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オーディオ銘機賞2012『銀賞』受賞

「10年越しの夢がついに実現」− トライオード山崎氏に聞く「TRX-M845」開発秘話

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オーディオアクセサリー編集部
2011年11月28日
あくなきチャレンジ精神がここに結実
TRX-M845がオーディオ銘機賞2012『銀賞』受賞


日本のブランドとして真空管アンプを中心に、こだわりのオーディオ製品を開発し続け、多くのファンから支持をされている「トライオード」。

その製品群は海外でも広く知られており、国内ばかりではなく、世界中に多くのファンを持っている。その確固たるサウンドデザインは代表の山崎順一氏によって作られた。音作りに関するフィロソフィーは明確だ。

そして、ここに「トライオード」ブランド待望のフラッグシップモデル「TRX-M845」が登場し、大きな話題となっている。すでに多くの評論家や販売店からそのクオリティが認められ、先般開催されたオーディオ銘機賞2012の「銀賞」を受賞した。山崎氏に本機開発への想いと、ものづくりの思想を熱く語っていただいた。

管球式モノラルパワーアンプ TRIODE「TRX-M845」¥787,500(1台)

ーー初のフラッグシップモデル「TRX-M845」がオーディオ銘機賞「銀賞」を受賞しました。本機を開発しようとしたきっかけを教えてください。

山崎 三極管っていう意味の「トライオード」というブランドは、僕が好きでつけたもので、実はこのモデルはかねてからやりたかった製品だったんです。でも、なかなか出来なくって…。

物量はもちろんありますけど、回路構成っていう点で、845ドライブの845パラシングルというモデルが、世界にも例がない。シングルタイプも、もちろん好きなんですけど、やっぱり現在のスピーカーと組んだ時に不満が出るんですよね。やっぱりパワーを稼がないといけない、ということで、今回のモデルを開発しました。本当は4パラくらいにしたかったんですよ(笑)。

強い想いにより完成させたリファレンスモデル
スピーカーを選ばす駆動できる力感を獲得


ーーいつかはつくってみたかったモデルだったんですね。

山崎 そうです。まさに長年かけてチャレンジして、そして夢が実現した。だからリファレンスというシリーズ名をつけました。実際、発案は昔からあったんですよ。でも、どうしても筐体が大きくなってしまうし、重くなるじゃないですか。トランスのコアサイズも当然大きくなる。だから、そう簡単には実現できなかった。10年以上もかかってしまいました。

ーー本機を完成するまでに苦労した点は。


オーディオ銘機賞2012で銀賞を受賞した
山崎 やっぱり、熱じゃないですか。イベントでも一番前の人は顔を赤くしているくらいだから。実際、管のガラスの表面の温度は240度なんですよ。その温度管理が一番大変でした。

それと、845を使ったモデルは4機種目ですけど、やっぱり音が濃厚なんですよね。そして、ジェントルで、ちょっとゴージャスな感じがある。ただ広帯域ってわけにはなかなかいかないんで、今回はなるべく帯域を聴感上でも広く取りたいと考えました。そこでドライバー・トランスは昇圧比を逆に落として設計をしたんです。

ーーかなり大規模なアンプになりましたけど、大きな特徴は?

山崎 やっぱりシングルアンプで駆動するのは、昔のスピーカーの能率の高いタイプが定番じゃないですか。でも、現代のスピーカーは、箱が鳴らないかっちりしたタイプが多い。それを十分鳴らせるパフォーマンスを持ち合わせていると思います。

だから秋のイベントなんかでも、いろんなスピーカーがありましたけど、どれも気持ちよく鳴りましたね。作った側としては、本当に嬉しいですよ。やはり力感と押し出し感が、一番の特徴でしょうね。とにかく、このモデルは、いままでのチャレンジの総決算です。

ーーなるほど。ところで今回はトランスの上に山崎さんのシグネチャー(サイン)が入っていますが…。

山崎 ひとまず総決算ができたということで入れました。もっとやりたいことはありますけど、まだまだそれは今後にとっといて(笑)。

ーートライオード、いわゆる山崎さんのものづくりのポリシーをお訪ねしたいのですが。

山崎 できれば、あまり高価なものにしたくない、と常に考えています。

確かにオーディオって言うのは、いいものを使っていけば当然コストは上がります。でも、それがポピュラーかというと、違うと思うんですよ。購入される方が一番ですからね。だから、僕自身が買える限度を意識しながら、いつも開発をしています。皆さんが楽しめる価格帯の製品を提供することがポリシーです。

ただし、今回のモデルは特別ですね(笑)。でもコストパフォーマンスは高いと思っています。

ーー今は海外ブランドも相当入ってきています。今後日本ブランドが果すべき役割は?


(株)トライオード 代表取締役 山崎順一氏
山崎 日本のメーカーって、とにかく真面目じゃないですか。だからね、もっと設計する人はオリジナリティーがあっていいと思うんですよね。海外のブランドっていうのは特徴が相当ある。音質やデザインもね。もっと冒険して欲しいな、と思っています。

買って頂く方は、まずは見た目のデザインから入ると思うんですよ。もちろん音はあるけれども、そこも大切なポイント。TRXシリーズはダークチェリーでの展開ですが、これは高級感を意識したものです。ダークな赤で日本の家屋の中で、上手くマッチして欲しかったんですよ。それが日本だけじゃなくて海外でも凄く人気が出た。デザイン、特に色はとても大事だなと思いましたね。

ーーTRX-M845の生産は順調ですか?

山崎 大丈夫です。いまは一応在庫も持っています。ただ、この製品だけは、購入していただいた場合には納品に直接伺って、最終セッティングまでを行うことにしています。サインを入れるくらいの想いがこもった製品ですから、僕としては大事にしていきたいですね。

ーー今後の展開をお聞かせください。

山崎 来春のハイエンドショウまでには、生産をスタートさせている300Bを使ったシングルタイプのモノラルアンプを開発しようと進めています。今回のリファレンスシリーズのプリアンプも来年を予定しています。今年まだ出る製品も実は3機種くらいあるので、とにかく忙しいですね。でも好きでやっているので、楽しいです(笑)。

ーー最後に本誌読者に向けてのメッセージを頂ければと思います。

山崎 このTRX-M845だけは、ドライブするスピーカーをほとんど選ばないと思っています。だから購入した方は心置きなくスピーカーを鳴らして欲しい。それだけ僕の想いが込めてあるんです。これからもよい製品を開発し提供することで、さらにオーディオファン、音楽ファンを増やしていきたいと思っていますので、今後もよろしくお願いいたします。



確固たるポリシーと夢をもった山崎氏が、ようたくたどり着いた現代の銘機TRX-M845。音質的にもデザイン的にも、ファンを魅了する仕上がりとなっていることは間違いない。

しかもコストパフォーマンスが高く、頑張れば手が届く価格帯に設定されていることも山崎氏らしい配慮である。一度店頭で、見て聴いて体験してほしい。試聴することで、言葉では語りつくせない価値を分かっていただけることだろう。

今年スタートさせた修理サービス「タレス」も好評を得ている中、また次への夢に突き進む山崎氏の、今後のものづくりに期待したい。

TRIODE「TRX-M845」
【SPEC】●使用真空管:845×3、6SN7×1、12AU7×1●回路形式:A級845ドライブ845パラシングル●バイアス方式:自己バイアス●定格出力:845/50W、211/40W●周波数特性:10Hz〜50kHz(-2dB)●SN比:90dB●入力感度:900mV●入力インピーダンス:100kΩ●NFB切替え:0.1.3dB●入力端子:RCA×1、XLR×1●スピーカー出力:4Ω、6Ω、8Ω、16Ω●消費電力:280W●外形寸法:580W×300H×440Dmm●重量:55kg

【トライオードの製品の取り扱い】
(株)トライオード
TEL:048-940-3852

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