HOME > インタビュー > 何度目でもいい、買う!劇場版『仮面ライダー』UHD BDは“別物“に変身を遂げている

仮面ライダー初のUltra HD Blu-rayの真価とは?

何度目でもいい、買う!劇場版『仮面ライダー』UHD BDは“別物“に変身を遂げている

2021/10/23 編集部:松永達矢
  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE
東映ビデオは、特撮ドラマ「仮面ライダー」のシリーズ50周年を記念して、「昭和ライダー」の劇場作品8本を収録した「仮面ライダーTHE MOVIE 1972-1988 4KリマスターBOX」を11月10日(水)に発売する。

去る7月、その発売を記念して藤岡弘、(本郷猛/仮面ライダー1号役)、佐々木剛(一文字隼人/仮面ライダー2号役)、宮内洋(風見志郎/仮面ライダーV3役)のレジェンドライダー3人が並び立ったスペシャルイベントが開催されたのも記憶に新しい。

レポート記事にもその興奮を綴ったが、丸の内TOEIのスクリーンに映し出された昭和ライダーの姿は「今まで見たことがない」という感想が素直にこぼれ出る程に美麗な画質に “変身” を遂げていた。あまりに鮮烈な画に、「変身プロセスはどうなっているんだ…」と、スレた大人のようなことを考え出す始末だ。

そこでこの度、昭和ライダー劇場映画の4Kリマスター化の実作業を担った編集スタジオの株式会社キュー・テックにて、発売元である東映ビデオ株式会社、パッケージ事業部長の小田元浩氏と、キュー・テックのテクニカル推進部部長であり、シニアカラリストの今塚誠氏(以下敬称略)にお話を伺うことが叶った。

東映ビデオ株式会社 パッケージ事業部長の小田元浩氏(写真左)、キュー・テックのテクニカル推進部部長、シニアカラリストの今塚誠氏(写真右)

シリーズ50周年という節目に発売される本パッケージの企画の発端から、TV発のヒーローである「仮面ライダー」の劇場映画をレストアする上での難しさ。収録メディアが代替わりする度に出る映像パッケージの中でも「これまでとは別物」という言葉まで飛び出した「仮面ライダーTHE MOVIE 1972-1988 4KリマスターBOX」。長い時を経て、クリアな映像に “変身” を遂げることとなったその過程に迫りたい。



■「50周年」という大きなメモリアルで披露する「4Kライダー」

−−劇場のスクリーンで観た1号、2号、V3らの勇姿があまりにもクリアで、こんなに綺麗な「昭和ライダー」をコレクションとして手元に置けるなんて、すごい時代になったなあ…と思う次第です。本日はどうぞよろしくお願いいたします。

小田 ありがとうございます。こちらこそよろしくお願いいたします。

−−早速ですが、「4Kリマスター版」作成の経緯について、11月発売の「仮面ライダー THE MOVIE 1972-1988 4KリマスターBOX」に先立って、自分が参加させていただいた上映イベントの母体となる「KAMEN RIDER FILM ARCHIVE vol.1」、また遡れば「東映チャンネル」での放送がありましたが、製品を出す前に4Kリマスターを施した映像を見せていくというのは、どのような意図があってのことでしょうか?

小田 この展開にあたっては、「仮面ライダー THE MOVIE 1972-1988 4KリマスターBOX」の企画立ち上げについて、2つポイントを説明させていただきます。まず1つ目に4Kリマスター製作する上で、必須素材となるオリジナルフィルムのデジタルスキャンの実施についてですが、元々東映本社はフィルム作品のデジタルアーカイブ化という活動を進めていて、1950年代の作品から順番に、フィルムのネガが劣化していく前にスキャニングをしていくというプロジェクトを毎年続けています。

その作業を担当しているチーム「アーカイブ・スクワッド」内で「どの作品からスキャンをするか」という、フィルムライブラリの中から選定を行うミーティングが開かれているのですが、毎年対象作品を決めていく中で、本年迎えた「仮面ライダー50周年」というのが「記念イヤー」の中でも非常に大きなトピックなわけです。

イベント上映などの告知など、アーカイブ・スクワッドの活動の一部を紹介するWebサイト「東映アーカイブ 蔵出しお宝情報」

仮面ライダーの劇場作品は古くても70年代の作品と、フィルム作品という括りでは比較的新しい年代の作品ですが、アニバーサリーイヤーということで、優先的にスキャニング対象として選ばれたという経緯があります。つまり、製品主導というよりもアーカイブ化を目的とした側面が強いものでした。

そして2つ目、「仮面ライダー50周年」という大きなトピックの中、スキャニングしたものを世の中にどうお披露目するかを考え、最終的に「4Kの製品を出す」ことを大きな柱として据えました。そこで製品の発売前に今回の4Kリマスターの実力とその魅力に触れていただく機会として、4月から行った東映チャンネルでの放送と、「KAMEN RIDER FILM ARCHIVE vol.1」として丸の内TOEIでの上映企画を実施したという経緯になります。

「KAMEN RIDER FILM ARCHIVE vol.1」の編成作品の一つとして上映された『仮面ライダー対ショッカー』

−−収録作の劇場上映は11月発売の製品を手に取って貰うのに、十分なインパクトを与えられる施策だったかと思います。放送、上映と段階的に4Kリマスターの実力をファンへ向けて訴求していった…というワケですね?

小田 そうですね。ただ、これらの展開で本来の4Kの実力の全てをお見せすることができたかと言われればそうでも無く、このあとキュー・テックの今塚さんからもお話があると思いますが、東映チャンネルでの放送と劇場での上映の絵出しは2Kです。と言っても4Kマスターを元にレストア等の作業したものがベースになっているので、放送/上映をご覧になられた方へは、仮面ライダー史上これまでに無い「解像感の高さ」という観点は訴求できたと思います。

それでも11月発売の「仮面ライダー THE MOVIE 1972-1988 4KリマスターBOX」については、担当者としては「こんなもんじゃねえぞ!」と、さらなる違いをアピールさせていただきたいなと思います(笑)。

−−自分が観賞した2K出しの映像でも、レストア作業を経た高解像感は十二分に感じた次第です。ネイティブ4Kで堪能するこれ以上の「仮面ライダー」に期待が膨らんでしまいます! では、ここで4Kマスター製作における作業フローをお伺いしてもよろしいでしょうか?

今塚 まず、フィルムスキャン作業に関しては弊社(キュー・テック)ではなく、東映ラボ・テックさんにて行われています。ネガフィルムを5K解像度でスキャンしたデータをいただきまして、弊社の方ではノイズを除去するためのリマスター作業、映像が綺麗になった段階で映像全体の色味を決めるカラー調整、これらを終えた後にロールごとに繋ぎ合わせて作品として1本化するというのが大まかな流れです。

インタビューは、カラーグレーディング作業を⾏った部屋にて実施された

また、ロール単位でスキャニングされたデータの画郭はフルフレームのままになっています。この状態ですと、上映画角よりも広く、画として見えていない部分も含まれていますから、サイズの設定などを行います。そしてリマスター作業の方針としてはやはり「フィルムの良さ」を残したいのが大前提としてあります。

例えばフィルム撮影作品に見られる画の粒子感はフィルムの良さ、味の一つだと思いますが、デジタル処理で補正を掛けすぎるとフィルム特有の粒子は無くなりツルツルした画になってしまいますから粒子の残し方、修復の程度については小田さんにも相談しながら進めていきました。

次ページUHD BDならではのHDR効果はどう表現される?

1 2 3 4 5 6 次へ

この記事をシェアする

  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE