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シアター&インストール視点で見るInterBEE・ベステックオーディオ/ビーテック編
メディア&エンターテインメントの展示会「Inter BEE」で展示される機器は、主に放送やスタジオ、コンサートなどの設備向け。もっとも、家庭用にもそのまま応用でき、すでにカスタムインストールの最先端では広まり始めているものもある。そのひとつこそAV over IP(以下、AVoIP)だ。
AVoIPとは、Audiovisual over Internet Protocolのこと。つまりIPネットワークを通じて音声と映像を送信するシステム。最初に注目したブースは、世界各地で広がるAVoIPの潮流を示すべく、関連ブランドが一堂に集まる「AVoIP Leaders powered by NETGEAR」(以下、AVoIP Leaders)だ。
AVoIP Leadersブースでは、NETGEAR(ネットギア)を筆頭に、CRESTRON(クレストロン)、ViewSonic(ビューソニック)、ITOKI(イトーキ)など耳馴染みのあるブランド12社が結集し、ブランドを越えて同一ネットワーク上で連携することでどんなことが実現できるかを示した。
このAVoIP Leadersブースでは、システムを統合する司令塔として、ホームシアターユーザーにおなじみのクレストロンが使われていた。クレストロンは、家庭内LANが一般的に普及する以前からホームシアターの領域で、宅内のオーディオビジュアル機器と、照明などを連動するホームオートメーションの核として使われてきた。昨今ではカーテンやシャッター、エアコン、給湯、セキュリティなど家一棟の弱電系をまるごと制御するために住宅で用いられている。
AVoIP Leadersブースでは、ブランドの垣根を越えて、様々な製品がネットワークを通じて連動することで、産業分野や病院でのコラボレーションや省力化、教育機関での体験性を高めることが示されていた。
ところでホームシアターというと、いい音と大画面をひとつの部屋で共有するエンターテインメントである。そんな離れた部屋同士をネットワークで繋ぐことで、場所を越えたリアルなコミュニケーションが可能になる。
コロナ禍以降一般化したライブ配信やリモート会議の仕組みを、臨場感溢れるサウンドと等身大に近い大画面でこなすことになれば、それは、単なる情報の共有を超えて感情の共有となり、双方向コミュニケーションによるリアルタイムエンターテインメントに昇華する。双方が等身大でコミュニケーションするという点において、一箇所の発信元を多数が覗き見るVRゴーグルなどとは一線を画する。
こうしたAVoIPが高音質イマーシブサウンド&高画質大画面のホームシアターと結びついたとき、圧倒的な臨場感のコミュニケーションツールとなるわけだ。
クレストロンは、カメラとビデオ機能、スピーカー、ビームフォーミングマイク、Android OSを搭載した「Videobar 70」を展示。ディスプレイ下への壁掛けを想定しており、デスクを囲むメンバーたちの顔をカメラで捉える。広い会議室での使用時には、数台連結可能なマイクスピーカー(写真右下の平べったい丸いもの)を追加もできる。
イトーキは2025年から契約したフロリダの統合型ワークプレイスプラットフォーム「APPSPACE(アップスペース)」をプレゼンテーション。社内コミュニケーションや受付管理、デジタルサイネージなどを一括して行える。クラウドで動作するため、PCやセットトップボックスなしに、Androidなどの一般的なOSで運用可能。
こうしたAVoIPを高品質に行うことで、新たなコミュニケーションの方向性を端的にプレゼンテーションしていたのがエミライブース。製品はAIビデオサウンドバー「Insta360 Connect」という、アクションカメラや全天球VRカメラで知られるInsta360のリリースする会議システムだ。
クレストロンのVideobar 70と同様、ディスプレイ下にサウンドバーのように設置して、中心に配置されたカメラが参加者全体を捉えつつ、発言者があればその人に自動的にカメラが寄ったり(Speaker Tracking mode)、連携するマイクで発言者の声を拾ったりする。
広角カメラと望遠ジンバルカメラはいずれも4K解像度で、2倍ズームに加え4倍デジタルズームも備え、ジンバルカメラは発話者の口の動きを感知してトラッキングする。マイクは14ビームフォーミングアレイで、最大10メートル先の音が拾える。
ちょっと感動したのは「ホワイトボードモード」で、卓上のホワイトボードを自動認識して台形補正したうえで全画面表示できるほか、その前を人が遮ってもまるで透明人間であるかのように透けて、ホワイトボードの記述が常に読める機能だ。
InterBEEの会場ブースはオープンスペースで騒がしく人通りも多いため、デモンストレーションの環境としては厳しかったはずだが、それでも高画質/高音質コミュニケーションの魅力は十分に伝わった。すでにこうしたインフラや製品は整っているのだ。
これからのホームシアターは、誰かが作ったコンテンツを多数が受領する一方向の配信から、こうした双方向コミュニケーションのハイクオリティ化──すなわち、イマーシブサウンドと150型クラスの等身大画面化──それ自体がホームエンターテインメントの中核となるに違いないと実感した展示だった。