公開日 2024/12/06 06:30
日本の大ヒット音楽ユニットにインスパイアされたポップス向けモデル
ボーカルに特化した唯一無二のイヤホン。See audio「Strawberry π」でJ-POPの魅力を味わう
野村ケンジ
See audioは、中国の若手エンジニアを中心に2019年に創立された新興オーディオブランド。IEMづくりで培ったというフォーカス感に秀でたサウンドで日本国内でも注目を集め、いまでは確固たる定評を持つブランドへと成長しつつある。
そんなSee audioから、J-POPを意識したサウンドに仕上げた製品が登場する。それが「Strawberry π」と「HAKUYA JP」だ。
まず、Strawberry πから紹介しよう。こちら、同社ラインナップのなかではハイクラスに位置する有線カナル型イヤホンで、低域・中域・高域にそれぞれ2つずつ、合計6基のバランスド・アーマチュア(BA)型ドライバーが搭載されている。ちなみに、ドライバー構成に関しては、先に決まっていたわけではなく、目的のサウンドをつくり上げるためにさまざまなパターンを検討、結果としてこの構成に落ち着いたのだという。そう、Strawberry πはJ-POPの魅力である、歌声をいかに際立たせるかに注力した製品となっているのだ。
きっかけは、YOASOBI「群青」を聴いたことだったという。「この曲を聴いた時、海のように広く深い、希望と夢に満ちた表現に感動しました。しかし、その時の我々の製品ではこの曲のすべてを表現仕切れないと思い、J-POPやシティポップのためのイヤホンをつくることにしました」とエンジニアのLaoma氏は語る。
そして、開発がスタート。歌声が際立つ音づくりに関しては、ライカのレンズのボケ味の表現に影響を受けたという。「ボーカルはクリアに表現され、伴奏は周りの景色のように柔らかく歌声を包み込み、主張しすぎない。そんな音を目指しました。また、ターゲットカーブにとらわれず、音の質感や時間軸での表現に注意を払いました」(Laoma氏)。
実際のサウンドは、確かに狙い通りのもの。See audioらしくエッジの尖った広がり感のある音ながら、聴かせどころをボーカルに集中していて、歌声のディテールや感情表現がよく伝わってくる。おかげで、YOASOBIは素っ気なくも活き活きとした、肉感がしっかり伝わるサウンドとなっている。あえて出しゃばらない調整がなされている演奏との調和も見事だ。宇多田ヒカルも同様に普段より存在感の強いバランスとなっていて、これはこれで楽しい。ボーカルの魅力が存分に味わえる製品だ。
もうひとつの「HAKUYA JP」は、同社のフラグシップモデル「HAKUYA(TRUE SOUND Version)」別チューニングモデル。オリジナルモデルは、同社が考える正統派の音を追求しているのに対し、感情の表現と雰囲気の演出に重きを置いているという。
ドライバー構成は超低域と中低域、高域に2つずつ、中域に4つのBA、超高域に4つの静電型という14基構成。一方で、フェイスプレートは、真珠母貝を用いた螺鈿細工が施されており、贅沢なつくりとなっている。
さて、肝心のサウンドはというと、一聴しただけでも丁寧な音づくりが伝わる極上さ。マルチドライバー構成とは思えない整った音色なので、ボーカルもピアノの音も伸びやか。解像感の高さとディテール表現の細やかさが相まって、聴き慣れた楽曲であっても新たな発見がいくつもある。
とはいえ、最大の魅力はJPならではの活き活きとした強い存在感を持つ歌声だろう。宇多田ヒカルもサラ・オレインも坂本真綾も極上の歌声を楽しませてくれる。高額だが、それだけの価値ある素晴らしい製品だと思う。
【SPEC】
「Strawberry π」
●型式:バランスド・アーマチュア型 ●ドライバー構成:バランスド・アーマチュア型×6(高域×2/中域×2/低域×2)●再生周波数帯域:20 - 20,000Hz ●インピーダンス:20Ω ●付属品:イヤーチップ(シリコンAZLA SednaEarfit XELASTEC II:XS/S/MS/ML、別タイプ:XS/S/M/L/XL)、キャリングケース
「HAKUYA JP」
●型式:ハイブリッド型 ●ドライバー構成:静電型×4(超高域×4)、バランスド・アーマチュア型×10(高域×2/中域×4/中低域×2/超低域×2)●再生周波数帯域:20 - 20,000Hz ●インピーダンス:11Ω ●付属品:イヤーチップ(シリコンAZLA SednaEarfit XELASTEC II:S/MS/ML、別タイプ:XS/S/M/L/XL)、ナンバリングプレート
(協力:リアルアシスト ミミソラ事業部)
本記事は「プレミアムヘッドホンガイドマガジンVOL.22 2024 WINTER」からの転載です。
そんなSee audioから、J-POPを意識したサウンドに仕上げた製品が登場する。それが「Strawberry π」と「HAKUYA JP」だ。
■「Strawberry π」聴かせどころを歌声に集中。肉感が伝わるサウンド
まず、Strawberry πから紹介しよう。こちら、同社ラインナップのなかではハイクラスに位置する有線カナル型イヤホンで、低域・中域・高域にそれぞれ2つずつ、合計6基のバランスド・アーマチュア(BA)型ドライバーが搭載されている。ちなみに、ドライバー構成に関しては、先に決まっていたわけではなく、目的のサウンドをつくり上げるためにさまざまなパターンを検討、結果としてこの構成に落ち着いたのだという。そう、Strawberry πはJ-POPの魅力である、歌声をいかに際立たせるかに注力した製品となっているのだ。
きっかけは、YOASOBI「群青」を聴いたことだったという。「この曲を聴いた時、海のように広く深い、希望と夢に満ちた表現に感動しました。しかし、その時の我々の製品ではこの曲のすべてを表現仕切れないと思い、J-POPやシティポップのためのイヤホンをつくることにしました」とエンジニアのLaoma氏は語る。
そして、開発がスタート。歌声が際立つ音づくりに関しては、ライカのレンズのボケ味の表現に影響を受けたという。「ボーカルはクリアに表現され、伴奏は周りの景色のように柔らかく歌声を包み込み、主張しすぎない。そんな音を目指しました。また、ターゲットカーブにとらわれず、音の質感や時間軸での表現に注意を払いました」(Laoma氏)。
実際のサウンドは、確かに狙い通りのもの。See audioらしくエッジの尖った広がり感のある音ながら、聴かせどころをボーカルに集中していて、歌声のディテールや感情表現がよく伝わってくる。おかげで、YOASOBIは素っ気なくも活き活きとした、肉感がしっかり伝わるサウンドとなっている。あえて出しゃばらない調整がなされている演奏との調和も見事だ。宇多田ヒカルも同様に普段より存在感の強いバランスとなっていて、これはこれで楽しい。ボーカルの魅力が存分に味わえる製品だ。
■「HAKUYA JP」マルチ構成ながら整った音。ボーカルもピアノも伸びやか
もうひとつの「HAKUYA JP」は、同社のフラグシップモデル「HAKUYA(TRUE SOUND Version)」別チューニングモデル。オリジナルモデルは、同社が考える正統派の音を追求しているのに対し、感情の表現と雰囲気の演出に重きを置いているという。
ドライバー構成は超低域と中低域、高域に2つずつ、中域に4つのBA、超高域に4つの静電型という14基構成。一方で、フェイスプレートは、真珠母貝を用いた螺鈿細工が施されており、贅沢なつくりとなっている。
さて、肝心のサウンドはというと、一聴しただけでも丁寧な音づくりが伝わる極上さ。マルチドライバー構成とは思えない整った音色なので、ボーカルもピアノの音も伸びやか。解像感の高さとディテール表現の細やかさが相まって、聴き慣れた楽曲であっても新たな発見がいくつもある。
とはいえ、最大の魅力はJPならではの活き活きとした強い存在感を持つ歌声だろう。宇多田ヒカルもサラ・オレインも坂本真綾も極上の歌声を楽しませてくれる。高額だが、それだけの価値ある素晴らしい製品だと思う。
【SPEC】
「Strawberry π」
●型式:バランスド・アーマチュア型 ●ドライバー構成:バランスド・アーマチュア型×6(高域×2/中域×2/低域×2)●再生周波数帯域:20 - 20,000Hz ●インピーダンス:20Ω ●付属品:イヤーチップ(シリコンAZLA SednaEarfit XELASTEC II:XS/S/MS/ML、別タイプ:XS/S/M/L/XL)、キャリングケース
「HAKUYA JP」
●型式:ハイブリッド型 ●ドライバー構成:静電型×4(超高域×4)、バランスド・アーマチュア型×10(高域×2/中域×4/中低域×2/超低域×2)●再生周波数帯域:20 - 20,000Hz ●インピーダンス:11Ω ●付属品:イヤーチップ(シリコンAZLA SednaEarfit XELASTEC II:S/MS/ML、別タイプ:XS/S/M/L/XL)、ナンバリングプレート
(協力:リアルアシスト ミミソラ事業部)
本記事は「プレミアムヘッドホンガイドマガジンVOL.22 2024 WINTER」からの転載です。
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