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【特別企画】開発者インタビュー

ハイレゾが普及したいま、改めて見直す“原音忠実” − Sound Realityシリーズ誕生の舞台裏

公開日 2016/12/16 10:03 山本 敦
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フルデジタルで音が出るしくみとは?
入力信号に忠実に駆動できるタフなドライバーがキモ


DSR9BTには、SR9やMSR7と同じ45mm口径のドライバーユニットが搭載されているが、その構造や動かす仕組みは全く異なっている。電気回路の内部にはチップが組み込まれており、ワイヤレスで受けたデジタル信号は、Dnote独自の変調方式によるデジタル信号に変換され、L/R各チャンネルの独立した信号を4本のボイスコイルに伝えて、専用の「φ45mm”トゥルー・モーション”D/Aドライバー」に伝える。

デジタル信号を空気信号へダイレクト変換する、新開発φ45mm“トゥルー・モーション”D/Aドライバーを搭載。ここが本機の要であり、ヘッドホンメーカーであるオーディオテクニカのノウハウが発揮された部分だ

1本のボイスコイルに伝えられる信号には「+1/0/-1」の値があり、ボイスコイルが片方のチャンネルに4本あるので、合わせると「-4から+4まで全部で9通り」の値で変化する。この変化する値をものすごいスピードで入力しながらデジタル信号を波形化し、音として再現するわけだが、入力信号を正確に追従できるタフなドライバーがなければ振動板を平滑に動かすことができない。そうなると音に歪みが生まれてしまう。”トゥルー・モーション”D/Aドライバーはオーディオテクニカの開発陣が誇る、フルデジタルヘッドホンの心臓部である。

「振動板からボイスコイルまで、すべて1から作りあげたドライバーユニットです。入力された信号に対して正確な動きを引き出すために、ボイスコイルの長さを短く最適化しています。撚り線構造の7N-OFC線を使うことで信号の劣化を少なくして、よりピュアな音を鳴らせるように改善したことが、ATH-DN1000USBから得たノウハウが活きた部分です」(安藤氏)


ユニットをスムーズに動かすため、ボイスコイルは短く軽くした。さらに振動板が空気をより力強く押し出せるよう、大型のマグネットを純鉄一体型ヨークに格納した高性能磁気回路が内蔵されている。振動板の高域特性を高める「DLC(Diamond Like Carbon)コーティング」がSR9と同様に採用された。


電源周りの強化にも注力

ワイヤレス伝送された音声信号をBluetoothレシーバーのすぐ後ろの段階から、専用のデジタル信号処理プロセッサーに受け渡す回路構成としたことによって、電源まわりの強化にも工夫を凝らすことができたという。築比地氏によれば、DSR9BTはポータブルヘッドホンなので実装面積に限りがあるものの、内部に上手くスペースをつくって、音質に特化した大容量470マイクロファラッドのタンタルコンデンサーを乗せている。電源強化の結果として、長時間再生を可能にするとともに、歪みの少ないピュアな音質を実現できたという。


DSR9BTのサウンドは、硬さのない自然でクリアな中高域とシャープな低域のレスポンスの良さを特徴としている。広々とした空間の再現性や解像感の高さなど、ポータブルヘッドホンのATH-SR9と共通する部分も多い。USBケーブルでPCにつなげば、最大96kHz/24bit対応のハイレゾヘッドホンとしてデスクトップリスニングも楽しめる。

本機専用の”φ45mmトゥルー・モーション”D/Aドライバーについて、音づくりの妙技を安藤氏に訊ねた。


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