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細部までこだわり抜いた新しいマイルストーン

デノンの旗艦ヘッドホン「AH-D7200」の設計思想を、開発キーマンが語り尽くす

公開日 2017/03/17 10:00 構成:編集部 小澤貴信
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ーー 当初からケーブルにこだわるというコンセプトはあったのでしょうか。

福島氏 自分のイヤホンのケーブルを試しに7N OFC素材のものに替えてみたら、あまりに音が変わって驚いた体験が、ひとつのきっかけになりました。実際にAH-D7200においても、今回採用したケーブルと他のものを聴き比べたとき、特にハイレゾ再生では中低域の豊かさにおいてあまりに大きな差がでました。


7N OFCを採用したケーブルが標準同梱されてる
ビジネス的なことを考えたら、ケーブルはリケーブル市場に任せたほうが効率的なのですが、ここまで明らかに音質差がでた以上は標準採用しないわけにはいきませんでした。当然、ケーブルには大きなコストがかかっていますので、AH-D7200の価格は本当にぎりぎりの設定です。

ーー それを聞くとなおさら、従来モデルのAH-D7100より価格が2万円も抑えられていることにも驚きを禁じ得ません。

福島氏 本当にお買い得だと思いますね。

ケーブルについては、他にも様々な配慮を行っています。着脱式ケーブルではタッチノイズが大きくなる問題もありますが、本機ではヘッドホンのバッフルからケーブルを浮かせる構造にすることで、それを最小限にしています。ヘッドホン内部の配線についても線材からこだわっています。

ーー ちなみに、AH-D7200にはポータブル向けのケーブルというのは付属されていませんが、ポータブル用途は想定していないということでしょうか。

福島氏 ポータブル用途を想定していないわけではありません。営業サイドからも同梱した方がいいという話もあったのですが、そうなれば当然価格も上がります。高いクオリティを実現しつつ価格を抑えることを優先した結果、同梱は見送りました。しかし、本機のドライバーは低インピーダンスなので、リケーブルによってDAPに接続しても楽しめる仕様になっています。

AH-D7200はハイレゾ再生をいかに捉えているのか

ーー AH-D7200では解像感の強化を目指したとのことですが、その背景には、昨今のハイレゾの潮流の影響もあったのでしょうか。

福島氏 ハイレゾ再生については当然意識していますが、そもそもから高解像度な表現の重要性は強く認識していました。ヘッドホン開発は別の話になりますが、学生時代にレコーディングエンジニアの仕事に関わった関係で、今でも録音の現場にはよく足を運びます。スタジオで生の演奏を聴く機会が非常に多いこともあって、録音現場の情報量やエモーションをいかに損なうことなく再現するかには、ヘッドホン開発の上でも常々気を使ってきました。そうした中で、より高解像度であることの重要性は認識していました。

ーー ハイレゾ音源を再生することで、AH-D7200の強みを実際に感じることはできるでしょうか。

福島氏 もちろんです。音質検討においても、特にハイレゾで聴くと違いはわかりやすかったです。30kHz以上の音響特性も、測定上でAH-D7000より優れています。ハイレゾに含まれる高周波成分は、AH-D7200の方が鳴らせると言えます。

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