5月27日から30日の4日間開催

NHK技研公開2010、初のフルスペック・スーパーハイビジョンデモ/60gのスピーカーなど展示

ファイル・ウェブ編集部
2010年05月25日
毎年恒例のNHK放送技術研究所の公開展示「技研公開2010」が5月27日(木)〜30日(日)の4日間にわたり開催される。本日一般公開に先立ちプレス向け発表会が行われた。

<技研公開2010>
・日時:5月27日(木)〜30日(日) 10:00〜18:00(最終日は17:00まで)
・会場:NHK放送技術研究所(小田急線「成城学園前」駅からバス/東急田園都市線「用賀」駅からバス)
・入場料:無料
・HP:http://www.nhk.or.jp/strl/open2010/index.html


80年を迎えたNHK技術研究所の節目となる技研公開

NHK技術研究所は今年で80年を迎え、今回で通算64回目の技研公開となる。今年は「技研80年 さらなる未来へ」というテーマのもと計44項目の展示を行う。


NHK放送技術研究所 所長 久保田啓一氏
プレスプレビュー冒頭で挨拶を行ったNHK放送技術研究所 所長 久保田啓一氏は、「80年を迎えることができたのは、近隣の皆様をはじめ多くの皆様のご支援の賜物。今年のテーマには80年間いろいろな方にお世話になった感謝の気持ち、そしてまた新たな一歩を踏み出して世界の放送技術を牽引していきたいという2つの気持ちを込めている」と説明する。

「私は5年、10年それぞれの課題をバランスよく研究することが大切だと職員によく話しているが、今回の技研公開の中では、5年後の課題にあたるのが放送と通信の融合、10年後にあたるのがスーパーハイビジョン。スーパーハイビジョンはようやく本来の高解像を実現できるカメラを今年開発した。昨年からさらに進化した映像をご覧いただきたい」と語った。


今年はフルスペックで楽しめるスーパーハイビジョン

スーパーハイビジョンシアター


スーパーハイビジョンシアター
地下1階のスーパーハイビジョン(以下、SHV)シアターでは、今年もフル解像度3板プロジェクターで6分程度の新作コンテンツを体験することができる。今年は終盤にフル解像度3板式SHVカメラによる30秒ほどの映像も上映。撮像・表示ともにフル画質機材によるフルスペック映像のデモを初めて行っている。音響環境は22.2chサラウンド。通常の再生コンテンツは「スポーツ&ステージ」と題し、東京マラソンやNHK杯フィギュア、紅白歌合戦などの映像を上映しパブリックビューイングの可能性を示していた。

3,300万画素3板式SHVカラーカメラ


3板式SHVカラーカメラ。ピントがあっていない状態だとビューファインダーが緑に点滅する

伝送装置がカメラヘッドと一体化した
昨年プロトタイプとして出展されていた3,300万画素3板式SHVカラーカメラは、今年は信号処理機能を追加しさらなる高画質化を実現。完成版として姿を現した。また去年は外付けだった伝送装置を小型化しカメラヘッドと一体化させ、運営性も大幅に向上させている。



3,300万画素3板式SHVカラーカメラで撮影した映像
SHVの撮影において、カメラのファインダーでは解像度が低く、外部モニターを通してピント調整を行う必要があるが、本機ではファインダー映像に合焦範囲を示す補助信号を付加することで、カメラマンがファインダーをみながら調整できるようになっている。

SHV効率映像符号化装置


小型化したSHV効率映像符号化装置
NHK技術研究所は2020年にSHV試験放送を実施することを目標に掲げている。SHV放送を実現するための技術として、SHV放送の大容量の映像信号を圧縮する符号化技術は昨年も展示されていたが、今年の符号化装置はサイズが昨年の約2分の1までスリム化を果たした。スリム化の要因としては、符号化処理が30Pから60Pへ進化し、これまで30Pを処理するHDTV用符号化ユニットを16台搭載していたところを60P処理が可能な符号化ユニット8台構成へと変更したことが挙げられる。

次世代地上放送の大容量コンテンツを伝送する技術


1チャンネルでハイビジョン4番組を伝送するデモ
SHVなどの大容量コンテンツを地デジで伝送するために活用できる技術として、地デジ1チャンネルでハイビジョン4番組の伝送を実現するデモも実施している。OFDM信号の1つのキャリアシンボルで最大10ビット(現行のISDB-T方式は最大6ビット)の情報伝送を行う「超多値OFDM技術」と、水平、垂直の2つの偏波を使い互いに異なる情報を伝送する「偏波MIMO技術」を用いて伝送容量を拡大させている。

家庭でも22.2ch再生が可能に?設置性抜群の軽量スピーカー


電場駆動型エラストマー採用のスピーカー

エラストマーの薄さと軽さに驚きの声があがる一幕も。ゴム状なので頑丈でよほどのことがない限りやぶれる心配はない
SHV用22.2マルチチャンネルを一般家庭へ導入することを目指して開発された小型・軽量スピーカーも試聴することができる。技研がフォスター電機と共同で開発しているもので、電圧をかけることで電極間に引力が働き変形する「電場駆動型エラストマー」というゴム状の素材を使用した、プッシュプル型のスピーカーだ。展示されていたスピーカーは直径16cm、膜厚100ミクロン、重さ60gという超軽量を実現。再生周波数帯域は80Hz〜15kHz。壁掛けしたり天井からぶら下げたりと柔軟な設置が可能で、家庭へ導入しやすくなっている。

少ないスピーカー数で家庭での22.2ch再生を目指す


3.1ch環境

8.1ch環境
SHVの22.2chマルチチャンネル音響を3.1chまたは8.1ch環境で再現するデモを実施している。家庭で少ないスピーカー数でも22.2chと同様の臨場感を体感できることを目的に研究している。試聴エリアを想定し、音の伝搬特性を計算して、本来の音の聞こえを再現する。

22.2ch音声を集音しやすくするマイクも展示。16個のマイクがついている


注目が集まる最先端ディスプレイ

インテグラル立体テレビ


インテグラル立体テレビ

インテグラル方式の複数の微小レンズ並べたレンズアレー
裸眼で3D立体映像を表示するインテグラル方式テレビも展示。SHV技術を応用し、解像度400×250ドットの3D映像を楽しむことができる。インテグラル方式の複数の微小レンズを並べた特殊なレンズアレーを、被写体を撮影するカメラ側、表示するプロジェクター側それぞれに装着することで立体映像を表示させる。レンズの精度や投射画像の歪補正などにより昨年より画質を向上させているという。特殊なメガネも不要で、全方向に視差があり、見る位置に応じた立体像を得られること、2視差の3D方式と比べて疲れにくいことなどからテレビ放送に最適な方式だとNHKでは考えているという。


後ろからプロジェクターで投影

インテグラル立体テレビの方式

フレキシブル有機ELディスプレイ

画質が向上したフレキシブル有機ELディスプレイ

フレキシブル有機ELディスプレイの仕様

樹脂製の基板に有機TFTアレイを蒸着することで薄型・軽量化を図り、フレキシブルに持ち運びができる有機ELディスプレイ。今年は画素数が320×240ドット(QVGA)と昨年展示したものから4倍向上し、より映像が精細になっている。サイズは5インチ。


放送と通信の融合に挑むHybridcastの構想

放送と通信を融合させたサービスを提供する「Hybridcast」の構想について、具体的にどのようなサービスを考えているのかをデモでわかりやすく紹介する。NHKが考える放送通信連携の形は、家庭にHybritcast対応の受信機を設置して通常の高品質な放送を提供するとともに、ネットワークサーバーを介して番組関連付加情報などを個別ユーザーのリクエストに応じて提供するというもの。またhybridcast対応の受信機には同期再生技術や携帯端末との連携技術などが搭載されている。

具体的には、放送と同時にネットワーク経由で字幕、音声、映像、メタデータといった様々なコンテンツを提供する「拡張コンテンツサービス」、ネット上のSNSとテレビを繋ぎコメントを共有して多くの人と一緒にテレビを視聴するような体験ができる「ソーシャルテレビサービス」、関連番組や話題の番組などを紹介する「おすすめ番組サービス」、携帯電話でテレビ番組の関連情報を表示したりテレビを操作したりできる「携帯端末連携サービス」という4つのデモが展開されていた。


拡張コンテンツサービスとして英語、中国語など多言語の字幕サービスを提供

たくさんの人と番組の感想を共感できるソーシャルテレビサービス


おすすめ番組サービス

携帯端末連携サービス

人にやさしい放送

久保田氏が「我々が永遠に取り組むべき課題」として挙げた“人にやさしい放送”の取り組みも多く展示されている。

日本語からの手話CG翻訳


手話CG
手話放送番組の拡充のため開発されているのが日本語から自然で高品位な手話CGへ翻訳する技術だ。日本語を入力すると、手話表記に変換され、手話単語CGを生成・結合するという仕組み。手話の読み取りは手の形だけでなく顔の表情も重要とのことで、今後は顔も表せるようにしていきたいという。

触って伝わるテレビ


複数の力覚提示デバイスを制御することで物体を実際に触っている感覚を体感できる。堅さなども感じ取れる

触って伝わるテレビの概要
触るだけで表示されている映像ががどんなものかわかるように開発されたのが、視覚情報がなくても物体の形状や堅さなどを伝えることができる力覚提示手法だ。複数の力覚提示デバイスを制御することで仮想的に作成した物体を複数の指と手のひらで接察することができる。

視覚に障害を持つ方の情報伝達のほか、今後は力覚情報に加えて手触りがわかる触覚情報を加えることで、「触って伝わるテレビ」としてテレビに映る生地の材質の違いなどまでわかるようになるという。

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