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【特別企画】測定だけでなくUXも大切に設計

弱いのではない、自然なノイキャン。デノン「AH-C830NCW」の心地良さには理由があった

2022/03/24 プレミアムヘッドホンガイド編集部
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サウンドマスターが開発したサウンドに注目が集まるデノン「AH-C830NCW」。実は音だけでなく、ノイズキャンセリング機能にもかなりのこだわりが! 今回はテーマをノイズキャンセリングだけに絞りこみ、開発秘話を伺った。

デノン「AH-C830NCW」:¥OPEN(予想実売価格:税込16,500円前後)

ズバリ、「AH-C830NCW」のノイキャンは弱い?

――本日はデノンのエンジニアである冨田洋輔さんをお招きして、完全ワイヤレスイヤホン「AH-C830NCW」の開発秘話をお伺いします。まず発売して数ヶ月経ち、音質に対する高評価の声が多く聞こえてきますが、ノイキャン機能はやや賛否が別れていますね。そこで聞きにくい質問をします! AH-C830NCWのノイキャンは弱いんですか?

冨田氏(以下、敬称略) いいえ(笑)。後ほど開発背景もご説明しますが、そもそもノイズキャンセリング機能は、アクティブ・ノイズキャンセリング(ANC)とパッシブ・ノイズキャンセリング(PNC)、それぞれのパフォーマンスによって消音効果を発揮します。

皆さん、ノイキャンというと電気的に騒音を打ち消すANCの方を強くイメージされる方も多いと思いますが、イヤーチップなど物理的なモノで耳に届く音を減衰させるPNCも重要です。ただ、人の耳の形状は千差万別ゆえに、イヤーチップも選択が大切になります。

ですので密閉性を高めてお使いいただければ、AH-C830NCWが持つ高いANCパフォーマンスとともにPNCのパフォーマンスも上がりますので、より高いノイキャン効果を引き出すことができます。

株式会社ディーアンドエムホールディングス GPD,Product Engineering,Next Generation所属 冨田洋輔氏に話を伺った

――どのくらい高いのですか?

冨田 具体的な数値は非公開ですが、ANCの強度は市場にある人気モデルと比較しても遜色ないレベルを実現しています。開発時にはターゲットとなるANCの周波数カーブを作り、その目標をクリアできるように試作を重ねてチューニングしました。PNCを高めるためにも筐体形状やホールのサイズまでこだわり、構造サンプルを何個も作って、比較検討を行っています。

――(実際のグラフを見て)確かに高いですね! ですが私が使った印象では強さは感じませんでした。静かな環境でAH-C830NCWを使うと、ANCが効いているかわからないくらいでしたし…。

冨田 それで大丈夫ですよ! そもそも静かな環境であれば、キャンセルすべきノイズが少ないですから効果を感じられないんですね。もし音楽を聴いていてツーンとした印象というか違和感を覚えるなら、それはANCの調整に関わっている可能性が高いです。

どういうことかというと、キャンセルするノイズの帯域の減衰量を強くすると周波数位相が遅れて、位相余裕がなくなってオーバーシュートする帯域がでます。このオーバーシュートの量が多いと、ツーンとした印象につながるんです。つまりあれはハウリングしている音で、調整に失敗している音なんです。

――なるほど! 今まで勘違いしていました。

Check 1:消音には実は「密閉性」が大事!


ノイキャン効果のイメージ図

図はノイキャンイヤホンの測定結果のイメージだが、ANCは主に中低音だけに効果があるもの。中高音の多くは耳栓することで得られる効果であるため、まず密閉させないと正しいノイキャン効果が得られないのだ。

Check 2:どのモードでも音質は同じに!


3種のモード時の音質イメージ図

騒音があるなしに関わらずに心地よく音楽を楽しめるよう、「ANC ON」「ANC OFF」「外音取り込み」、これら3種のどのモードにあっても音質傾向は変わらない。この自然なノイキャンこそがAH-C830NCWの大きな魅力だ。


次ページデノンのノイキャンは自然さが際立っている!

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