは大きく、実質“独占状態”にあることは変わっていない。


音楽著作権の4つの支分権と7つの利用形態とは?
『エイベックスがJASRAC離脱』ではない


著作権管理事業は、「著作者」(作詞家・作曲家)が「著作権者」(音楽出版社)に著作権を譲渡し、著作権者はその管理を「著作権管理事業者」(JASRACやイーライセンス、JRC等)に委託する。その際の条件は、各管理事業者が定める契約約款に基づいて決められる。そして「著作権管理事業者」は、「利用者」(レコードメーカーや配信事業者、放送局等)の利用に許諾を与え、利用者は各管理事業者が定める使用料規程に基づき著作権使用料を支払う。この使用料が、著作権管理事業者を通じて著作権者および著作者に分配される。

音楽著作権管理事業の基本的な流れ

音楽著作権は「1.演奏権等」(コンサートやカラオケ等での使用)、「2.録音権等」、「3.貸与権(CDレンタル等)、「4.出版権等」(楽譜出版や書籍での歌詞利用等)の4つの支分権と、映画録音や放送、ゲームやインタラクティブ配信など7つの利用形態に区分されている。著作権者はそれぞれについて管理団体を選択することができる。

音楽著作権の4つの支分権と7つの利用形態

この区分は法律により定められたものではなくJASRACが定めたルールであり、全てを管理できているのは現状JASRACのみ。JRCやイーライセンスは一部区分のみ管理している。たとえばスピッツ『チェリー』では、JRCとJASRACの2社がそれぞれの区分を管理するかたちとなっている。

各支分権はそれぞれについて管理団体を選択できるので、1曲の管理を複数業者が行うこともある

そのため発表会では「先日の報道で『エイベックスがJASRAC離脱』という論調も見られたが、そういったことではない。現状JASRACと分担して管理を行っていることを理解していただきたい」という説明もなされた。

なお現在分担管理を行っている旧譜音源などについて、今後NexToneが全支分権を取り扱うようになった際は統合管理することになるのか?という質問が挙がったが、「それは我々ではなく権利者の方々が決めること。我々は新体制を説明して管理統合の呼びかけを行い、理解を深めていきたい。完全に全ての管理を移行するのは難しいかも知れないが、なるべく多く我々に預けていただけるよう働きかけたい」(荒川氏)とコメントしていた。


坂本龍一氏からもメッセージ

発表会には、坂本龍一氏からもメッセージが寄せられた。以下にその全文を引用する。

坂本龍一氏からもメッセージが寄せられた

20年前、インターネットが普及してきたことにより、それまでの著作権とその管理のあり方に疑問が生じてきた。具体的には、JASRACの独占に対して多くのクリエイターや音楽関係者が異議を唱えた。私もその一人である。そのような流れのなかで、JASRAC以外の著作権管理のオルタナティブが生じたが、20年後の今日、JASRACの独占状態に大きな変化はない。

現在、私たちをとりまく音楽の環境は日々ドラスティックに変化している。それに対して著作権管理が旧態依然たる体制のままでよいはずはない。楽曲についてのデータがほぼ全てデジタル化した今日、新たな管理体制が求められている。そしてそれは未来の音楽を見据え、音楽制作者を養育しサポートしてくものでなければならない。

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