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新作「Zinger」をマランツ試聴室で聴く

ハイレゾの意義とは? “ジルデコ”towadaさんとマランツ・サウンドマネージャーが語り尽くす

2018/06/05 構成:ファイルウェブ編集部
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ハイレゾの鮮度を最大限に活かしてミックスした

尾形さん それでは、もう少し『Zinger』のCDとハイレゾを聴き比べてみましょう。

towadaさん では、5曲目の「I say, (DUO ver.)」と6曲目の「おちちとバラード」をお願いします。

真剣な表情で音楽に集中するtowadaさん

尾形さん 聴き比べると、やはりハイレゾのほうが生っぽさがありますね。

towadaさん 「I say,」は、敢えてデジタルリバーブをふんだんに使っています。デジタルディレイも使っていますが、ハイレゾで聴くとディレイのフィードバックの数が明らかに変わりますね。CDの方はたぶん、本来の2/3ぐらいしか聴こえてないと思います。

尾形さん 確かに、ハイレゾの方がリッチに聴こえますね。CDも出されている以上、ハイレゾが本当とは言ってはいけないのかもしれませんが(笑)。

towadaさん 「I say,」もすごく音数が少ない曲ですが、こちらは自分たちの曲のセルフカバーということで、オリジナルとはアプローチを変えて「シンプルに歌を聴かせる」ことを目指しています。このシンプルに歌を聴かせるというコンセプトを、圧縮音源やストリーミングでも伝えるにはどうしたらいいかということを考えました。

結果として、この曲はボーカルの前にマイクを3本並べて録音しています。ミックスでは各マイクの音が全部出ているのですが、フォーマットによってボーカルの質感が変わらないように注意しました。

尾形さん CDでも声の質感はちゃんと出ていますが、96kHz/24bitで聴くと、「そこで歌っているような実在感」がより表現されているように感じました。

towadaさん 「おちちとバラード」は、時間の都合もあって、1発録りした曲です。ギターとボーカルが対面して演奏しているのですが、それを双指向のコンデンサーマイクで録音しているので、実はモノラルなのです。

尾形さん 確かに、中央に座って聴くと、ボーカルとギターが重なって聴こえます。だけど、奥行き感がなんとなくありますね。

towadaさん はい、「こういうのもあっていいんじゃないかな」と。ミックスについても時間がなくなってしまい、結局録音したままでマスタリングに持ち込んだという(笑)。音が2つしかないので、マスタリングの現場でいろいろ調整しようと思ったのですが、聴いてみて、この雰囲気を活かしたほうがいいなと思ってそのまま行きました。

尾形さん でもそのおかげなのでしょう、鮮度感が出ていますよね。「アーティストがその場にいる実在感」が一番感じられる曲だと思いました。

towadaさん これを “完パケ” として残すのにはなかなか勇気が必要でしたが・・・。それができるのもハイレゾならではだと思うのです。これを44.1kHz/16bitというスペックでやってしまうと、「デモ音源」感というか、完成してない感じが出てしまうと思います。

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