巻頭言

若い新入社員に教えたこと

和田光征
WADA KOHSEI

私が今実感していることは、世の中の経営環境はこうまで変わるのか、ということである。そして採用状況の厳しい中、当社には数名だが優秀な20歳代前半の人材を迎えることができた。

彼らが入社してまず驚いたのは、当社の社風。社長に対しては社長と呼ぶが、その他の社員は役職でなく「さん」づけで呼ぶ。昇進、昇給、賞与の評価も全て平等で男女の区別もない。それを当たり前として、皆が自然に振る舞っていることに驚いたそうだ。

彼らは志望の際に「ファイルウェブ」を見て、その充実ぶりに驚嘆し、当社にぜひ入社したいと思ったという。その思いが叶ったのである。ファイルウェブのスタートは1999年で今から18年前のこと。今ではユニークユーザー150万人、月間ページビュー2500万に至るまで成長した。ここに彼らは「なぜ、どうして」と問い、その成功の秘話を知りたがる。

それに対して私は、当社の社是「業界の建設的発展に寄与する」が我々の最も重視すべきことであり、それをどんな環境にあっても厳守するのだ、と説明した。しかし彼らは、「理解できるが理解できない」世界へ迷い込むわけである。

私は信念として「業界の建設的発展に寄与する」の社是を正しいものと認識し、今日まで不変の精神で実践してきた。それは、松下幸之助翁の「異業種から羨望される業界でなくてはならない」の言葉とともに不変のものとして、私自身のベースとなっている。

業界の発展に寄与するということは、自分だけが良ければいいといった考え方が最もマイナスで、業界発展を目的とした行動だけが求められる。ファイルウェブのコンテンツもそれをベースとし、今日まで変わらない。だからこそ発展してきたのである。

新入社員らの瞳が輝き、先輩諸君の瞳と同調し始めてきた。彼らはファイルウェブだけでなく、フリーマガジンビジネスにも驚きを見せる。2007年、リーマンショックでの世界的な経済不況時、私は「いつもお客様のそばに」を理念とし、ハイレベルな誌面づくりでの店頭フリーマガジンを提案した。それも10年の時間を経て当社の経営の大きな柱となっており、担ってきたSPディビジョンは大きく成長している。

完全なる出版不況になれば、出版社は坂を転がり落ちる速さで経営不振となり、成立しなくなると私は思っていた。その傾向は2010年頃から顕著になっている。当社が2007年に仕掛けた「いつもお客様のそばに」のビジネスはファイルウェブとともに当社の売上げの45%を超えるまでになり、それを支えに書店向け雑誌を強くすることができた。

新入社員らに、「先手先手で時代を読み、確実に成功させることが重要である。当社はそれを確実に実践しているし、そうして5年先、10年先も創造していくのだ」と強調する。ここまでのことは、偶然に起こったのではない。彼らも力強い手応えを感じとり、瞳をますます輝かせた。

先見性をもち、それを達成する力が経営そのものに安定と余裕をもたらす。これを実感するのである。