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インタビュー

開発者に聞く連続企画 後編

レコードの「生々しさ」をデジタルで再現、ソニーDMP-Z1「バイナルプロセッサー」を深く知る

山之内 正

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2019年01月28日
2018年12月に発売された、ソニーの“超弩級”ポータブルプレーヤー「DMP-Z1」。その開発コンセプトや投入された技術について、山之内正氏が開発陣にインタビューを行った。後編となる今回は、試聴レポートと新たに採用された再生モード「バイナルプロセッサー」に焦点を当てて紹介していこう(DMP-Z1の技術詳細を紹介した前編記事はこちら)。

「DMP-Z1」¥950,000(税抜)


DMP-Z1のサウンドをチェックする

DMP-Z1に投入されたノウハウとこだわりは、近年発売されたソニーのオーディオ製品のなかでも群を抜く。インタビュー編では一体設計やバッテリー駆動など4つのポイントに絞って詳細を紹介したが、そのほかにも注目すべき技術や機能は枚挙にいとまがない。今回はそのなかから新機能のバイナルプロセッサーに注目し、その内容と効果を検証するが、その前に音質関連機能を使わない「素の状態」の音を聴いてみることにしよう。

試聴に使ったAKGのK812はインピーダンスが36Ωと低めなので、ノーマルのゲイン設定でもボリュームノブを7〜8割ほど回せば適切な音圧が得られ、ハイゲインに設定する必要はなかった。ボリュームの感触はなめらかで、しかもほどよい重さがあり、設計者が操作感にこだわった思いが伝わってくる。

背面のUSB-C端子経由で内蔵メモリにハイレゾデータを転送すれば、その後はPCをつなぐことなく、本機単体で好きなだけ音楽を楽しめる。その使い勝手の良さはプレーヤー一体型ならではのものだ。メモリは256GBだが、micro SDカードのスロットが2つあり、カード内の音源は挿入時に自動でデータベースに登録され、曲一覧に表示される。

本体側面に2系統のSDカードスロットを搭載

背面部にUSB-B端子を搭載。USBケーブル経由でPCなどと接続できる

バッテリー優先モードを選んでおけばACアダプターをつないだままでも自動的にバッテリー駆動になる。AC接続と内蔵バッテリーを切り替えて聴き比べてみると、明らかに後者の方が質感や艶感が向上するので、ここからはバッテリー駆動で聴いた音の印象を紹介しよう。


音が出る直前の気配や息遣いまで逃さない究極のナチュラル志向

山田和樹指揮スイスロマンド管弦楽団のルーセル《バッカスとアリアーヌ》(DSD 2.8MHz)はアタックに緩みがなく、フォルテシモの和音が低域から高域まで一気に立ち上がる感触が爽快だ。楽器の種類が多く、編成もかなり大きいのだが、それにしては響きが混濁せず、隅々まで良く見通せることにも感心した。また、休符の部分では全体がスーッと静かになり、余分な付帯音などはまったく気にならない。そのあと再び静寂から音が立ち上がるとき、既存のヘッドホンアンプよりも静と動の対比が鮮やかに感じるのは、基本的なS/Nが良いことと、最大音圧の和音に混濁がなく、飽和感がないことが理由だろう。

DMP-Z1のディスプレイ部。SDカード内の音源を再生する場合には、ウォークマンと同様に本体のディスプレイから全ての再生操作が行える

また、たんなる無音と思っていた部分で、音が出る直前の気配や息遣いなどの微妙な音が入っていたことに気付く箇所も多い。信号のロスが非常に少なく、ノイズに埋もれないので、微小な情報を聴き逃すことがないのだ。

アルネ・ドムネラスのセプテット(FLAC 192kHz/24bit)はライヴ会場の空間を満たす空気の密度感が非常にリアルで、リズム楽器の粒立ちが鮮明だ。余分な音が乗らないので、音数が増えてもうるさくないし、裏拍の緊張が緩むこともない。ヴィブラフォンのアタックがにごらず、澄んだ和音の響きを再現。ベースは音に芯があり、しかも一音一音の切れが良いので停滞感がない。ヘッドホンアンプのなかには低音の量巻など、あえて特徴的な音をアピールする製品もあるが、DMP-Z1はそれとは対極のナチュラル志向で、輪廓の強調感も含めて余分な演出とは無縁だ。

レコードでなければ聴けない音を再現する「バイナルプロセッサー」

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