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公開日 2025/12/24 06:30
オーディオ銘機賞2026金賞/特別大賞受賞モデル

100年の歩み、ここにあり。ラックスマン「L-100 CENTENNIAL」「D-100 CENTENNIAL」の音質と技術を徹底レビュー

大橋伸太郎

今年創業100年を迎えた、世界有数の老舗ブランドであるラックスマン。 SACD/CDプレーヤー「D-100 CENTENNIAL」とプリメインアンプ「L-100 CENTENNIAL」は100周年記念モデルであり、ラックスマンの技術とノウハウを最大限に盛り込んだ、現在の集大成となる新製品である。


徹底して高音質を追求した両機の完成度を称え、オーディオ銘機賞2026でL-100 CENTENNIALが “金賞”、D-100 CENTENNIALが “特別大賞” を獲得した。



LUXMAN プリメインアンプ「L-100 CENTENNIAL」(858,000円/税込)



LUXMAN CD/SACDプレーヤー「D-100 CENTENNIAL」(1,650,000円/税込)


オーディオファンとともに歩んだ100年


今年はラックスマンが錦水堂ラジオ部として始まって100年目の節目にあたる。内外を問わず、オーディオメーカーは第二次世界大戦終結後の創業が多く、100年というのは世界的にも稀有である。


しかもその間、ラックスマンはオーディオ以外の分野あるいはゼネラル、ガジェットオーディオに進出しなかった。管球式/トランジスターのアンプ、アナログ/デジタルのディスクプレーヤー、チューナーを専らにした。ベテランのファンならラックスキットに取り組んだ思い出もあるだろう。アマチュアに寄り添い地道に歩んだ100年であった。


これを記念して同社では “CENTENNIALシリーズ” の発売を順次進行中だ。先行してヘッドホンアンプ「P-100 CENTENNIAL」を発売したが、同社の本領はアンプとソース機器である。


この純A級プリメインアンプ「L-100 CENTENNIAL」、SACD/CDプレーヤー「D-100 CENTENNIAL」で100周年も佳境に入った。どちらも販売期間と台数を限定した記念碑的大作ではなく、従来の最上位機種のまっとうな進化形であり、同社の新しい顔となってこれからラインナップを牽引していく存在である。


価格も長年のファンの手の届く常識の範囲内にふみとどまっている。このファンと共に歩む実直さに100年継続の秘密をみる。


先に開催されたオーディオ銘機賞2026でD-100 CENTENNIALは特別大賞、L-100 CENTENNIALは金賞を受賞した。


 


SACDプレーヤーの新技術 - 「LIFES」の最新バージョンを投入


それでは2機種の詳細をみていこう。D-100 CENTENNIALは、「D-08」(2008年)、「D-08u」(2014年)から「D-10X」(2020年)へ引き継がれた “Dシリーズ” の新しい最上位である。


D-08で初めて採用されたのが「LxDTM(Luxman original Disc Transport Mechanism)」。制振性と遮音性を目的に、厚い鋼板とアルミ板で構成したアウターシャーシでメカを囲ってしまう考え方だが、D-10Xの「LxDTM-i」を経て今回の第三世代は、下方も囲い完全なボックス構造となり堅牢性を増した。



D-100 CENTENNIALの背面パネル。アナログ出力端子はRCAとXLRを装備。デジタル出力端子はRCA同軸と光トス、デジタル入力端子はRCA同軸、光トス×2、USB Type-Bを搭載する


D-10XでDACにローム製デバイスを世界初搭載(BD34301EKV)したが、今回BD34302という新しいフラグシップを採用した。スペック上はSN比130dB歪み率-115dBで本来向上の余地がないが、アルゴリズムを2タイプ内蔵し、34301に採用されていたタイプに比べ、今回新しく採用されたタイプは歪み率がさらに2dBよくなる。


後述するが音質上の傾向の違いもあり、デジタルフィルターに連動するユーザーの選択制になった。


DAC後段はオペアンプを使わないアナログのフルディスクリートだが、ここに同社の看板技術「LIFES」の最新バージョン1.1を投入した。前身の「ODNF-u」に比べ専有面積が約3分の2に減り余裕が生まれ、デジタル信号処理とDACのICを近づけて配置することにより、DSDの波形を乱さずにDACに送ることができる。さらにDACが近接したLIFESへ出力を送り込む。信号経路を短縮化でき、ノイズ量をさらに下げることができた。



増幅帰還エンジン「LIFES」は、最新のバージョン1.1が搭載されている


電源部も強化されている。D-10Xでは、ブロックコンデンサーが3,300μF×4本だったのが、今回10,000μF×4本になり、容量的には3倍強。なおかつパラレルからLR独立に変わり10,000μFがLch2本、Rch2本になった。


設計者の談によると、今回LIFES投入で最大8本まで乗せられるスペースが生まれたが、8本にすると音が被って滲む感じになり、聴感上の結果をふまえ前記の構成を選択したという。アナログ基板はLIFESの回路を含めこだわりのピールコート基板を使用する。



電源部は、音質を優先したCI型電源トランスと各回路が左右独立したレギュレーター、カスタム仕様の大容量ブロックコンデンサーにより構成されている


シャーシ構成にレフトサイドメカを堅守する。読み取りからデジタルの変換、アナログ出力まで一筆書きのように最短距離で結ぶことができ、ノイズと振動の主要発生源、電源トランスをアナログ出力から最大限離すことができることが理由。今回からフロントディスプレイがOLEDに変わり輝度が明るく面積も70%大きくなり、視認性が上がった。



天板を開けたところ。左側に厚い鋼板で覆われたドライブメカのLxDTM-iが置かれている。右側は増幅帰還エンジンLIFES1.1がフルバランス構成で配置されている




底板を開けたところ。右側のドライブメカLxDTM-iは、本機では新たに8mm厚のアルミベースプレートが追加されている


本機はMQA再生に対応しない。MQAを「もうひとつのハイフォーマット」と考え、SACDメインの本機ではあえて非採用となった。PCM系ソースの音質を最大限追求するならMQAデジタルフィルター(デフォルト)をオフにしないといけないユーザーの手間も考慮しての選択である。これにより、ロームのデバイス内内蔵のデジタルフィルターが使えるようになった。



導体の30%にD.U.C.C.銅線を採用した電源ケーブル「JPA-17000」が付属する



プリメインアンプの新技術 - 「LECUA」の最新版も搭載


次にプリメインアンプL-100 CENTENNIAL。「L-590AX II」以来10年ぶりのA級プリメインのレギュラーライン最上位の更新である。2020年の「L-595AL」は国内海外300台ずつの限定モデルで特別な位置づけだった。



L-100 CENTENNIALの背面パネル。5系統のRCA入力端子は、ラインレベル4系統とフォノ1系統(フロントパネルのスイッチでMM/MC切り替え)。XLR入力端子は2系統で、極性切り替えスイッチがそれぞれに設けられている。スピーカー出力端子は2系統を装備


パワーアンプ増幅回路にLIFES1.1を搭載する。ODNFの歪み成分だけをフィードバックする考え方はそのままにメイン回路と歪み検出回路を一体化してシンプル化し、安定供給の見込める素子の組み合わせに変更したのがLIFESである。


バージョン1.1では誤差検出用差動アンプの入力段をパラレルすることで歪みをさらに減少させた。具体的には、THDが1kHzの歪みがバージョン1.0では0.003%だったのが0.002%に、20kHzでは0.007%が0.006%に下がった。100Hzではさらに効果が大きく、0.002%が0.001%になった。



ヒートシンクに組み付けられた最新の増幅帰還エンジンLIFES1.1


LIFESと並ぶ同社看板技術がボリューム回路の「LECUA」である。ボリューム調整ノブに位置検出用の電流を流し変化量をマイコンが検出しアナログスイッチICを介してLECUA基板のボリュームが示す抵抗値へ接続する一種のフライバイワイヤーで、プリアンプ基板と表裏一体化して非常に短い経路でプリアンプ回路に減衰させた信号を送ることが「新LECUA1000」の特徴。


L-590AXで初採用され回路設計は変わっていないが、抵抗やコンデンサー始め構成部品は最新のパーツに刷新されている。



オリジナルの電子制御アッテネーターの「新LECUA1000」の基板。88ステップの細やかな音量調節が可能




電源部を中央に置いた内部構成。左右に出力段が振り分けて配置されている


電源部はコンデンサーに10000μFを Lch4本、Rch4本が8本使用と万全の構え。入力の切り替えにいままでアナログスイッチを使っていたが、今回USB DACの「DA-07X」で採用実績のあるEMデバイス製の高精度低動作音のリレーを同社プリメインアンプとして初めて使った。



高レギュレーションの大型電源トランスと大容量コンデンサー(10,000μF×8本)を組み合わせたハイイナーシャ電源を搭載




導体の断面積を増しつつ取り回しの良いスリムタイプに仕上げられたノンツイスト構造の電源ケーブル「JPA-10000i」が付属する



微細な音情報もくもりなく引き出される


試聴にあたり、スピーカーシステムはB&W「802 D4」を使用。D-100 CENTENNIALは恐ろしく静粛なプレーヤーである。ラックスマン独自の「DPS(DUST-PROOF SHUTTER)」機構は防塵、遮音を目的に、シャッターがくるりと回転するように閉じて演奏スタンバイするのはみていて楽しい。


LxDTM-iがボトムまで8mm厚のアルミ板で覆うボックス状になり制振性と読み取り精度が増し、どれだけ微細な音情報もくもりなく引き出される。


D-10Xから採用のローム製DACの使い方に習熟したことが伝わってくる。シーネ・エイの新作『SHIKIORI』(CD)ではピアノの音色を作る倍音の豊かな表出に驚く。じんわりと基音に滲むようであったり、輝きが発散するようであったり、表情に富んでいるのだ。ロームのDACが高周波数帯の表現に長けていることの証左。楽音が出音される瞬間をとらえるミクロレベルの解像力が凄い。


庄司紗矢香の『モーツァルト・ヴァイオリンソナタ集』(SACD)は、鋭く空気を裂くような力強い音もありのままに出してくる。しかし、冷厳な音楽ではない。ラックスマンらしく音色が明るく生気と人間感情の発露に満ちている。薄くなりがちなフォルテピアノの低音の厚みも十分。どの帯域でもいきいきとしたレスポンスがあってキレがいい。低域から高域まで音色に曇りがなくニュアンスと色彩が豊か。


ボズ・スキャッグスがジャズスタンダードを歌う新作『デトゥアー』(CD)ではプリメインアンプL-100 CENTENNIALのA級らしいしなやかな表現力が発揮される。典型的オンマイク録音だがボズの年季の入った声帯の筋肉の伸縮を生き生きと描写。上質な縮緬のような質感の包容力に富んだ歌だ。力のないアンプだったらざらざらした粗い歌声になるだろう。ジャズ、ポップス、クラシックを問わずボーカルを聴く最良のアンプといえるだろう。


『スターバト・マーテル』(SACD)は、弦楽合奏(ロンドン響)が空間にふわりと立ち上がり、雑味がなく清冽そのもの。高調波歪の無さという点で現在のCD再生装置中最高レベルにある。声量、ボリューム位置のいかんにかかわらずソプラノとアルトの定位の崩れがなく二声が支え合って音場に凜と立ち、LIFESの進化のほどを実感する。


 


唯一無二の作り手、技術と感性の確かな調和


ここで先述のD-100 CENTENNIALに搭載のデジタルフィルター1、2を切り替えてみよう。設計者は新しいDACに搭載されたふたつのアルゴリズムについて「従来のタイプは音が出る瞬間の空気が動く感じが再現される。新しいタイプは歪みがさらに減り音がきれいになるが、空気が動くというところが少し抑えられた感じになる」と語る。


クラシック、ポピュラーを問わず声楽系ソースを好む筆者の耳には、従来のタイプを採用する1が歌声に芯が感じられて好印象だった。


L-100 CENTENNIALとD-100 CENTENNIAL。ラックスマンが創業以来の長い年月の大半を費やして最も心血を注いだふたつの分野、プリメインアンプとプレーヤーの現時点での集大成である。


コンビで聴けば完璧に真髄を引き出し掛け算になる。D-100 CENTENNIALの隅々まで彫琢して生まれた音の密度をL-100 CENTENNIALは瑞々しさ、濃度に変える。


しかし、それぞれを単独で聴いても、その音はハイエンドが傾斜しがちな冷徹な蒸留水ではない。月並みな形容だが瑞々しい、滑らか、艶やかという形容がやはりいちばん合う。そこに唯一無二の作り手ラックスマンの技術と感性の確かな調和をみる。ラックスマンの次の100年はここから始まる。



 




(提供:ラックスマン)


※本記事は『季刊・オーディオアクセサリー 199号』からの転載です。

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