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公開日 2025/09/26 06:30
4.4mmバランス出力やアクティブスピーカーでCDをエンジョイ

SHANLING「CD80 II」レビュー。デスクトップで“CDを所有する喜び”を再発見する実力機

草野晃輔

音楽ストリーミングサービスが全盛の現代。いつでもどこでも膨大な楽曲にアクセスできる利便性は、もはや我々のライフスタイルに不可欠なものとなった。


しかしその一方で、かつて夢中になって集めたCDライブラリや、ストリーミングでは未解禁の “あの名盤” を、もう一度じっくり楽しみたくなる瞬間もあるだろう。


そんなニーズに応えてくれるCDプレーヤーがSHANLING(シャンリン)の新製品「CD80 II」だ。デスクトップに気軽に置けるコンパクトな筐体に、現代の技術を凝縮した意欲作。伝統的なCD再生に、4.4mmバランス出力やスマートフォンでのリモート操作といった現代的なエッセンスを加えることで、我々のCD鑑賞体験をどう変えてくれるのか。その実力をじっくりと検証したい。





 


コンパクトな筐体に秘められた、本格志向のサウンド設計


SHANLINGは、ポータブルオーディオプレーヤーから据え置き型のハイエンド機まで、多彩なラインナップを擁する中国の老舗オーディオブランド。特にCDプレーヤーには並々ならぬこだわりを持ち、バッテリー内蔵のポータブル機からリッピング用のトランスポートまで、幅広いユーザーのニーズに応える製品を世に送り出してきた。


CD80 IIは、そんな同社が新たに提案するデスクトップサイズのCDプレーヤーだ。幅280×奥行205×高さ52mmというコンパクトなサイズ感は、書斎のデスクやリビングのサイドボードなど、限られたスペースにもすっきりと収まる。軽量ながら剛性の高い金属製の筐体は、ブラック/シルバーの2色の仕上げをラインナップ。細部にまでこだわったシャープなデザインが印象的で、どんなインテリアにも自然と馴染むだろう。



SHANLING「CD80 II」ブラック(予想実売価格:税込54,450円前後)


その心臓部には、Cirrus Logic社のDACチップ「CS43198」を搭載。繊細なディテール表現に定評のあるこのチップに、Shanlingが長年培ってきたチューニング技術を組み合わせることで、活気に満ちた高解像度サウンドを実現したという。


CDドライブには、安定した読み取り精度を誇る伝統的なトレイ式を採用し、高精度なピックアップレンズを組み合わせるなど、基本性能を疎かにしない実直な設計思想が貫かれている。



トレイ式のドライブは、同ブランドの他の製品で幾度も採用実績のある安定性の高いメカニズムを内蔵する


対応メディアはCD再生のほか、フロントのUSB-A端子に接続したUSBメモリー内のハイレゾ音源(最大PCM384kHz/32bit、DSD256)再生や、スマートフォンなどから音声を受信できるBluetoothレシーバー機能(LDAC/AAC/SBC対応)と、現代のリスニングスタイルに合わせた構成だ。



シルバーカラーもラインナップする


本機の魅力であり特徴の一つが、強力なヘッドホン出力。フロントパネルには標準的な3.5mmアンバランス端子に加え、高音質再生を追求するユーザーにはお馴染みの4.4mmバランス端子を装備する。



CDを4.4mmバランス出力で楽しめる


オペアンプにはSG micro社の「SGM8262-2」をデュアルで搭載し、4.4mmバランス出力では最大850mW@32Ωという、高い出力を実現。これにより、鳴らしにくいとされる高インピーダンスのヘッドホンも余裕をもって駆動できる。


操作性の高さも見逃せない。付属の専用リモコンによる基本操作はもちろん、「Eddict Player」アプリを使えば、スマートフォンからの遠隔操作が可能になる。



SHANLING製品ではお馴染みの「Eddict Player」アプリからのリモート操作にも対応。いつも使うスマホさえ手元にあれば、CD再生も一元管理できる


使い方は簡単で、アプリ内の「SyncLink」機能でスマホとCD80 IIを接続するだけ。再生/停止といった基本操作から、USBメモリ内のライブラリのスキャンや選曲、Gainの切り替えまで、手元のスマホで完結する。現代のユーザーに馴染むこの快適な操作性は、本機の大きな魅力の一つと言えるだろう。



SHANLINGの汎用リモコンも同梱。プレーヤー本体のボタン/ダイヤル操作も合わせて3種類の操作方法が用意されている


 


CDの “熱量” を再発見する。イヤホンで探る音質の真価


それでは、いよいよ音質をチェックしていく。まずは手持ちのモニターイヤホンを3.5mmアンバランス端子に接続し、試聴を開始する。


最初に聴いたのは、オアシスの名盤『モーニング・グローリー』(1995年発売)から「Don't Look Back in Anger」。イントロのピアノが鳴った瞬間、そのクリアなサウンドに驚かされた。まるでハイレゾ音源を聴いているかのような滑らかさだ。


それでいて、ギターのディストーションはいい意味で荒々しく、ノエル・ギャラガーのボーカルも熱量たっぷり。CDってこんなに音が良かっただろうか? と感じずにはいられない。ボーカルやギター、ホーンセクションといった主役級のパートが一歩前に出てくるような、ストリーミングでは味わえない“CDらしさ”もしっかりと感じられる。



多機能ダイヤルの周囲にはLEDが内蔵され、柔らかく光を放つ


 



設定メニューの文字もくっきりと表示する前面ディスプレイ


正直なところ、最近はすっかりストリーミングに慣れ、アプリで次々と曲を切り替える聴き方が当たり前になっていた。しかし、こうしてCDのブックレットを眺めながら、アルバムという一つの作品に浸りつつリモコンで曲を操作する時間は、実に豊かなものだと再認識させられた。


続いて、アニメ『ぼっち・ざ・ろっく!』から生まれた結束バンドのアルバム『結束バンド』(2023年発売)より「星座になれたら」。ハイレゾ時代に制作された音源だけあって、全体のバランスが非常によくまとまったサウンドだ。CD80 IIは、その緻密なアンサンブルを余すことなく描き出し、現代的なレコーディングの良さをストレートに伝えてくれる。


最後にジャズの名盤、バド・パウエルの『ジ・アメイジング・バド・パウエル』(2004年発売のリマスター盤)から「チュニジアの夜」。軽快なピアノ、切れ味鋭いドラムのブラシワーク、リズミカルなウッドベースが、繊細かつ攻撃的に絡み合う。


マスターテープに由来するであろうヒスノイズが終始乗っているのだが、これが妙にアナログライクで心地よい。しかし音像は決して甘くならず、極めて明瞭。これもまた、CDというメディアならではの味わいだろう。


音の密度が劇的に向上。4.4mmバランス接続の衝撃


次に、イヤホンのケーブルを交換して本機の真骨頂ともいえる4.4mmバランス接続を試す。アンバランス接続と比べ、その音質はどのように変化するのだろうか。


再びオアシスの「Don't Look Back in Anger」を再生すると、その変化は一聴して明らかだった。全体的に音の密度がグンと増し、一つひとつの音の輪郭が明瞭になる。音の筆致が太くなったかのようだ。音場も一回り広く感じられ、演奏にさらなるメリハリが生まれる。


CDフォーマットでありながら、ハイレゾ音源に迫るほどの情報量と解像感を持つサウンド、と言っても過言ではない。ギターの歪みは驚くほど分厚く、アンバランス接続以上に迫力満点である。特に印象的だったのが、サビで幾重にも重なるコーラスだ。中低域の厚みと密度が増し、音場全体が豊かに広がり、アンバランス接続との違いは明確だ。



サイドパネルは、高級オーディオを連想させるヒートシンク風デザイン


結束バンドの「星座になれたら」では、まとまりの良さはそのままに、ボーカルとリードギターの存在感が一層際立ち、心なしかグッと前に出てくる印象だ。アンバランス接続ではどこかクールで落ち着いたサウンドだったが、バランス接続では楽曲が持つ本来のエネルギーが解放され、まさしく“アニソンらしさ”を存分に楽しめる。キャラクターの声を存分に楽しみたいのであれば、バランス接続をぜひ聴いてほしい。


最後にバド・パウエルの「チュニジアの夜」を聴くと、サウンドステージの広さに驚かされる。これはモノラル録音のため、本来であれば空間の奥行きは限定的なはず。しかし、音場空間が広がったためか、不思議と音そのものに立体感が生まれるように感じられる。音の密度が増したことで、ピアノのアタックはより鋭く、高域の消え際まで力感を失わない。シンバルのシズル感も、こんなに明瞭に記録されていたのかと改めて気付かされるほど鮮やかだ。


他のジャンルの楽曲でもアンバランスとバランス接続を試したが、いずれもその違いは大きく、聴き比べる楽しみがあることを確認できた。


リビングが特等席に。スピーカーで広がる音楽体験


CD80 IIはヘッドホンだけでなく、アクティブスピーカーと組み合わせることで、さらに楽しみ方が広がる。アンプを内蔵したアクティブスピーカーとRCAケーブルで接続すれば、最小構成でリビングや寝室が本格的なリスニングルームに早変わりする。


コンパクトな筐体は圧迫感がなく、実際に拙宅のリビングにあるカウンターテーブルに設置してみたところ、すんなりと空間に溶け込んでくれた。



4.4mmバランスのヘッドホン出力が魅力だが、そのサイズ感からアクティブスピーカーと組み合わせてリビングに設置するのも魅力的だ


オアシスの「Don't Look Back in Anger」をスピーカーで鳴らせば、イントロからクリアで濃密なサウンドが部屋を満たす。イヤホンでは頭の中で響いていたギターの分厚いディストーションが、今度は身体で受け止めるような豊かな響きに変わる。これぞスピーカーで聴く醍醐味と言えよう。


結束バンドの「星座になれたら」は、ボーカルに艶が乗り、高域がナチュラルに伸びていく。イヤホンで聴くよりも音が開放的になり、楽器それぞれの分離も手に取るように分かる。特に、つい耳で追いかけたくなるようなベースラインの躍動感は印象的だった。家族や友人とCDを囲んだり、寝室でゆったりと音楽に浸ったりと、CD80 IIはさまざまなシーンで重宝しそうだ。



RCAアナログ出力に加え、同軸デジタル出力も備えている。プリメインアンプなどとも組み合わせられる


 


“CDを聴く”という体験を、現代のスタイルでアップグレードする 


ストリーミングがもたらした利便性は計り知れない。しかし、CD80 IIで改めてCDと向き合ってみて、フィジカルメディアを所有し、1枚のアルバムを作品としてじっくり味わうことの豊かさを再認識した。本機は、そんな忘れかけていた音楽体験を、現代的な高音質と快適な操作性で蘇らせてくれる。


3.5mmアンバランス接続でのクリアかつエネルギッシュなサウンド、そして4.4mmバランス接続がもたらす劇的な音質向上は、手持ちのCDライブラリに新たな発見を与えてくれるはずだ。


デスクトップに気軽に置ける佇まいでありながら、本格的なオーディオ体験をもたらしてくれるCD80 II。手持ちのCDライブラリを、新鮮な感動と共に聴き直すきっかけを与えてくれる1台と言えるだろう。




(企画協力:MUSIN)


 

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