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【特別企画】フラグシップ越えの音を作る4要素を解剖

デノンが“コスト度外視“で作った背景とは? 110周年記念AVアンプ「AVC-A110」音作りの全貌を聞いた

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鴻池賢三

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2020年11月06日
1910年、日本初の蓄音機メーカーとして誕生したデノン。業務用プロ機材から家庭用機材まで幅広く手掛け、技術革新によるオーディオ体験の向上を牽引してきたのはもちろん、ひいては、音楽と文化の発展に寄与してきたと言っても大げさではないだろう。

実のところ、筆者が36年前に初めて手に入れたCDプレーヤーがデノンの「DCD-1800」(当時はデンオンと呼んでいた)なのだ。鮮烈かつ温かみのあるデジタルサウンドに目覚め、人生に影響をもたらされたのは間違いない。

そんな奥深い歴史を持つデノンは2020年に110周年を迎え、その110周年記念モデルとしてAVアンプ、プリメインアンプ、SACDプレーヤー、フォノカートリッジの4製品を投入。かつての記念モデルともまた違った力の入れように注目が集まっている。

今回は、その中のAVアンプ「AVC-A110」に焦点を当て、同モデルのサウンドマネージャーを務めた高橋佑規氏にインタビューを敢行。記念モデルに込められた想いと技術の詳細を訊いた。

デノン110周年記念AVアンプ「AVC-A110」¥680,000(税抜)

世界中の声を受け、生粋の「デノンマン」高橋氏が担当することに

サウンドマネージャーを務める高橋氏は、デノン好きが高じて日本コロムビア時代の2001年に入社。研究開発センターに配属され、放送業務用機器、ピュアオーディオの設計を経て2005年にAVアンプチームに合流した。デノン一筋で、技術文献の編纂を行ったり、後継者の育成にも携わるなど、生粋の「デノンマン」と言っても良いだろう。

AVC-A110のサウンドマネージャーを務めた高橋佑規氏

高橋氏によると、デノンの技術者は氏と同様に“デノン一筋”であることが多いという。同ブランドの魅力に魅了されたエンジニアが、伝統を濃密に受け継いで来たことが窺い知れる。

近年は資本面で米サウンド・ユナイテッドの傘下であるが、音質に対するこだわりは揺らぐことなく尊重され、かつ、ネットワークを含むデジタル技術の先進性でアドバンテージを発揮することができるなど、シナジー効果が得られているようだ。事実、現在でもAVアンプで豊富なラインナップを維持しつつ、元気が良いブランドの筆頭はデノンだろう。

長い伝統を持つデノンは、これまでにも記念モデルを送り出してきた。直近では10年前の100周年がある。しかし、今回の110周年モデルは、100周年よりも特別であるという。100周年モデルでも達成できなかった「コストのタガ」を取り去り、デノン史上最高と自負するフラグシップAVアンプ「AVC-X8500H」をベースに、エンジニアが「やりたかった事」を全てぶつけた自信作というから期待は高まる。

今回の記念すべきモデルに高橋氏が登用されたのは、世界中の販売会社からの指名があってのことだという。長きに渡ってデノンのAVアンプを担い、築かれてきた信頼から託されたサウンドマネージャーという重責。AVC-A110のサウンドは、デノンマン高橋氏の探求と挑戦とも言える。

そんな高橋氏が辿り着いたサウンドイメージは「深淵」。真っ黒な内部デザインからインスパイアされたもので、世界的なマーケティングにおける意向も含まれたキーワードとのことだが、柱となる「高い低域解像度」と「ハイスピードサウンド」という要素はデノン自身の持ち味とも言えるもので、ここでもブレることはない。

左がAVC-A110の内部で、右がAVC-X8500Hの内部。「深淵」のサウンドイメージはこの黒いデザインからインスパイアされたという

その技術要素として「高い機構安定度」「高い放熱安定度」が掲げられ、「音楽には音楽の持っている表情があり、 効果音には効果音の表情がある。その表情を表現したい」という同氏の想いを追求するために、隅々まで手が加えられることになる。

では、4つの要素を個別にみていこう。

AVC-A110の「深淵」を理解するための4要素を解剖

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