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制作者が考える2Dと3Dの映像表現の違い

神山健治監督が語る「攻殻機動隊S.A.C. SSS 3D」− 3D立体視アニメの表現の可能性とは

鈴木桂水

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2011年04月07日
2010年に3D映画「アバター」が大ヒットを記録して以来、映画やホームシアターの世界に「3D」の潮流が生まれている。しかし、その頂点を「アバター」とするなら、その他の作品はまだまだ玉石混淆であり、“そそる”作品に出会うのはなかなか難しいのが現実ではないだろうか。

そんななか、プロダクション I.Gの「攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX Solid State Society」が3D立体視化し、2011年3月26日から劇場公開されている。本作は2006年にスカパー!のペイチャンネルで公開されたのが初出。もともと2Dで作られたものだが、「観る人を電脳化する」をテーマに、これまで誰も観たことがないような3D表現にチャレンジしているのが大きなみどころになっている。筆者は一足早く試写に参加したのだが、なるほどと膝を打つ3D作品に仕上がっており感銘を受けた。今回、神山健治監督に、制作者として感じた3D立体視の可能性、そして作品の内容についてお話をうかがった。

神山健治監督(左)と鈴木桂水氏(右)

  ◇ ◇ ◇  


━━SSSの初出は2006年のスカパー!でした。今回SSSを3D化しようということになった経緯はどんなものだったのでしょうか。

神山氏:2010年の始めに「『攻殻機動隊 S.A.C.』の新作を3Dでできないか」という話をいただきました。ただ「攻殻機動隊 S.A.C.」シリーズは多くの人が関わっており、ファンも多い作品ですから、すぐに新作を作るのは難しい。それに僕としてもまだ3D作品に対してあまり積極的ではなかったので、最初は難しいと思いました。


神山健治監督
しかし「アバター」の成功以降、実写だけでなくアニメにも3D作品が増えつつありましたし、善し悪しを判断するためにも、3D作品に挑戦してみようという気持ちになりました。それだけでなく、プロダクション I.Gの今後という視点から、スタッフに3D制作スキルを身につけてもらいたいなとも考えました。そこで、いきなり新作ではなく、今まであった旧シリーズのどれかを3Dにしてみるのはどうか?と、いう話になったんです。

━━それは作品選びに悩みますね。

神山氏:テレビシリーズのなかから1,2話3D化するという案もありましたが、連続ドラマの1パートだけを抜き取っても観客はピンと来ない。それに、家庭用の3D対応AV機器の普及はまだまだこれからですから、劇場で上映できる作品の方がいいだろうと。そこで、もともと劇場上映を想定して制作していたSSSが候補に挙がったのです。

━━最初は3Dに対して積極的ではなかったとのことですが、理由は何だったのでしょうか?


神山氏:そもそもアニメの面白さというのは「平面に絵を描いてそれを動かすこと」だと思うんです。ですから2D作品を擬似的に3Dにしても、レイヤーに視差がついているだけ − 切り絵を重ねて配置したような、不自然な立体感の映像になってしまうんじゃないだろうか、それだったら積極的に2Dアニメを3Dにしてもあまり意味がないのではないか、と考えたのが最初の正直な理由です。

他にも理由はありました。2Dと3Dでは構図のとり方に違いが出ます。そもそも3Dで視差が気持ちよく付く構図と、我々が普段演出している2Dの構図 − もともと2Dであるスクリーン面の中でどう奥行きや空間を見せていくかという画づくりは違うんです。これは「アバター」が公開された直後にもよく言われていたと思うのですけど、3Dで効果的な構図は、2Dにした場合は凡庸なレイアウトだったりするんですよ。

━━たしかに、全ての作品が3Dに向いているわけではありませんね。

神山氏:なので現場にいる演出という立場からすると、3D技術自体は我々が培ってきた「こういうものを表現したい・伝えたい」という思いを技術的にバックアップしてくれるものではないのではという認識でした。ただ、「攻殻機動隊」という題材であれば、これまで上映された3D作品にはない良さも多分作れるだろうな、という予感みたいなものはあったんです。そういうものもあって、引き受けさせていただきました。

━━実際作品ができあがって、ご感想はいかがでしたか?

神山氏:いくつかの点に関して、狙った以上の効果を得ることができたと思いました。

神山監督が3D立体視化で狙った効果とは

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