HOME > インタビュー > 「1,000円のイヤホンで可能な限り熱量を伝える」。e☆イヤホン増田 稔氏が語る市場拡大への挑戦

キーマンへのロングインタビュー

「1,000円のイヤホンで可能な限り熱量を伝える」。e☆イヤホン増田 稔氏が語る市場拡大への挑戦

公開日 2019/02/26 15:57 Senka21編集部 徳田ゆかり
  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE

よりいい音でクリエイターの思いや作品の熱が伝わると、ユーザーの次の行動が違ってくる


−−−− もともとALPEXさんの商品をTMネットワークが卸しておられたのですか。

増田 お取引はしておらず、AHP-337はTSUTAYAの取り扱う商品のひとつとして、売り場づくりをしていた私がたまたま知ったもの。たくさん売れていることから注目して、当時売り場を担当していた当社の楢崎という者と「チューニングしてみたらどうだろうか」となり、結果的にALPEXさんと一緒に新しい商品をつくることになったんです。

新しいモデルは前面のフィルターと、ドライバーとケーブルを完全に変えることにしました。値段は10円だけアップさせていただいてほぼ据え置きの税別990円。それで2017年の4月に発売したのがHi-Unit「HSE-A1000」です。

Hi-Unit HSE-A1000

CCCグループとe☆イヤホンの専売品としてスタートさせていただきました。TSUTAYAではAHP-337が完売したら入れ替えとして徐々に展開していきましたが、おかげさまでe☆イヤホンではお客様の評判がよく、いいレビューも沢山いただけました。TSUTAYAでも順調に売れ始めて、1年経って5万本ほどの出荷が見込めるようになりました。

この価格で出せる最高の音を突き詰めました。「1000円で出せる音はこれです」ということです。ただお客様から、もう少し低音が欲しいといった声もあり、それにお応えして新たな商品を出すことにしました。

HSE-A1000をベースに低域を強化した1200円の「HSE-A1000R」、さらに上の価格帯で解像度を高めた2400円の「HSE-A2000」。それから、もっと低価格帯ですごいものをと思い、700円の「HSE-A500」を、Hi-Unitシリーズとして2018年4月、5月に発売しました。「e☆イヤホン 」のロゴを入れたこれらの商品はCCCグループとe☆イヤホンの専売ではなく、イオン様の家電売り場やタワーレコード様、書店やCDショップ、大学の生協さんなどでも展開させていただき順調に推移しています。4つのラインナップで今年度は30万本の出荷を見込んでいます。 

Hi-Unit HSE-A2000

Hi-Unit HSE-A1000R


HSE-A500

−−−− Googleでイヤホン検索する人を増やす。イヤホンは何でもいいと考えているユーザーにリーチするための商品戦略ですね。

増田 CDショップの方々ともお話をすると、少しでもいい音でCDを聴いた方が感動度合いが高まり、高まれば高まるほど、次の行動が変わると指摘されます。同じアーディストのCDをまた買おうと思ってくださるとか、ライブに行ってみようとか。我々の取り組みが、停滞しているCD業界への刺激にもなればと思います。

昨年10月には、Hi-Unitシリーズの低域強化モデルも2機種出しています。低域を強化したモデルは若い方から一定の需要があります。これらには「COMPLY」さんにご協力いただいて、イヤーピースを1ペア標準装備して1900円、2800円の価格にしました。低反発ウレタンのイヤーピースはまだ一般の方には馴染みがないですから、イヤーピースにもいろいろあることを知っていただくきっかけにしたいですね。

−−−− Hi-Unitシリーズに対して御社はどんなお立場で関わられているのですか。

増田 メーカーは ALPEXさん。e☆イヤホンが共同開発として “Hi-Unit Powered by e☆イヤホン” と表現させていただいています。監修というのは、メーカーさんが主で、アドバイスをする立場。それに対して共同開発は、完全にフィフティ・フィフティということ。

ALPEXさんは、イヤホンを品質を保って低価格でつくることに長けていらっしゃる。我々はイヤホンをお好きな人たちがいらっしゃる専門店を10年以上展開させていただいて、接客販売のノウハウや、お客様に好まれる音の傾向といった培ってきたものがあります。それらを掛け合わせて、低価格のところでいいものをつくっていく。

同様の手法で高価格帯モデルをつくらないのかとよく聞かれますが、現段階でそのつもりは一切ありません。重要なのは裾野を広げることですから。それに高価格でいいものをつくるのは小手先でとてもできることではありません。音に対する高い見識を持たれているいろいろなメーカーさんがすでに数多くいらっしゃいます。

逆にそうしたメーカーさんで、低価格帯のモデルを展開するのはなかなか難しいと思います。けれど我々は時間をかけず、工場に行って直接やりとりしてスピーディにそれができます。たとえばハイブリッドモデルをつくる、ハウジングの構造に手をかける、といったことに踏み込むとスピーディにはつくれませんが、我々は最低限の部品でチューニングをしています。それでも音を追い込める部分があります。


次ページ海外展開にも着手。パートナーである工場にもメリットを。

前へ 1 2 3 4 次へ

この記事をシェアする

  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE