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海外事例や3Dにも言及

映画館で映画以外のコンテンツを上映する「ODS」勉強会が開催 - 関係者がビジネスの可能性を語る

2010/06/17 ファイル・ウェブ編集部
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ODSのこれまでの実績については、TOHOシネマズ営業本部 企画営業部の小林秀司氏が紹介。小林氏は「TOHOシネマズでは全国58館で107基のDLPプロジェクターを導入している。また、97の3D対応スクリーンも用意している」と、同社のODSに対する取り組みを説明する。

小林氏は「全国の映画館がサテライト会場になる」「鮮明な映像を快適な座席で鑑賞できる」「5.1chでコンサート会場の雰囲気を再現可能」「館内のストアで劇場スタッフがグッズ販売を行う」「鑑賞中の飲食も可能」「ライトユーザーも気軽に参加できる」といったODSの特徴を改めて説明。アーティストの表情をアップで観られる点などがユーザーに好評であるなど、ODSならではの魅力を語る。

ODSの特徴

実際の事例では、2008年の大晦日に行われたXジャパンのカウントダウンライブでは全13拠点で、今年1月21日から4日間行われたAKB48のライブでは12拠点でODS上映したことなどを紹介。いずれのケースも盛況だったことに加えて、AKB48のイベントでは「名古屋の劇場では早々にチケットが売り切れてしまい、買えなかったお客様が浜松の劇場に新幹線で移動するといったこともあった」と、アーティストのファンにもODSが受け入れられていることを説明した。

また、AKB48のイベント中継に関しては、6月9日に行われた「17thシングル選抜総選挙」の事例にも言及。平日18時からという状況にも関わらず全拠点が即時完売したため、上映スクリーンを急遽追加したことを紹介し、「キャパシティを急遽増やして動員・収入増に結びつけた。映画館の特性を活かせた事例だと思う」と語った。

しかし小林氏は「なんでもかんでもODSで動員できるのかというと、そういうわけではない」ともコメントし、日本ではまだ映画館で映画以外のコンテンツを観る習慣が浸透していないことなどを課題に挙げる。

そうした課題をクリアするため、バンドの復活/解散ライブやツアー最終公演などのプレミアムな演出、バックステージの映像やテレビでは放映できないネタなどのレアなコンテンツ、コアなファンに向けた適正な訴求などが必要だと説明。「可能性はあるが、ODSは現状ではまだまだこれから育てていかなければいけない事業だ」と、業界が協力して取り組んでいくべきだとした。

そして続いては、金沢工業大学虎ノ門大学院コンテンツ&テクノロジー融合研究所 所長で、ワシントン州立大学 メディア経営学 教授の北谷賢司氏が、海外のODS事情を説明。

「海外でのODSは『Alternative Contents』と呼ばれている」と紹介する北谷氏は、「35mmフィルムのときよりもプロダクション・ツールとして効率が高い」「投影技術のクオリティーが高い」「コンテンツの多様化が映画観衆・消費者に貢献」「現行ビジネスモデルをより効率的にする」「新たな収入源を業界全体に供与する」といったデジタルシネマのメリットを紹介する。

そして、「基本的に映画は夕方から深夜のビジネスのため、空いている時間帯の回転効率が悪い。今まではその時間帯に適したソフトが見つからなかったが、新しい映写技術や配信技術により可能性が広がったために北米とヨーロッパでこうしたビジネスが注目されるようになった」とコメントした。

続いて北谷氏は、海外でのODSで最初に注目された事例として2007年に全米約90の映画館で中継されたニューヨーク・メトロポリタン・オペラのケースを紹介。「田舎の町で中継したって客が入るわけがないと言われていたが、予想以上にヒットした。これによって、アメリカの業界全体が『このビジネスはイケルな』と気付いた」とコメントした。

そして欧米ではODSのコンテンツとして、スポーツと音楽コンサート、さらにビデオゲームの3点が取り扱われていると説明。「今後は3Dがどんどん普及していくため、ODSのインパクトはさらに向上していくだろう」と語る。

そのほか、北谷氏はデジタル3Dの課題として、アバターのカメラマンなども務めたVince Pace氏を紹介。「3Dで映像を撮る職種のことをアメリカでは『Steleographer』と呼ぶが、彼はそのパイオニア」だと北谷氏が説明するPace氏が過去に手がけたHanna Montanaの3D映像ODSが成功を収めた一方で、続いて制作されたJonas Brothersの事例がセールス的に奮わなかったことを紹介。「3Dのコンサート映像をビジネスにするということは、まだまだ当たり外れがある」とコメントした。

また、「U2 3D」を手がけ「3D映像の神様」と呼ばれるSteve Schklair氏も紹介しながら、「3Dのノウハウを持っている人間は、ハリウッドにもほんの数人いるに過ぎない状況だ。今後は、こうしたナレッジベースがどうのように日本にも波及するかで、日本国内のODSでの3D化が変わってくる」と北谷氏は述べた。

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