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<山本敦のAV進化論 第64回>

上陸間近「Netflix」ロングインタビュー。日本でも “巨人” になるための戦略とは?

2015/07/30 山本 敦
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「これらの作品は日本でも視聴可能になる予定です。Netflixのコンテンツはグローバル展開を基本にしていますので、世界中の人々が同じオリジナルコンテンツが見られるようになります」。


Netflixでは動画再生時の安定性を高めるために、ユーザーの視聴環境の回線速度状況を常にモニタリングしながら、最適なビットレートの映像を配信する技術を導入している。例えば高画質・大容量な4K映像のデータを配信する際には、配信ビットレートを可変させながらユーザーの視聴環境に届ける仕組みだ。

ネットワークのトラフィック状況が混雑してくる時間帯には画質を落として配信し、反対に空いている時間帯には高画質に見られる映像データをどんどん送り出す。とにかく「映像が落ちない」ことを最優先に位置づけながら、柔軟に配信コントロールができる技術を持っていることがNetflixの強みだ。

同社では4K/60pの配信コンテンツをより高画質に安定して視聴するためには約25Mbpsの回線速度を推奨している。NTT東西のフレッツ光サービスのように安定したクローズドネットワークが視聴条件としてより有利になるだろう。先にも提起したように、今後は光回線事業者とのパートナーシップを固めていくこともNetflixにとって重要な課題になるだろうと筆者はみている。

Netflixに対応するテレビでは、日本の主要メーカーであるパナソニック、ソニー、東芝、シャープが既に対応モデルを発表している。今後発売される多くの4K/2Kテレビにはインターネット接続とNetflix視聴機能が搭載されるはずだ。一方では、過去に発売されたNetflix非対応のテレビでも、Netflixのサービスが視聴できるようになる外付タイプのセットトップボックスやBDプレーヤーなど周辺機器も充実してくるだろう。

日本でもすでに対応テレビが各社から発売中。リモコンにはNetflix専用ボタンも用意されている(写真は東芝レグザJ10Xシリーズのもの)

HDR(High Dynamic Range)対応の映像コンテンツ配信については、大崎氏は「HDR、HFR(High Frame Rage)ともに注目しています。ハリウッドではそれぞれの撮影技術が急速に進化しているので、今後のトレンドになるとみています。Netflixとしてこれに対応できるよう、準備を整えていく考えです」コメント。

なお、インターネット経由でHDR/HFR対応のコンテンツがどんなフォーマットで配信されるかについては詳細がまだ明らかになっていないのが現状だ。そのため、既にHDMIによるHDRフォーマット入力への対応を発表しているメーカーのテレビでも、Netflixなどで配信されるHDR対応のコンテンツがそのまま見られるようになるとは限らないので注意したい。


■モバイルはアプリを提供。アメリカのサービスと同じことができるようになる

日本でのNetflixのユーザーは当初、アーリーアダプターの多い都市生活者から広がっていくはず。テレビよりもモバイル機器で、通勤・通学等の移動時間中に視聴するケースが多そうだ。Netflix日本版のモバイル向けサービスについても、いま開発を着々と進めている段階とのこと。基本的にはモバイルアプリをベースに、アメリカ版と同じ機能を用意するという。

動画ストリーミングをLTE/3Gネットワークで視聴すると、パケットの通信容量をどの程度圧迫するかも気になるところ。配信ビットレート設定や、通信容量を低く抑えながら、映像を高画質に楽しめるようになる技術が今後は必要になるはずだ。

動画を何らかの手段で端末にキャッシュして再生できる機能があれば良いが、キャッシュ機能がサービスインの時点から設けられることは無さそうだ。それならば、例えばぷららモバイルLTEなどMVNOが展開している“LTE使い放題”のプランがNetflixのサービスとの相性が良い。もしパートナーシップが組めれば、日本人のライフスタイルにフィットするモバイル対応の動画配信サービスが提供できるようになるはずだ。

通信データ容量の問題も然り。おそらくNetflixのサービスがローンチしてから、テレビとモバイルの両方で日本特有の課題が次々に出てくるはずだ。それらの課題に対して、Netflixがメーカーや通信事業者などパートナーも巻き込みながら、どれだけ素速く的確な対策を打ち出せるかが、Netflixが本格普及的に普及するかどうかを決めるポイントになるだろう。

コンテンツ製作ではフジテレビとの協業が発表されたが、Netflixと日本のテレビ放送事業者はライバル同士と位置づけられることも多い。インタビューの最後に、Netflixとして互いの関係性をどのように捉えているのか、大崎氏に訊ねてみた。

「互いに共存していけると考えています。どちらかが無くなるということは絶対にありません。テレビには報道番組やバラエティ、スポーツやドラマなどテレビならではの強みがあります。Netflixはテレビができないところを開拓しながら、今までにない新しい映像文化をつくっていきたいと考えています」。

Netflixは、日本の映像文化を次の進化へと導く牽引車になれるだろうか。秋のサービスインまでに明らかになってくる情報を、引き続き注視したい。

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