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PRアナログプレーヤー/トーンアーム/カートリッジとアナログに特化してカイアhつ

ドイツ・クリアオーディオの設計思想とは?「デザインと技術の融合」、名門アナログブランドの核心に迫る

公開日 2025/10/29 06:35 角田郁雄
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ドイツのclearaudio(クリアオーディオ)が、ナスペックによって国内への取り扱いが再開された。それに伴いテクニカル・トレーナーであるステファン・クモワ氏が来日。同社が誇る製品の特徴や技術的なポイントを角田郁雄氏がレポートする。

右はクリアオーディオのステファン・クモワ氏。左は輸入元(株)ナスペックの取締役会長 安達紘治氏

アナログ製品に特化したドイツ・クリアオーディオ

アナログ製品に特化した、ドイツのクリアオーディオ。独創的で美しいデザインのプレーヤーやドイツらしい精密感に溢れたリニアトラッキング・アームを特徴とするメーカーで、私自身オーディオショウや各地の専門店でもイベントを行ってきた。

創業は1978年。当時はCDプレーヤーが登場する噂が広がった時期で不利な状況でもあったが、シーメンスに勤務していた熱狂的なヴァイナル・オーディオ愛好家であるピーター・ズッヒー氏が、意を決してブランドを立ち上げた。日本においても早々に輸入され、愛用者の多いブランドでもある。

その輸入元がナスペックに移管され、テクニカル・トレーナー/サービス・マネージメントを担当するステファン・クモワ氏が来日。インタビューすることが叶った。

角田郁雄氏がインタビューを担当

アナログプレーヤーの特徴や設計思想について聞く

インタビューの冒頭に、美しくスタイリッシュなInnovationプレーヤーシリーズに共通した特徴があると思い、尋ねてみた。

clearaudio アナログプレーヤー「Innovation Compact」(1,485,000円/税込) ※トーンアーム、カートリッジは別売(受注オーダー)

「当社のレコードプレーヤーの上位モデルには、フラグシップのStatement(ステイトメント/約4000万円)とその下にMaster Innovationというモデルがあります。この2機種には、プラッターにベルトやDDモーターが接触しない非接触マグネットドライブ(磁力ドライブ方式)が採用されています。

価格を抑えたシリーズでは、特許を取得しているマグネット・フローティング軸機構を採用しています。これはエアポンプも不要で回転が静かであり、軸摩擦とノイズが大幅に低減され、正確な中心軸を維持できる高精度な方式です。駆動にはフラットベルトを採用して、24VのDCモーターをストロボスコープで回転制御します。プラッターにはレコードの材質に近いPOM材を使い、レコードとの一体化を図っています。これが音質に重要です。ですからシートは使わないことを推奨します。

Innovationシリーズの上位モデルでは、プラッター下部にステンレス板も使って、剛性を高めています。シャーシには、パンツァーホルツ材(特殊なブナ積層合板。防弾壁に使われるほど、高い剛性がある)と薄いアルミ板を組み合わせることで、微細な振動を徹底排除し、安定度を高めるために3点支持機構を採用しています。多種のマテリアルを組み合わせ、レゾナンス・コントロールしていることが共通した考え方ですね」

このように美しいデザインと独自の技術が、まさに融合しているのである。

clearaudio アナログプレーヤー「Master Innovation」(5,665,000円/税込) ※トーンアーム、カートリッジは別売(受注オーダー)

精密さに溢れたリニアトラッキング・アーム

同社にはトーンアームにも魅力的な製品が揃っている。再生前は垂直で、再生時には水平に可動するユニークなリニアトラッキング・アーム「TT2」と「TT3」だ。メカとしても精密感があり、操作が楽しい。

clearaudio リニアトラッキングトーンアーム「TT2」(2,046,000円/税込)※受注オーダー

再生方式は実にシンプル。カートリッジを取り付ける短いアームをキャリッジと呼び、水平のガラス棒がガイドとなり、滑らかに移動する方式だ。レコードのカッティング・ヘッドと同じように移動するため、トラッキングエラーが無くアンチスケーティングも不要になる。

clearaudio リニアトラッキングトーンアーム「TT3」(847,000円/税込)※受注オーダー

そのほかに再生前にアームを水平に、手前に移動させておく「TT5 with Swing Base」があり、頂点には「TT1 M1」というフラグシップモデルがあり、リニアトラッキング以外にも、ユニバーサルタイプが発売されている。

「よりユーザーフレンドリーなアームとして発売していますが、徹底した振動低減技術を投入しています。例えば、最上位のUniversalでは、世界でも類を見ないカーボンファイバー3重構造としています。例えとしては、釣り竿みたいな構造ですね。そして、精密なベアリング機構により、水平垂直方向の摩擦を徹底して、低減させています」

この機種の他に、現在は「Tracer」など3機種を発売しているそうだ。私のセッティングとしては、プレーヤーにInnovation Compactを、アームにTT3を使った組み合わせが好きで、よく専門店で試聴会を行った記憶がある。

その時のMCカートリッジは「ConcertoV2」であった。この組み合わせでは、奏者が空間にリアルに定位し、楽器や声の微細な響きまでクローズアップさせていた。そして音が滑らかで、アナログらしい豊潤な倍音が再生されていたことを思い出す。

 

MCカートリッジにおける独自技術

最後にカートリッジについて話を聞いた。同社のMCカートリッジでは何と言っても、上級機の歯車のようなベースプレートが印象的で、この12式の歯の形状をフィンガーと呼んでいる。

clearaudio MCカートリッジ「Goldfinger Statement V2.1」(3,245,000円/税込)※受注オーダー

「このフィンガー・プラットフォームは、カートリッジ全体の微細振動を徹底低減する方式として開発されました」

以前から発電方式や50Ωというコイルインピーダンスの高さなどが気になっていたが、この日、ボロンカンチレバー、24k金コイル巻線などを特徴とするフラグシップモデル、Goldfinger StatementV2.1を披露してくださり、MCカートリッジについて技術的な説明をしてくださった。

「MCカートリッジは本機のほかにもいくつかのモデルがあります。特徴としては、左右の干渉やセパレーションを向上させるため、カンチレバーの前側に右チャンネルのコイルを、その後部に左チャンネルのコイルを巻きます。この左右独立のコイルを囲むように4つのネオジムマグネットが左右用に前後に配置されます」

MCカートリッジのコイル部分の解説用模型。左右独立のコイルを囲むように4つのネオジムマグネットが左右用に前後に配置されている
 
clearaudio MC型カートリッジ「Concept MC」(192,500円/税込)※受注オーダー

これには驚きを隠せなかった。一般的なオルトフォンタイプとはまったく違うからだ。空芯MCであることにも、初めて気がついた。インピーダンスが50Ωと高いのは、高出力を得るために巻線数を増やし、振動を低減させ微細な信号を高速伝搬することに特化させているのである。

その音を聴かせて頂いた。感激するほど、3D的な空間を再現し、生演奏のような鮮度の高い音がする。空芯なので、音の立ち上がりが強調されず、音が滑らかで倍音や弱音に透明感を感じた。

フラグシップMCカートリッジ「Goldfinger Statement V2.1」の音質を確認中の角田郁雄氏

その他に同社では、ハイエンドMMカートリッジも展開している。まずは、ベーシックなモデルを使ってもらい、その後に上位モデルを手にして欲しいと考えているようである。それらの需要に応えるべく、モデルラインは豊富に揃えられている。

clearaudio MM型カートリッジ「Concept V2」(57,200円/税込)※受注オーダー

また、同社からはオーディオファイル向けの高音質なレコードやCDもラインナップされており、ナスペックのオンラインサイトなどで購入できる。今後の展開がますます楽しみなブランドである。
clearaudio フォノイコライザー「Smart Phono V2」と、ヘッドホンジャックも備えた「Smart Phono Headphone V2」(各154,000円/税込)

(提供:ナスペック)


※本記事は『季刊・Audio Accessory vol.198』からの転載です

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