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「挑戦しすぎ」という声も出た価格の背景は?

驚異のハイコスパイヤホンはこうして生まれた − ソフトバンクセレクション「SE-5000HR」開発者インタビュー

公開日 2015/12/03 10:30 山本敦
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「音の方向性については、キャリアがつくるイヤホンなので、通話の音声品質にもこだわりました。これはオーディオ再生時に、ボーカルの再現性を高めることにもつながります。ハイレゾ対応という観点からは、特に解像度の高さと音場の広さ、透明感をユーザーに実感してもらえるようチューニングしました」。

昨今のポータブルオーディオにおけるハイレゾ再生のトレンドとしては、中高域の解像感とクリアさを基本としながら、アウトドア再生を想定した印象の強い低域にも重きを置く傾向が強まっているが、「SE-5000HR」もまさに、たっぷりと量感を備えながらもだぶつかず、シャープで存在感あふれる低音再生を特徴とするイヤホンだ。

SE-5000HRには、あらゆるジャンルの音楽再生をオールラウンドにこなせるバランスの良さがある。さらに小川氏は「音質もさることながらスペックにもこだわっています。再生周波数帯域の上限については45kHzまでと記載していますが、実際はそれ以上まで伸びています」とアピールする。

「SE-5000HR」のデザインは、金管楽器をイメージしたもの。ドライバーユニットはハウジング部を独自の「フローティング・キャビネット構造」として、タッチノイズを極力軽減して音質向上につなげている。小川氏は、このデザインが完成するまでの道のりは険しかったと振り返る。

「最初にデザイナーが仕上げてきた図案は、外観は素晴らしかったのですが、量産に結びつけるのが難しいものでした。そこで技術陣が知恵を絞って、金管楽器のフォルムというコンセプトを損なうことなく、しかも高い音質を確保できるかたちに落とし込んだデザインが最終商品に活かされました」。

取材時の様子。実際の製品を前にしながら開発秘話をうかがった

リモコンマイクの位置もスマホユーザーを第一に考えた結果

独自の「フローティング・キャビネット構造」については、高級感をキープしながら本体の耐久性を高めるところが最も難しかったのだという。最終的にはこれが実現できたことで、ケーブルが顎や首筋に触れて耳元まで伝わってくるタッチノイズが抑えられ、スマートフォンによる音楽リスニングの質を高めることにつながっている。

小川氏は「本製品を使って頂く方の大半は、スマホを中心に音楽を楽しむ方々と想定しています。移動中に歩きながら音楽を聴く際に、タッチノイズが多いと不快感につながってしまいます。キャリアがつくる高音質イヤホンなので、可能な限りスマホユーザーのニーズに寄り添ったオーディオ製品をつくることには徹底してこだわりました」と胸を張る。

キャリアならではのノウハウは、マイク付コントローラーの配置にも活かされている。「SE-5000HR」ではY字ケーブルの分岐点にマイクを取り付けている。昨今は、分岐後に左右どちらかのケーブルにマイクを持ってくる設計手法が一般的になりつつあるが、本機のマイク付リモコンのレイアウトについては、石川氏が以下のように説明している。

「スマートフォンのメーカーがつくるイヤホンとして、マイクは絶対に付けたいと考えました。一方、音質にこだわるお客様は、イヤホンにマイクは不要と考える方がいらっしゃることも承知しています。マイクを搭載しながら、左右の音のバランスやイヤホンの重心を均一に揃えるため、リモコンはセンターに配置しました」。

リモコンマイクの位置も音質にこだわった結果決定したものだという

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