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制作者が考える2Dと3Dの映像表現の違い

神山健治監督が語る「攻殻機動隊S.A.C. SSS 3D」− 3D立体視アニメの表現の可能性とは

鈴木桂水

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2011年04月07日


神山氏:一番ハッキリ手応えを感じたのは、電脳化した人が見ている主観映像です。あれは押井監督の「イノセンス」などにはない表現で、僕が制作当初からこだわっていた部分でもあるんです。電脳空間(※)とつながっているカメラがあれば会話している人の間にインターフェースが浮かんでいるのが見えますけど、そうではない人には何も見えないわけじゃないですか。だからそれを敢えて主観映像のときだけ見えるようにしようという演出をしていた部分に関しては、おそらく上手くいくだろうと思っていたんです。

電脳インターフェース。これが、あたかも自分が電脳化したかのように飛び出てくる

※「攻殻機動隊 S.A.C.」に登場する主な登場人物は、脳にマイクロマシンを埋め込みデータや思考をやりとりする「電脳化」を行っており、その視覚内には、画像や通信データなどが表示されるようになっている。SSSでは電脳化した登場人物の主観映像を3D化することで、作品の世界観をリアルに感じさせることに成功している。

神山氏:人間の目は単純に画角だけで言えば相当広角レンズなんですが、意識的にかなり焦点を絞っているので、見ている部分はどちらかというと望遠に近い画なんですね。なのでフレームで区切られた分くらいしか捉えられないわけです。そうすると、電脳化された視覚内に表示されるインターフェースは見切れてしまう(はみ出してしまう)わけですよね。だから2Dで作っていたときには、インターフェースも画面から見切れるように作っていたんです。


でも3Dで作ったときは、それを見切れないで飛び出させました。これによって、本当に電脳化している人にはこういう風に見えるだろうというものに限りなく近い、体験的な画にできたなと思います。想像以上に上手くいきましたね。電脳化している人たちは実は自分の視界の邪魔にならないところにインターフェースを配置してるんだな、とか、厳密には違うんだけど、見る位置を変えると少し視差がついて手前と奥にズレが生じて、隠れている部分も見えてくるんだな、とかが分かると思います。

━━監督がおっしゃっているシーンの映像を実際に3Dで見ていると感覚的にすごく気持ちいいですよね。電脳化した人の目線とはこうなんだ、という感覚を味わえますね。

神山氏:「攻殻機動隊 S.A.C.」シリーズを最初に作っていた時、主観映像だけにそういう仕掛けをするのは意味がないだろうとかも言われていたんですよ。でも、一般的な視界と電脳化された視界を区別つけないと、電脳化することでどういうことがハイテクになっているのかが分からないだろうなと考えたんです。「リアル空間にいるときと電脳空間にいるときの差異を表現する」ということにとてもこだわっていたので、3Dにすることで演出意図がより伝えられるようになったのは有り難かったですね。3Dが寄与してくれた最大のポイントだと感じます。

━━本編内で、電脳空間以外での3D感は控えめにされていますよね。

神山氏:そうですね、奥行きの視差を多少付けているぐらいです。最初にも言いましたが、もともと2Dのなかでいかに奥行きを表現できるかという考えで制作していたものですから。

━━アニメと実写では、3D映像の表現にどのような違いがあるのでしょうか。

「僕は実写よりもアニメの方が3Dに向いているなと思った」

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