HOME > インタビュー > 【第138回】実録:FitEar 須山氏×Just ear 松尾氏スペシャル対談『あなたのお耳にジャストフィット!』

[連載]高橋敦のオーディオ絶対領域

【第138回】実録:FitEar 須山氏×Just ear 松尾氏スペシャル対談『あなたのお耳にジャストフィット!』

公開日 2015/11/20 11:00 高橋 敦
  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE

■なぜ「テーラーメイド」なのか?

須山: Onkyo「IE-C」シリーズの、透明シェルを内側から塗るというこの仕様が好きなんですよ。昔うちでも挑戦したんですけど、うまくいかなくてやめました。塗装が弾かれてしまうんです。あとくみたてLab.さんのフェースプレートの美しさとか、NOBLE AUDIOさんのWizardデザイン、あんなすごいのうちでは絶対無理だなと思います。綺麗ですよね。こういったプレートの美しさもカスタムの醍醐味だと思います。

野村: そういう風に各メーカーさんのバリエーションがあるというのはユーザーとしては嬉しいし、ありがたいですね。基本や王道があって変わり種もあるという方が面白い。Ultimate EarsやWestone、JH Audioがあって、日本でいえばFitEarがあって、そしてくみたてLab.みたいなある種の…

高橋: インディーズ感みたいな。

須山: それにくみたてLab.さんの「TRIO」は、サウンドシグネイチャーもしっかりありますよね。音を聴けば狙いがわかるという。

野村: くみたてLab.の方々は、大学の研究室でウェスタンエレクトリックやアルテックの大きなスピーカーをチェックに使ってたらしいんですよ。須山さんも松尾さんもそうだろうし、そういう経験値が出てるんだと思うんですよね。

高橋: サウンドシグネイチャーといえば、Just earの場合はブランドとしての色はちゃんとありつつ、でも音まで含めての「テーラーメイド」。一人一人のユーザーに合わせた音を実現することがブランドコンセプトですよね?

松尾: そうですね。

須山: 放送前にも少しお話をお聞きしたんですが、松尾さんとの楽しいトークセッション&コンサルティングを含めてJust earがお客様に提供しているソリューションというのは我々にはできないことで、その「ゴール」ってどこなのかな?と思ったんです。どこでどうやって「この音で完成」と決めるのか。松尾さんと膝を詰めて話すことがポイントなのかなと思うんですが、その辺はどうなんですか?

松尾: 最終的なゴールは、お客様と僕との間で「ここですよね」と落ち着く場所があるんですよ。私自身のこれまでのメーカー側としての経験から、「こういう音を聴くのであれば、こういう方向性を目指すのがいいのでは」と提示することもありますけど…

高橋: 松尾さんはソニーという大きなメーカーですごく多くの人に向けた製品を作っていました。その経験があった上で、一人のユーザーのパーソナルな理想の音と擦り合わせていると。

松尾: 「多くの機種を用意することで、お客様にもどれか1つは合いますよ」と対応するのがソニーのスタイルだと思うんですが、正直それだと音について攻めきれない部分があったんです。設計者として製品を追求していく中で、一人一人に合わせてイヤホンを作ればもっと攻めれるのになあ、というジレンマが生まれて。それに、同じデザインでも音のバリエーションが自在に変えられることはわかっているので、知り合いの人が使っている既存モデルにちょっと手を加えて、その人の好みに合わせることもできるわけです。でも、たまたま知り合いの人からだけ特別にそういうことを請け負うのも、違うよなと。

ならば、これだけヘッドホン/イヤホンの需要が高まっているし、それをビジネスにするのもありなんじゃないかと。そう思ったのがJust earを始めたきっかけで、テーラーメイドヘッドホンをやりたいと思ったいちばんのモチベーションなんです。始める前にはお客様がどういう要望を持っていらっしゃるかわからなかったし、ちゃんとゴールにたどり着けるかという不安もあったんですけど、実際にやり始めたら「お客様と同じ音を聴きながら、音を詰めていくこと」が、自分の中でとてもしっくりきているんです。

高橋: Just earでオーダーをするときには、松尾さんと対面の状態で、再生システムからの出力を分岐させて、同じ音源を同じ音量で聴きながら話し合っていくんですよね。お客様は試聴機と同じくユニバーサル化したJust ear、松尾さんはご自身用のJust earを使って。

こちらはあまり表に出ることはない松尾さんご自身用のJust ear MH1。試作段階で製作したものなので「製品版ほど綺麗ではありません」とのこと

チューニングに名前を付ける風習もまだなかったのでこの個体は逆に「名もなき試作機」という厨二度のさらに高い感じに…

松尾: 同じ音源を同じシステムで聴いていると、不思議と「こっちの方がいいですよね」ってところがお互いに一致していくんです。その人の好みに合わせるというよりは、その人が聴いている音楽に合わせて、それをよりよい状態で聴いていただくためにはどうすればよいかを一緒に考えている感じですね。そのときにエンジニアの見地からの提案はしていきますが、それを押し付けるわけではないという。

野村: 一般のオーディオ好き・音楽好きの方は、いわゆる“プロ”ではないので、音の好みが漠然としていることも多いですよね。すると、本当に自分好みのイヤホンには偶然に出会うしかない部分もあったんですよ。松尾さんのようなプロのサポートで、テーラーメイドできるというのは、好みのイヤホンに出会うためには手っ取り早くて確実とも言えますね。

高橋: 普通の人は「何kHzが足りない」なんて感じ方も伝え方もできないし、する必要なんてないですしね。Just earのテーラーメイドでは、その普通の人が感じたままの音を普通の言葉で伝えると、松尾さんがそれを「じゃあこういう音に変えてみましょうか。これならどうですか?」と、実際の音に変換して聴かせてくれるんです。その様子を見学させてもらっていると、お客様も松尾さんもすごく楽しそうなんですよね。

須山: ツイッターを拝見していても、自分の好みの音に近づいていく楽しさと同時に「一緒に理想の音を探していく楽しさ」もあるみたいで。あれは確かに魅力だなと思いますね。

松尾: 実は、私がいちばん楽しいんですよ。使っているプレーヤーや聴いている音楽というのは人それぞれなので、お客様から色々教えていただきながら、経験値を蓄えている感じはありますね。アニソンもお客様きっかけで興味を持ちましたし。あるお客様が、とある声優さん兼アーティスト方を挙げて「“その方”の声がいちばんいい音になるように」とリクエストがされたんですよ。そのとき私は“その方”を存じ上げなかったんですけど、製品づくりにあたって音楽を聴いていくうちに、今では“その方”の音楽だけでなく、ご出演しているアニメ作品にまで興味を持つようになってしまいました。

野村: …という話を聞いていたんで、“その方”がイヤホンを作る話ことになったときに、Just earをご紹介をさせていただいたんですよね。

松尾: ええ。“その方”ご本人に「Just earのお客様で、あなたの声に合わせたいという方が何名かいらしたんですよ」とお話をさせていただいたら、すごく驚いていらっしゃいました。

次ページテーラーメイドチューニングの秘密

前へ 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 次へ

この記事をシェアする

  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE