開発秘話や内部パーツへのこだわりも紹介

ソニーのDSD対応PCMレコーダー「PCM-D100」でレコードをアーカイブ − 開発者が生録以外の活用法を紹介

公開日 2014/02/17 16:49 ファイル・ウェブ編集部
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ソニーは、昨年11月に発売したDSD録音対応のPCMレコーダー「PCM-D100」(関連ニュース)のプレス向け説明会を開催した。今回の説明会では、「生録」以外でのPCM-D100の活用方法などが紹介された。

PCM-D100 ¥OPEN(予想実売価格100,000円前後)

PCM-D100は昨年11月に発売されたソニーの最上位PCMレコーダー。192kHz/24bitのリニアPCMに加え、2.8MHz DSDの録音にも対応したハイエンドモデルとして注目を集めた。

■ソニーのPCMレコーダー技術を結集したハイエンドモデル

今回プレゼンテーションを行ったのは、PCM-D100の開発に携わったソニー(株)の橋本高明氏だ。

ホームエンタテインメント&サウンド事業本部 V&S事業部 サウンド1部 商品設計9課 エレクトリカルエンジニア 橋本高明氏

説明会ではまず、PCM-D100の概要とポイントが改めて橋本氏から説明され、筐体内部も公開。「システム基板」「A/D変換系基板」「D/A変換・再生系基板」がそれぞれが独立しており、電源も各基板に別口で供給することで、徹底的に干渉を避けているという。さらに、干渉の排除を徹底するために、システム基板とAD、DA基板を筐体外周を覆うマグネシウムダイキャストでセパレートしているという。

PCM-D100の筐体内部

各基板の干渉を排除するため、「システム基板」「A/D変換系基板」「D/A変換・再生系基板」が独立している

マイクを覆うカバーが特性に大きな影響を与えるため、その形状について試行錯誤が繰り返されたことも紹介された。ヘッドホン出力の音質強化のために、瞬間的に大電流を流すことができるコンデンサーが採用されたことも、後述する“生録以外でPCM-D100を使いこなす”上での大きなポイントになるという。

マイクのカバーの最終形とその一段階前のもの。ほとんど同じに見えるが、微妙に形状が異なっている

マイクのカバーは様々な形状が検討され、実際に想定を行いながら改良が加えられた。写真はその試作のひとつ


瞬間的に大電流を流すことができるコンデンサーを採用したことで、ヘッドホン出力の音質も飛躍的に向上した

本機には新開発マイクが搭載されている。「マイクにも個性がありますが、できるだけフラットで色づけのないものを目指しました。DSDについては録音後の修正が難しいので、フラットな録音が可能である点は特に意識しました」とは橋本氏の言葉だ。

■PCM-D100を生録以外で活用する方法を紹介

プレゼンの後半では、「PCM-D100はもちろん生録用として非常に優れた性能を持っているが、ぜひそれ以外のシーンでも活用できることを知ってい欲しい」として、PCM-D100で手軽かつ高音質にアナログレコードをDSDアーカイブする方法を紹介してくれた。

デモで使われたPCM-D100。アナログレコードを2.8MHz DSDと44.1kHz PCMで録音した

前述のようにPCM-D100は192kHz/24bitまでのPCM録音に加え、2.8MHz DSDの録音にも対応している。また、本機はライン入力による録音ももちろん可能だ。

会場には、アナログレコードプレーヤーをフォノイコライザー搭載プリメインアンプ「TA-ER1」に接続(フォノイコライザーとして使用)。その出力を同社最新のプリメインアンプ「TA-A1ES」に接続してアナログレコードを鳴らすという基本システムが用意された。

デモに用いられたシステム。アナログレコードを再生しつつ、フォノイコ搭載アンプからRECアウト経由でPCM-D100で録音を行った

まずはアナログレコードの再生音質を確認する。同時に、フォノイコライザー搭載プリメインアンプからREC出力したアナログ音声をPCM-D100で録音。レコードを止めてその印象が残っているうちに、アンプ以下は同一環境にてPCM-D100でアーカイブした2.8MHz DSDの音源を聴くことができた。

記者の印象だが、優秀録音版のアナログレコードの再生音はやはり素晴らしいものであったのに対し、PCM-D100でアーカイブした2.8MHz DSD音源もその生々しさやアナログ特有のダイレクト感がしっかりと伝わってくると感じた。やや整理された印象はあるものの、フォノイコ経由でライン出力した音源をただ録音しただけで、これだけの音質が楽しめるのである。

次に同じデモをDSDではなく、44.1kHz PCMの録音にて行った。こちらもアナログレコードの情報量をしっかりと捉えていると感じたが、シンバルなどに耳をすますと確かに高域の伸びはそれなりで、全体的なダイレクト感もDSDに比べるとやはり後退していると感じた。

「CDクオリティで録音すると、高域が詰まるのがおわかりいただけましたでしょう。アナログレコードのアーカイブを行うなら、DSDで録音した方がより忠実度が高いと思います」と橋本氏。「違いがわかりやすいようにあえてDSDと44.1kHz PCMで比較しましたが、例えばDSDと192kHz PCMの比較も面白いでしょう。これだけPCMとDSDのキャラクターの違いを描き分けられるのもPCM-D100の魅力」とも話していた。

プリメインアンプには「TA-A1ES」、スピーカーシステムには「SS-AR1」を用いてレコードとそのDSD&PCMアーカイブとの比較を行った

さらに、PCM-D100でアーカイブしたDSD音源から作成したDSDディスクを再生するデモも実施。「ディスクを聴くという儀式の良さがあるのは当然として、手軽にレコードの音を楽しみたいというときには、こういった方法もぜひ活用して欲しい」とのことだ。

橋本氏はデモに際して、「特に欧米のミュージシャンは、新曲もLPレコードをかならず発売します。そして、アナログは非常に伸びている市場です。一方でレコードはやはり扱いが難しいところがありますが、DSDでアーカイブしてしまえば、その音質の魅力を保ったまま手軽に楽しむことができます」ともコメントしていた。

デモの最後では、PCM-D100のアップサンプリング機能を活かしてCDリッピング音源を再生するデモも行われた。本機は2倍、4倍のアップサンプリングが可能。「好みはあるでしょうが、フィルターの音質チューニングも含めて、解像感や広がりがでていると思います。ソースによって効果の出やすさはちがいますが、ぜひ試してみてほしいもののひとつです」とのこと。

「生録にしかPCM-D100を使わないというのは非常にもったいないです。レコードのアーカイブから、音楽ファイルの高音質リスニングに至るまで、本機をぜひ活用してほしい」と橋本氏は最後にコメントしてデモを結んだ。

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