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公開日 2025/09/23 07:00
すっきりと澄んだトゥイーター専用ユニット

完全ワイヤレスの音質を進化させる新しいMEMSユニット。低消費電力で駆動する“Lassen”先行試聴!

佐々木喜洋

MEMSドライバーの活用には専用の昇圧アンプが必要


MEMSドライバーが広く普及するためには、いくつかの課題が残されている。その一つは昇圧アンプの必要性だ。静電型に専用アンプが不可欠なことが普及の障害になっているように、MEMSドライバーもまたこうした課題を抱えたままだ。


MEMSスピーカーはチップの一部を震わせる一種のピエゾ型のドライバーだが、その動作のためには10V以上と言われる高い電圧をかけておく(バイアスする)必要がある。このために専用の昇圧回路が必要となる。


筆者が初めてMEMSスピーカーのデモ機を試聴した時にはボックスに内蔵された昇圧回路を用いていたが、製品化にあたりxMEMS社ではIC化した「Aptos」と言う昇圧アンプを用意した。


しかし従来にないパーツが追加されることは新規参入のメーカーを戸惑わせることにもなり、一部のメーカーでは音質への影響を懸念し、独自に昇圧回路を組み込んでいる。このように昇圧回路はメーカーの負担となっていた。


普及の課題を超えるトゥイーター専用ユニットLassen


その課題に対する回答としてxMEMS社から今年の1月に発表されたのが「Lassen」という新しいMEMSスピーカーだ。Lassenはトゥイーター向けのMEMSスピーカーで、3.2× 5×1.15mmとMEMSらしく豆粒のような小型のユニットである。



トゥイーター用の新MEMSドライバー「Lassen」が登場


Lassenでは必要なバイアス電圧が従来より大幅に低い3V程度に抑えられている。つまり10Vを超えるような高電圧を作る昇圧回路は不要になったが、それでも3Vのバイアス電圧はまだ必要である。


Lassenでユニークなのはその電圧の取り出し方だ。この3Vのバイアス電圧は、完全ワイヤレスイヤホンのように内蔵バッテリーを持つ機器ならばその電圧を使用することで賄えるのだ。


そのためLassenは、完全ワイヤレスイヤホンなどバッテリー駆動製品で使うことを前提としたMEMSスピーカーと言える。


残念ながら有線イヤホンでは外部から電源を取れないので使用できない。もちろん電圧を何処かから取り出せば使用できるので、ドングルDACではUSBから取れるかもしれない。 


これによりいくつかのメリットが生まれる。まず、消費電力を大幅に削減できる。従来のツイーター「Muir」(Cowellの後継機)と昇圧アンプ「Aptos 2」の組み合わせに比べ、Lassenは消費電力を8割も低減できるという。


また、通常の「Aptos 2」との組み合わせでは14個の追加部品が必要だったが、これが3個に減らせる。これにより価格も低減できる。


またバッテリーからの電圧をバイアスに使用するために回路設計がシンプルになる。これらはTWSにとってかなりのメリットとなるだろう。


以下に示す参考回路は、後述するデモ機に実際に使われている構成である(回路中のDDはダイナミックドライバー)。トゥーイーターなのでクロスオーバーは必要となるが、Lassenではクロスオーバーのカットオフ周波数は5kHz程度とこれまでよりも低く設定されている。



Lassenの内部回路。3Vの電圧を加えることで活用できる


解像度が高く、艶めかしい女性ヴォーカルも特徴


次に実際にxMEMSによって製作されたLassenを搭載したデモ機の音を聴くことができた。デモ機はLassenとダイナミックドライバーを組み合わせた2ウェイ構成である。写真中の白いボックスにイコライザーとDACが内蔵されている。これらは製品ではTWSに内蔵できるはずだ。



Lassenのデモ機。白い箱にイコライザーとDACが内蔵されており、実際の製品ではこれがTWS本体などに内蔵される




Macbook AirのUSBに接続して、Apple Musicで試聴した。能率に関しては十分に高く、ダイナミックレンジを確保するために低レベル録音されている古楽の楽曲でも騒々しいほどの音量がとれる。


ロックやポップスで音量に困ることはないだろう。ボリューム位置は普通のイヤホンと同じくらいであり、使い勝手はほとんど変わらない。



Macbook AirのUSB端子に接続して試聴


MEMSスピーカー搭載機らしく解像度が高い音で、ウッドベースの弦が生々しく響く。また女性ヴォーカルの声に艶があってなまめかしい音が再現できるのもMEMSらしい。


中高域は落ち着いていて、高域の刺激成分が少ないため聴きやすい。それでいて高い音は伸びやかに上に伸びていき、ベルの音は端正で歪み感がないのはMEMSスピーカーらしい美点だ。


特にアコースティック楽器の音が端正で歪み感が少ない。端的に言ってかなりの高音質だ。


クロスオーバーが5kHzということはまだ多くの基音はダイナミックから出ているが、ダイナミック型ドライバーとは少し異なった音ですっきりと澄んでいる。高域のMEMSの効果は出ていると思う。


Lassenは1月に量産開始を発表し、夏から量産予定のため、近日中の製品化が期待される。MEMSスピーカーはまだ発展途上の技術ではあるが、少しずつ課題はクリアされていく。LassenもTWSの音質をまた一段と高めてくれるだろう。

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