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新作「Zinger」をマランツ試聴室で聴く

ハイレゾの意義とは? “ジルデコ”towadaさんとマランツ・サウンドマネージャーが語り尽くす

公開日 2018/06/05 10:02 構成:ファイルウェブ編集部
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大好きなアナログの音を表現するために選んだハイレゾの最高峰 “DSD”

尾形さん ジルデコというバンドは、ハイレゾの優位性に早くから着目されていて、DSD録音した音源をDSDで配信するということもいち早く行いました。そもそもハイレゾに着目した理由は何だったのでしょうか。

towadaさん 私の世代はちょうど、あらゆるメディアがタイムリーで、アナログからカセットテープ、CDへと移り変わっていくのを体験しました。こうした変遷を経て、最終的にアナログが好きだなと思ったのです。しかし、全てをアナログテープで録音するとなるとあまりに費用がかかる。アナログのような滑らかな音の質感、柔らかさというものを他の方法で得られないかと考えていたのです。

その結果として、DSDというデジタルの最高峰とも言えるスペックでトライしてみたのです。DSDはご存じの通りその特性上、編集が非常に難しく、それは演奏にも影響します。僕はジャズが好きなのですが、DSD録音での難しさは昔のジャズミュージシャンがレコーディングの時に味わっていた体験と同じなのかなと。録音にそうした緊張感が得られることも、DSDで録音するきっかけになりました。

尾形さん 2012年に最初のDSD録音とDSD配信を行っていますが、それ以前もハイレゾでの録音は行っていたのですか。

towadaさん 録音はずっと96kHz/24bitで行っていました。

尾形さん towadaさんにとって、よりアナログに近いと感じるのは、PCMとDSDどちらでしょうか。

towadaさん 時と場合によりますが、聴きやすさというか、よりアナログライクにまとめてくれてるのはDSDだと思います。ただ、PCMにしてもDSDにしてもそれぞれ旬がありますよね。ですから、今回は96kHz/24bitのPCMで録音するという方法を選んでいます。

尾形さん 今回、96kHz/24bitのPCMで録音した理由は何だったのですか。

towadaさん DSDネイティブで録音してアナログでミックスしてみたり、KORGのDSDマルチチャンネルレコーダーを使ってみたり、piramixでやってみたり、本当にいろいろ試しましたが、DSDネイティブ録音である必要はない、というのが今のところの結論です。

尾形さん それは興味深いですね。最後の器がDSDであればよいということは、PCM音源を最終的にDSDに変換する、あるいは聴く側でDSDにするという選択肢がある、と。

towadaさん ありだと思います。PCM音源をDSD変換して再生するのでも意味があると私は思います。DSDに変換することで、まとめ上げてくれているような効果を感じます。


尾形さん DSD変換という点では、今日はお聴きいただけませんでしたが、マランツのフラグシップとなるUSB-DAC搭載SACDプレーヤー「SA-10」は、全てのPCM音源を11.2MHz DSDに変換してからD/A変換を行います。このSA-10は自社で開発したオリジナルのD/Aコンバーターを搭載しています。

今回はCDとハイレゾを聴き比べるということでND8006で『Zinger』を聴いていただきましたが、次の作品はぜひ「SA-10」で、DSD変換の効果も聴いていただきたいですね。

towadaさん それは非常に興味がありますね。ぜひ聴いてみたいです。

ハイレゾの円熟で音楽とオーディオはどう変わるのか?

尾形さん 『Zinger』はボーカルとギターというシンプルな構成での作品ですが、だからこそハイレゾならではの良さがわかりやすい音源だと思いました。towadaさんは、マランツの試聴室でND8006でご自身の音楽を聴いてどのように感じましたか。

towadaさん 再現性という点で非常に信頼できる音だと感じました。また、ND8006は良い意味での民生機といいますか、バランスが良くて、伝えたいところをしっかりと伝えてくれる音だと思いました。

尾形さん ありがとうございます。最後にアーティストとしての立場で、今日のテーマであるハイレゾをどのように考えているのかを伺いたいと思います。

towadaさん 音楽の作り手として、ハイレゾで製作しているという特別な意識はありません。ハイレゾを扱える環境が整ってきたなかで、使うタイミングが自然にやってきたという感覚です。音楽で自分たちの音を伝えるための手段が増えたとも言っていいでしょう。オーディオ機器にしても優れたハイレゾ対応製品が揃っていくなかで、ハイレゾであることを特に意識せずに、自分たちの音楽がより自然に伝わるようになったらいいと思います。尾形さんはオーディオ機器の作り手として、ハイレゾをどのように捉えていますか。

尾形さん SACDのときも、ハイレゾが出始めたときもそうでしたが、当初は器だけが大きくなって中身の音楽がこなれていなかったと思います。それが最近になって、音楽の作り手の側も円熟してきて、ハイレゾならではの良さが発揮されるコンテンツが多くなっていると思います。

一方で、絶対数で言えばCDが圧倒的に多いので、まずはCDの音をしっかりと鳴らせるものにしなければいけないという考えをベースに今でも製品を開発しています。また、マランツはSACDをいち早く扱ってきた歴史もあり、ハイレゾだからという特別な意識はありません。ですから、これまでもマランツのHi-Fi製品の音質検討はCDとSACDを主に使ってきました。しかし、ハイレゾの良い音源が出そろってきたところで、それらを音質検討に使っていくタイミングなのかなと感じています。

towadaさん 次はぜひ、SA-10でジルデコのハイレゾを聴きたいですね。

尾形さん はい、またぜひいらっしゃってください。

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