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キーマンへのロングインタビュー

「1,000円のイヤホンで可能な限り熱量を伝える」。e☆イヤホン増田 稔氏が語る市場拡大への挑戦

Senka21編集部 徳田ゆかり

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2019年02月26日
イヤホン・ヘッドホン市場の一翼を担う注目の専門店「e☆イヤホン」。同店を展開する株式会社タイムマシンの取締役、およびタイムマシンのグループ会社である株式会社TMネットワークの代表取締役社長を務める増田 稔氏に、「イヤホンの裾野を広げる」ことを狙いに繰り出す昨今の大胆な取り組みについて語っていただいた。その目的は「コンテンツの熱をそのままエンドユーザーに届けること」。感動を衝動に市場を刺激する、増田氏の活動とは。

増田稔氏

増田 稔氏(Minoru Masuda)

株式会社タイムマシン 取締役・株式会社TMネットワーク 代表取締役社長
1972年12月7日生まれ いて座のB型。大阪市西成区生まれ枚方市育ち。
1997年、株式会社ソフマップ入社MIDILAND配属。父子家庭として娘を育てながら、CREATORSLAND、Degital Theater Clubなど専門店の立上げを経験し、2003年、商品部長。
2008年9月、同社退社。
2008年10月、株式会社WAVE入社。営業本部長兼管理本部長などを務める。
2011年3月、同社退社。
2011年7月、株式会社タイムマシンにジョイン。CLT、システム開発、Web事業、商品本部、営業本部などを歴任し、2015年7月、同社取締役に就任。
2015年7月、株式会社TMネットワーク代表取締役に就任。

iPodが出て、リスニングに革命が起きる。イヤホンが “来る” と思った

−−−− 株式会社タイムマシン(以下タイムマシン)、および株式会社TMネットワーク(以下TMネットワーク)、それぞれの会社の概要と増田さんの役割についてご説明いただけますか。

増田 タイムマシンは2007年に、代表取締役社長の大井裕信と取締役副社長の川口高志が創業しました。同時に「e☆イヤホン」を立ち上げ、おかげさまで昨年11周年を迎えることができました。私は2011年に加わって、その後お客様サービス向上のチームの責任者や、webやPR部門の責任者を務め、2013年頃から商品部の仕入れの責任者と営業の責任者を兼任してきました。

−−−− 大井さんや川口さんとはお知り合いだったのですか。

増田 彼らも私も「ソフマップ」の同僚でした。私はソフマップの「CREATORS LAND」という楽器店に入って、最終的に商品部の部長となった時に、大井が営業本部の執行役員。部署も部門もまったく違いましたが、一緒に酒を飲みながら話をする仲で、「e☆イヤホン」をやろうとしている話も聞かせてもらっていました。

−−−− その頃増田さんはイヤホンに関わっておられたのですか。

増田 私はソフマップでAV・楽器のバイヤーもしていまして、2001年頃からイヤホンをたくさん販売したんです。私はレコーディング系が好きで家に機材も置いていましたし、マイク、イヤホン、ヘッドホンはもともと馴染みやすいものでした。SHUREの「E2C」が出た時は、「ボーカルマイクをつくっている会社が出口(イヤホン)をつくったらさぞかしすごいだろう」と期待したとおりだったことを鮮明に覚えています。

大井は何かしらの専門店を作ろうと吟味していて、イヤホンもその候補の一つでした。今思えば、1万円のイヤホンであるE2Cに初めて触れて、「何これ!」と感動したことが最終的にイヤホンを選んだきっかけの1つになったのだと思います。「タイムマシン」が発足して「e☆イヤホン」が立ち上がった時、私はソフマップで商品部の責任者でしたが、商品の導入にも微力ながら協力をしました。

−−−− いずれご自身もタイムマシンに加わるおつもりでしたか。

増田 この時点では、まったくそうは考えていませんでした。私自身は、コンテンツとかクリエイターが表現することをできる限りそのままユーザーに届ける方法を模索している状況で。今もその気持ちで動いています。

音楽でも何でもそうですが、少しでも “解像度” が高い状況でコンテンツを届けられれば、ユーザーの感動の深度が深まると思って今もそれを追求しています。ユーザーが感動体験をすれば、自身で作品をつくったり、コンテンツを再生するときにお金のかけ方が変わってきたりすると思うんです。

そしてPCでレコーディングする時代が来ると見て、そういう動きに一番強いだろうと当時「MIDI LAND」だったCREATORS LANDを選んで入りました。

そこで店長をしていたときにiPodの発売があった。自分の持っているCDのコンテンツを全部外に持ち出せるなんて、革命以外の何物でもない、リスニング環境ががらっと変わると思いました。それで当時では破格の高価格帯である5000円から1万円くらいのイヤホンを店にたくさん導入しましたが、そんなの売れるわけがないと言われ、ソフマップのオーディオ売り場でも扱っていませんでした。でもCREATORS LANDではB&Oの「A8」なども結構売れましたよ。

敷居を低くしないと、イヤホン市場が食い合いになる

−−−− タイムマシンに加わられたのはどんないきさつでしたか

増田 ソフマップで商品部長という責任ある仕事を任されていましたが、どうしても自分の実現したいこともあり、CDショップに転職した。その後CDショップを辞めて東京から家のある大阪に戻ることになって、それなら手伝って欲しいと大井に声をかけられました。30代後半になり、若い人たちと働きながら自分の培ってきたものを伝えるようなことができたらいいな、好きなイヤホン・ヘッドホンに触れながら、気心の知れた人たちと仕事するのはいいなという気持ちで、タイムマシンに入ったんです。

2013年頃に営業と商品部を任されることになってからは、大井たちと未来の話を頻繁にするようになって。2015年にCCCモバイル(以下CCC)と業務提携して、我々がイヤホン・ヘッドホンを卸してTSUTAYAのお店に並べてもらうことになりました。でもお店であるe☆イヤホンや運営会社であるタイムマシンからは卸せません。色々と相談するうちに仕入れの会社をつくったらという話が持ち上がりました。

−−−− それがTMネットワーク設立につながるのですね。

増田 その頃カスタムイヤホンのULTIMATE EARSの代理店契約や、「buddyphones」というキッズホンを扱うonanoffの代理店業をタイムマシンで行うようになっていて、私は商品部を担う立場として、いいものをお届けする、専門店ならではの品揃えをすることを改めてしっかりやっていきたいと考えていました。2015年に新会社としてTMネットワークが設立され、私が代表になりました。タイムマシンの社名には、「未来の過去は、今日」という思いが込められています。そして「TMネットワーク」には、世の中のたくさんのタイムマシンをつなげる、という思いを込めました。

タイムマシン社ではe☆イヤホンの運営を行い、グループ管理部門を持っています。それ以外のすべての事業を行っているのがTMネットワーク。商品の仕入れ部門、イベント「ポタフェス」の運営やフリーペーパー「e☆イヤ本」の発行をするPR部門、中古商品や修理、カスタマイズの取り扱いをする部門、輸入代理業店営業部門、商品の卸しの部門、それから「rakunew」というサイトを運営する部門があります。卸しについてはCCCの他に最近タワーレコード様にもお取引があります。e☆イヤホンの全商品もTMネットワークから卸しています。

我々のミッションは、e☆イヤホンが持っている専門店としての経験やノウハウ、お客様とのつながりやお取引先様とのつながりの中で培った資産を、どう活かしていくかということ。e☆イヤホンはマニアックな店と捉えられていますが、私としては「敷居の低い専門店」でありたい。CREATORS LANDにいた頃からもずっと目指し続けてきたことで、敷居を低くしてたくさんの方に店に来ていただき、市場のパイを広げたいんです。

若い人にとっては、ショーケースに入った30万円の機種であろうとすぐ試聴できる、買え買えというプレッシャーなく吟味できるe☆イヤホンは入りやすい店だと思いますし、そういうところはこれからもずっと保っていきたい。しかし、「イヤホン」そのものに興味を持ってくれる方をもっと増やすことができないと、イヤホン・ヘッドホンのビジネスは、ハイエンドユーザーのお客様に高い商品を何度も買っていただかなくてはならない状況になっていくのではないかと懸念しています。

音楽を聴く行為、特にイヤホンで聴く行為はカジュアルで、電車の中や屋外でも場所を選ばずに聴ける身近な楽しみ方。イヤホン・ヘッドホンの市場はまだ大きくなると思っています。現状では、スマートフォンの付属のイヤホンを使っている人がまだまだ多い。イヤホンは消耗品だと思われていて、コンビニや雑貨店や100円ショップで安く買うという意識。TSUTAYAや本屋さんで買われるのもそんな感じですね。だからCCCとの提携も、イヤホンに興味を持ってもらう仕掛けづくりをするためでした。

当時はレンタル専業のTSUTAYAの店もまだたくさんあって、店頭に必ずイヤホンが置いてありました。あの売り場を、e☆イヤホンをやってきた我々がセレクトした商品でつくるチャンスがあれば、裾野を広げるきっかけになるんじゃないか。そういう思いがきっかけでした。提携して私自身がTSUTAYAの売り場づくりを手がけ、並行してTMネットワークを運営していきました。2016年から2017年にかけてのことです。


イヤホン市場に人を増やすために着手した、ある取り組みとは

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