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インタビュー

新たな取り組みとその手応えを聞く

エプソン販売 鈴村社長インタビュー。新商材も加わり販売強化、効率と手厚さを両立させる方策とは

Senka21編集部 徳田ゆかり
2020年01月14日
プリンターやプロジェクターなどコンシューマー商品で圧倒的な存在感を示すエプソン。インクジェットプリンターで提案する定額制ビジネスモデル「スマートチャージ」、空間演出を司るビジネスプロジェクターのラインナップ、時計、さらに産業用のロボットなどB to Bにも注力し、新たな価値提供を推進している。こうした商材の販売を担うエプソン販売で、2019年4月、新たに代表取締役社長に就任した鈴村文徳氏にご登場いただき、取り組みとその手応えを聞いた。

エプソン販売(株)代表取締役社長 鈴村文徳氏

エプソン販売株式会社 代表取締役社長
鈴村文徳氏Fuminori Suzumura
岐阜県出身。1990年4月 エプソン販売(株)入社。2009年4月 プロダクトマーケティング部長。2013年4月 BP MD部長。2014年6月 取締役。2014年7月 取締役 販売推進本部長。2017年4月 取締役 スマートチャージSBU本部長。2019年4月 現職に就任。

●効率と手厚さの両立、その鍵はデジタルトランスフォーメーション

 ーー 現在までのお取り組みと手応えをお聞かせください。

鈴村 現職に就任した昨年4月、記者会見でスマートチャージ、時計、商業・産業系の機器、ロボティクスといった我々にとって新しい商材の販売力を強化、事業拡大を目指すと話しました。新しいお客様に対して新しい売り方をする。ここまでそれぞれのカテゴリーで手応えを掴み、確実に前進していますので、2020年はそれを加速して参ります。

組織の体制としてはあまり変わっていませんが、ポテンシャルをさらに引き出したといいましょうか、販売パートナー様の懐により深く入り込む活動を進めています。我々の既存の商材を販売してくださっているパートナー様との関係がかなり強化され、新しい商材の販売にもご協力いただいています。さらに、新しいパートナー様にも加わっていただいています。

これまでは「売れるものをしっかり売る」という姿勢でしたが、新規の商材はお客様にとっての価値をいっそう明確にする姿勢が必要。お客様との接点活動もこれまでより深くなります。とはいえ人的リソースに限りがありますので、既存の商材は広く、新しい商材は深く、効率的な販売と手厚い接点活動での販売と商材によって変えているということです。

エプソン販売は約1800人の人員で約1800億円の売上高、1人あたりだいたい1億円の売上げです*。これだけの売上げパフォーマンスを出すメーカー系の販社は少ないと思いますが、そういう意味でも当社は効率的な販売をしていると言えるでしょう。さらに手厚い接点活動で高価値を販売する手法を取り入れ、生産性の高さを維持しつつ付加価値の高いビジネスができるようになると思っています<*従業員数:1,765名(2019年4月1日現在/正社員数) 売上高:2018年度(2019年3月期) 1,834億円>。

今まさにその転換期にあるのは間違いありません。社内で皆にどう意識づけし、どうやって変えていくのかに日々取り組んでいます。人を振り分けるだけでなく、オペレーションも変えなくてはいけません。

 ーー 変革にあたって、今のお立場になる以前から見えてくるものもありましたか。

鈴村 こういう考えを持ったのは、まさに営業の現場にいる時です。私はコンシューマーの商品を効率よくたくさんのお客様に売ることを経験し、そこから一転してビジネス商材に携わりスマートチャージの立ち上げを経験してきました。B to Bのビジネスは、エプソン販売の強みである圧倒的な高効率販売だけでは機能しないと実感し、変えなくてはと決心しました。強みは強みで残しつつ、別の手法も取り入れていけば、当社のオペレーションは相当強いものになると思い、1~2年前からその実現に向けて考えを巡らせ、デジタルトランスフォーメーションを実現するというのが一つの解となりました。

デジタルトランスフォーメーションというと、ビジネスモデルやサービスモデルを変えるといったお客様に向けた戦略達成の手段として語られる部分と、社内の業務を新しいオペレーションにするという2つの方向がありますが、それは両方行わなくてはならないと思っています。特に社内のしくみや基盤づくりにデジタルトランスフォーメーションをうまく使えれば、お客様に対して高効率な販売と手厚い販売とを両立させることができると考えます。

それで実際に、スマートチャージの営業本部長時代に本部で変革に着手して、実現できればそれを横展開できるとイメージしていました。そして仕組みを入れ、ルールをつくり、アプリケーションを使って業務を行う、BIツールを使う、いろいろなものを見える化するなど推進していきました。あともう1~2年やれば固まると思っていた矢先に現職に就任することとなりまして、フィールドが全社に広がったのです。

改革というのはやはり簡単ではありません。ベストを目指そうとすると息切れしますから、まずベターを目指す考え方。ただそれは必ずやらないといけない。今やらなくては、10年先どうなってしまうか。ベターを積み重ねていけば、結果が変わると考えています。

●新たな発想でアプローチし、プロジェクターの可能性を広げていく

 ーー 商材に沿って伺います。プロジェクターのお取り組みはいかがでしょうか。

鈴村 プロジェクター全体は、まだまだ成長し続けている領域です。特に文教のニーズや、商業施設での空間演出のニーズが旺盛です。ポテンシャルはまだまだあって、パーソナルでもビジネスでも映像を楽しんでいただく機会をもっともっと広げていきたいと思います。

ホームプロジェクターでは、4K/HDRに対応した超短焦点の「EH-LS500B」「EH-LS500W」の発売を控えています。3LCD方式の「EF-100BATV」「EF-100WATV」は予定通り年末の発売で、おかげさまで大変ご好評をいただいております。

EH-LS500B

EH-LS500W

販促活動ではこのほど、“ゴロゴロしながらプロジェクタ―を楽しむ活動”を追求する『寝ころ部(ねころぶ)』を発足し、特設サイトを開設しました。昨年末にはキャンペーンとして、エプソン公式Twitterアカウントをフォローしていただき、ホームプロジェクターでやりたいことなどをコメントしていただいた方に抽選で「EF-100BATV」「EF-100WATV」をプレゼントする内容を展開しました(現在キャンペーンは終了)。

EF-100BATV

EF-100WATV

また「slash(スラッシュ)川崎」というホテルに全室エプソンのホームプロジェクターを導入いただきまして、12月5日から「寝ころんで世界旅行」をしているような大画面映像を体感できるスペシャルルームが3部屋オープンしました。その体験レポートは特設サイトに掲載します。プロジェクターの映像を天井などにも投映して、寝転んで楽しむといった価値の提供ですね。新たな使い方として、プロジェクターならではの利便性をアピールしております。

ビジネスプロジェクターに関しては、空間演出のニーズにさらにお応えしていくため、たとえば制約のある小売店などの現場で空間演出が手軽に実現できるような仕掛けをつくりたい。我々が能動的にコンテンツをつくって提供をするなど、できることはもっとあります。プロジェクターの訴求に関しては今後、さらに新しいことにチャレンジしていきたいと思っています。

私は1990年に入社したのですが、その頃のデータ通信手段といえばISDNで、最大速度64kbpsでした。30年たった今は5Gの時代、たとえば5Gで15GBのブルーレイディスク1枚程度のコンテンツをダウンロードする時間は3分から5分程度。これが64kbpsだと、25日間必要なんです。これだけの変化に、我々自身の価値観や思考がしっかりついていかなくては。デジタルの世界は加速的に進化しますから、そういう世界にいれば4Kや8Kの映像だってたやすくダウンロードできる時代は来ると考えられます。そんな発想を持つと、できることが違ってきます。

●プリンターの新提案「アカデミックプラン」、学校現場の困りごとをすくい上げた

 ーー プリンターを月々定額制で利用できる新たなビジネスモデル「スマートチャージ」では、学校に向けた「アカデミックプラン」という新機軸を打ち出されました。

鈴村 アカデミックプランは、モノの購入にお金を払っていただく従来のビジネスモデルとは全く違う、いわばサブスクリプションのビジネスモデル。学校の現場でカラープリントし放題などを展開する前代未聞のもの。私の中で構想を温めてきたものです。

商談の際にたくさんの人間を連れて行き、我々の意志や覚悟を示した上でアカデミックプランを説明しました。そんな風にアピールしたのは初めてのことです。何もかも未知の経験でした。テストマーケティングをいくつかの学校で行うと、現場でも大変喜んでいただけ、1年余りを費やしていけるという手応えを得て発表に至ったのです。

こうしたB to Bの販売プランでプレス発表会を行うことはなかなかないことですが、多くの方にこれを知っていただきたい思いがありました。おかげさまでその結果、教育委員会様から直接ご連絡をいただく例がいくつもありましたし、今後ともこれを大きく広げて参ります。

●ショールーム「エプソンスクエア丸の内」をエプソンのさらなる可能性を広げるための拠点に

 ーー 昨年開設したショールーム「エプソンスクエア丸の内」のお取り組みはいかがですか。

鈴村 11月末までに来場者数は45,000人を数えましたが、12月の来場者はそれまで以上に増えています。ギャラリー展示も趣向を変えて、新たな層のお客様を呼び込んでいます。情報発信基地として順調に機能している状態で、次のステップに進めるよう形態を変えていきたいですね。

私としては、オープンイノベーションの拠点と位置づけています。最近我々はエレファンテックさんに資本提携させていただきましたが、インクジェット印刷と銅めっきでフレキシブル基板を製造するといった、インクジェットの新たな可能性を推進する展開です。パートナーさんと組んで、我々だけではできないことを一緒に盛り上げる、「エプソンスクエア丸の内」はそういうアイデアをもった方々が集まり情報交換できるような場所として、さらに強化していきたい。

●環境配慮型オフィスセンターの取り組みが着実な実績、次なる展開を目指す

 ーー 環境配慮型オフィスへのお取り組みも興味深いですね。

鈴村 インクジェットプリンターや、水を使わずに紙を再生する製紙機「PaperLab」を活用して、環境負荷の低減に貢献する環境配慮型オフィスプロジェクトを昨年7月1日から、まず新宿ミライナタワーのオフィスでスタートさせています。4フロア従業員1100人の環境で、12月までにPaperLabで再生した新たな紙が69万9,427枚。これは木に換算すると43本分、水に換算すると500mlペットボトル749万本分、CO2に換算すると2t分になるそうです。こうしたスモールサイクルのリサイクルが、環境に対して大きく貢献することを実感しました。

新宿ミライナタワーの29階には環境配慮型オフィスセンターを設置し、PaperLabやインクジェットプリンターの実機を置き、プロジェクションマッピングなどでわかりやすく表現しながらこの取り組みをアピールしています。多くの皆様にぜひご覧いただきたいですね(予約フォームから予約申し込みの上)。セイコーエプソングループ内では、新宿オフィスだけでなくいろいろな拠点でこの取り組みを行っており、これもさらに広げていきたいと思います。

拠点や企業の単位にとどまらず、地域や町全体、あるいはもっと広い単位でこうした取り組みに着手できれば、環境に対する貢献はもっと大きなものになると期待できます。そうした観点で我々はSDGsの取り組みも、日々体感しながら行っているのです。こうしたこともしっかりと推進していきたいと思います。

 ーー さまざまな変革に向けて、新たなお取り組みが精力的に進んでいますね。今後のご活躍にもさらに期待しております。

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