デノン/マランツのHEOS対応製品がQobuz Connectに対応
2025/05/16
長い歴史を持つロスレス/ハイレゾ音楽ストリーミングサービス「Qobuz」が日本で正式スタートしてから、半年以上が経過した。既に多くのオーディオファンがQobuzを楽しんでいると思われる/楽しんでいることを期待するが、いかがだろうか。
先日、以前から告知されていた「Qobuz Connect」という機能がついに正式発表された。この機能は従来以上に幅広いオーディオ機器でQobuzを利用可能にし、同時にユーザビリティの面でも、Qobuzの公式アプリが持つ高度な検索性や情報量をそのまま活かせるようになる。
この記事ではQobuz Connectについて解説するとともに、「今までQobuzに対応していなかったが、Qobuz Connectの対応により一気にQobuzが身近になった」製品の代表としてデノン&マランツ製品を取り上げ、両者の組み合わせでオーディオファンにどのような恩恵をもたらすのかについて紹介したい。
従来、「Qobuzをオーディオシステムに組み込む方法」は大きく分けて二通り存在した。
一つ目は、Qobuzの公式デスクトップアプリ、またはRoonやAudirvana StudioといったQobuzを統合している再生ソフトを使ってUSB-DACと組み合わせるスタイル。これはいわゆるPCオーディオのスタイルであり、デスクトップオーディオとの親和性も高い。公式デスクトップアプリを使う場合、USB-DACを用意するだけで音楽再生のシステムが完成するため、「最もシンプルかつ簡単な」Qobuzの導入方法と言える。さらに、Qobuzの公式デスクトップアプリはASIOにも対応しており、組み合わせるUSB-DACの実力をしっかり発揮するという点でも抜かりはない。
二つ目は、Qobuzを統合しているネットワークプレーヤー/トランスポートを使うスタイル。Qobuzの利用にPCを介する必要がないため、一般的な据え置きのオーディオシステムとの親和性が高い。音質的な観点からも、基本的に設定の類を気にする必要なく、Qobuzのクオリティを仕様上限である192kHz/24bitにいたるまで、最高の形で受けられることが担保される。一方で、Qobuzへのアクセスは基本的にネットワークプレーヤーのアプリから行う形となり、その完成度に大きく使用感が左右されるほか、Qobuzが公式に用意しているプレイリスト等が活用されないケースもある。
そして今回登場した「Qobuz Connect」は、新たに加わった第三の選択肢といえる。
Qobuz Connectとは、「Qobuz Connectに対応するネットワークプレーヤーを、Qobuzの公式アプリ(デスクトップ/スマートフォン/タブレット)から直接コントロールする」ための仕組みである。あるいはもっと単純に、「Qobuzの公式アプリから、直接ネットワークプレーヤーを出力先として選べるようになった」とイメージしてもらえばいい。
Qobuz Connectを使えば、Qobuzの公式アプリがそのままネットワークプレーヤーのリモコンになる。つまり、完成度の高い公式アプリの使用感を維持しながら、据え置きオーディオシステムにスムーズに接続できるという点で大きな意味を持つ。もちろん品質においても、Qobuz Connectは192kHz/24bitの再生を担保している。公式アプリからオーディオシステムに接続する際の選択肢だったAirPlayやBluetoothのようなクオリティの低下は生じない。これはオーディオファンにとって非常に大切な点だ。
Qobuz Connectに対応するネットワークプレーヤーは、それ以前からQobuzを機能として統合している場合が大多数を占めるが、なかにはそうした機能を持たず、Qobuz Connectにのみ対応する製品も存在する。
今回はQobuz Connectに対応したマランツのAVアンプ「CINEMA 70s」を使い、実際の使用感や音質を確かめてみた。D&M製品のネットワーク対応製品のうち、HEOSに対応する国内発売モデルはすべてQobuz Connectにも対応するため、幅広いモデルで利用可能だ。なお、Qobuz Connectの機能を使うためには、機器やアプリのバージョンが最新になっている必要があるので、アップデートをお忘れなく。
まず、当然ではあるものの、iPhone版・iPad版・デスクトップ版のすべてから、CINEMA 70sを出力として選択できることを確認した。
楽曲の再生時、曲名の右に出てくるスピーカーのようなアイコンをタップすると、出力先を選択することができる。ここで「CINEMA 70s」を選択すればOK。出力先だけがCINEMA 70sに切り替わる。
なおこの時、アプリからCINEMA 70sの音量もコントロール可能。操作感は総じて非常に快適だ。D&M製品のHEOSアプリではAmazon Musicも利用可能だが、Qobuzの公式アプリは音源の検索性や情報量はより豊富。今までAmazon Musicを中心に使ってきたオーディオファンも、Qobuzでは新鮮な感覚を得られるだろう。
また、CINEMA 70sはAVアンプであり、映像出力も持っているので試しに見てみたら、再生中の音源情報を画面に表示することも可能のようだ。
筆者は普段CINEMA 70sをテレビと組み合わせたリビングシアターのハブとして使用しており、4.0.2ch構成でもっぱら映像コンテンツやゲームを楽しんでいるのだが、今回はQobuz Connectを使ってあらためてCINEMA 70sの実力を探るという意味で、Paradigmのブックシェルフ「Persona B」と組み合わせ、バイアンプを行った。
まずは新譜で見つけた『易 伊福部昭の芸術13 ピアニズムの深淵』から「リトミカ・オスティナータ」(96kHz/24bit)を聴く。この曲は筆者にとって非常に思い入れの深い曲であり、ハイレゾで新譜が出るというのはタイミングも含めて非常に嬉しい展開だった。
端的に言って、CINEMA 70sは比較的リーズナブルな薄型AVアンプであることを良い意味で意識させない、実に見事な再生音を聴かせた。終盤の怒涛の展開をダイナミックレンジ豊かに描き切るパワー、クライマックスで訪れるゲネラルパウゼの瞬間的な静寂の表現などから、CINEMA 70sの純然たるアンプとしての実力を再確認できた。大規模な構成の曲をそれなりの音量で聴いてもエネルギー感が薄くなったり細部の輪郭が崩れたりすることもなく、この辺りはバイアンプも相当に効果を発揮しているものと思われる。
続いて、Qobuzは「オーディオパートナー」というプレイリストのカテゴリを用意していることが大きな特徴となっているのだが、そこから「B&W」のプレイリストを選び、B&Wのセレクションからジェフ・バックリー「Hallelujah」(192kHz/24bit)を聴いた。このように、「Qobuzが用意しているコンテンツにスムーズにアクセスする」という点においては、言うまでもなくサードパーティー製のアプリよりも、Qobuz公式アプリに優位性がある。
冒頭の吐息の生々しさに息を呑み、続くギターの切れ味と透明感にぞくりとする。先ほどの「リトミカ・オスティナータ」とは打って変わって音数的にもシンプルな構成の曲だが、そのぶんひとつひとつの音の克明さや立体感が如実に聴きとれる。ボーカルのエモーショナルな表現、そしてここでもダイナミックレンジの広さが実に印象的だった。組み合わせたPersona Bが高能率で「鳴らしやすい」スピーカーであり、極めて高度な「透明感」と「音離れの良さ」を有しているという点を加味してもなお、そうした特性をしっかりと引き出すCINEMA 70sのアンプとしての実力に対して、いちユーザーとして素直な賞賛を禁じ得ない。
Qobuz ConnectはQobuzを利用するうえでユーザーに新たな選択肢をもたらし、それは実際に優れた操作感と音質を両立する。特に、「ネットワークプレーヤーを導入してQobuzを楽しんでいる/楽しみたいが、音楽再生は基本的にストリーミングオンリーで、手持ちの音源はない」といったユーザーにとって、Qobuz Connectはまさにドンピシャの機能となり得る。実際Qobuzの公式アプリは優れた完成度に仕上がっているので、それを体験する意味でも、対応製品を持っているユーザーはぜひQobuz Connectを使ってみてほしい。
Qobuz Connectは、デノン&マランツ製品の国内で発売されている「HEOS」対応製品ならばすべて対応している。単体ネットワークプレーヤーやアンプ内蔵モデル、ネットワーク/CDプレーヤーはもちろんのこと、デノンのワイヤレススピーカー「DENON HOME」シリーズやサウンドバー等も対応しているのだ。
また「DENON HOME 150」は電源ケーブル1本だけで接続できるワイヤレススピーカーだが、こちらでもQobuzを利用可能。ラジオのようにQobuzを流しっぱなしにしておくと、意外な新しい曲に出会うチャンスが広がるのも楽しい。
すでに販売終了となったモデルでもHEOSに対応していればQobuz Connectが利用できる。編集部にても、5.0ch搭載の薄型AVアンプ「NR1710」(後継機「NR1711」が出たために販売終了)でも問題なく動作することを確認できた。
(提供:ディーアンドエムホールディングス)