綾野剛演じるヤバすぎる警察官の実話!日本警察史上最大の不祥事を描く驚愕の娯楽作
ミヤザキタケルサブスクで映画を観ることが当たり前となりつつある昨今、その豊富な作品数故に、一体何を観たら良いのか分からない。そんな風に感じたことが、あなたにもありませんか。本コラムでは、映画アドバイザーとして活躍するミヤザキタケルが水先案内人となり、選りすぐりの一本をあなたにお届け。今回は2016年公開の『日本で一番悪い奴ら』をご紹介します!
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『日本で一番悪い奴ら』(2016年・日本)
(配信:Prime Video Netflix U-NEXT hulu)
北海道警察で実際に起きた不祥事「稲葉事件」を、『凶悪』『孤狼の血』『十一人の賊軍』などで知られる鬼才・白石和彌監督のメガホンで映画化。1977年、柔道の腕前を買われ警察官になった諸星要一(綾野剛)であったが、その実力を発揮できずうだつの上がらない日々を過ごしていた。そんなある日、北海道警察きっての敏腕刑事・村井(ピエール瀧)に「刑事は点数。点数稼ぐには裏社会に飛び込み、S(スパイ)をつくれ」と指南される。手段を選ばずがむしゃらに突き進む諸星は、次々と成果を上げ「道警のエース」と呼ばれるようになるのだが……。
点数稼ぎのため、ヤクザと協力関係を築き、拳銃や覚醒剤の密売にも手を染め、ありとあらゆる違法捜査を繰り返していく主人公・諸星。映画的脚色が大なり小なり付け加えられているとはいえ、かつてこんな警察官が実際に存在していたというのだから驚きだ。時代故のことなのか、組織の腐敗故のことなのか、当事者の人格故のことなのか。その真意を探りたい方には、原作であり諸星のモチーフとなった稲葉圭昭の著書「恥さらし ―北海道警 悪徳刑事の告白―」を手に取っていただきたいのだが、本作で描かれているのは事件の経緯だけではない。そう、誰もが陥りかねない普遍的な人間模様が映し出されているのである。
目の前の目的を叶えるため、地道な努力を重ねるのがスタンダードな道筋だと思うが、即座にその目標を達成できる道筋が示されたのなら、歩みたくなってしまわないだろうか。大した苦労もせず成果を出せるのであれば、手を出してしまわないだろうか。無論、それでそのまま上手くいく人もいるだろう。しかし、どこかで必ずツケを払う時がやってくる。そのツケを先延ばしにすればするほどに、引き返せなくなってしまう。映し出されていくのは、そういった道を歩んだ男の姿、その成れの果てなのである。驚きの実話であり、誰もが直面し得る人生の選択やその顛末を見届けることになる本作を通して、あなたの心は何を思うでしょう。
(C) 2016「日本で一番悪い奴ら」製作委員会
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| ミヤザキタケル 1986年生まれ、長野県出身。2015年より「映画アドバイザー」として活動を始める。 宝島社sweetでの連載をはじめ、WEB、雑誌、ラジオなどで、心から推すことのできる映画を紹介。そのほか、イベント登壇、MC、映画祭審査員、BRUTUS「30 人のシネマコンシェルジュ」など、幅広く活動中。 |
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