トップページへ戻る

レビュー

HOME > レビュー > レビュー記事一覧

公開日 2018/04/04 10:58
Bulk Petの技術背景も解説

新たなUSBオーディオ伝送技術「Bulk Pet」で音は良くなる? 対応USB-DAC 3機種でテスト

佐々木喜洋

前のページ 1 2 3 4 次のページ

PCオーディオにおいて昨年、インターフェイス社が提唱する「Bulk Pet(バルク ペット)転送方式」の登場が話題となった。本稿ではBulk Pet方式がどういうもので、ユーザーにとってどういうメリットや制限があるかということを解説していく。また、Bulk Pet転送方式に対応したUSB-DAC 3機種も実際に試聴し、従来の方式との音の違いについてもレポートする。

「Bulk Pet」のロゴマーク

Bulk Petに対応した3機種のUSB-DACを試聴してその効果を確認した

バルク転送を用いた独自のUSB音声伝送技術「Bulk Pet」

Bulk Pet転送方式はその名の通り、バルク(Bulk)転送を用いた同社独自の音声伝送技術である。まずはじめに書いておくと、バルク転送方式それ自体は特別なものではない。もとからUSBに備えられている転送モードの一つだ。

USBとは「Universal Serial Bus」の略で、文字通りユニバーサル、つまり汎用性が高い転送方式である。ユーザーはUSBでハードディスクからプリンター、USB-DACに至るまで、用途や特性の違うデバイスを、その違いを気にせず接続することができる。

しかしUSBの内部においては、接続する機器の特性の違いによって、いくつかの転送モードが使い分けられている。たとえばハードディスクが相手ならばアプリやテキストファイル、画像など大量のデータをなるべく早く転送することが求められる。このときに使われるのがバルク転送モードである。

一方でUSB-DACにおいては、音楽再生を行うためクロックに同期して正しい時間間隔でデータを転送することが求められる。このとき使われるのはアイソクロナス(Isochronous:等時性)転送モードだ。このためUSB-DACは、ふつうはアイソクロナス転送モードが使われる。

アイソクロナス転送モードはさらにホストとデバイス(DAC)のどちらのクロックに合わせるかで、アシンクロナス(Asynchronous:非同期)転送とアダプティブ(Adaptive:同期)転送に分けられる。

ちなみにUSB-DACのアシンクロナス転送方式はよく耳にするだろうが、アイソクロナス転送とアシンクロナス転送とはまったく別のものだ。日本語の語感的に間違いやすいので注意してほしい(アシンクロナス転送については今回のテーマとは関係ないので詳細は割愛するが、ごく簡単に説明すると、再生時にパソコン側ではなくUSB-DAC側=デバイス側のクロックを使用して再生する方式のことを指す)。

アイソクロナス転送モードが主流になった経緯

問題は、ハイレゾオーディオの黎明期において、アイソクロナス転送モードでは最大96kHzまでという制約があったことだ。これを「オーディオクラス1の制約」という。約10年ほど前のことだ。

DAC自体は192kHzに早くから対応していたので、このときに192kHzの楽曲データを送るために使われたのが、大量のデータを送ることができるバルク転送モードであった。初期にはMusilandなどのUSB-DACがこの方式を使っていたことを覚えている方も多いかもしれない。

ただし、本来はハードディスクに使われる方式で音楽データを送るので、これは非正規的な転送となる。そのためカスタムドライバーと呼ばれる独自ドライバーを追加でインストールする必要がある。一方でアイソクロナス転送モードは、OSにもともと入っているドライバーを使うことができる。これを標準ドライバー(またはクラスドライバー)という。

やがてオーディオクラス2が普及し、標準ドライバーで192kHzが達成できるようになると、だんだんと標準ドライバーを使うアイソクロナス転送モードが主流になってきたという経緯がある。

インターフェース社はアイソクロナス転送の限界を見据え、バルク転送に着目

一方でアイソクロナス転送モードの限界に気づいていたのが、国産のUSB-DACの基礎を築いてきたインターフェイス社だ。インターフェイス社では2014年頃から、プロオーディオのために極限まで転送データサイズを小さくし、レイテンシー(遅延)を可能な限り縮めるという試みを行っていた。

しかしアイソクロナス転送モードでは限界があり、なかなか目標数値に到達できなかったため、バルク転送モードに着目した。そこで好成績を収めることができたため、次にコンシューマーのHi-Fiオーディオ分野にこの技術を応用した。これが「Bulk Pet」(バルクペット)転送である。

インターフェイス社のホームページ

Bulk Pet方式自体は標準化団体が制定した規格ではなく、インターフェイス社の商標である。Bulk Petの「Pet」とは「Pure Enhanced Technology」の略だが、バルク転送をペットのようにかわいがってほしいという意味も込められていると言う。先に書いたようにバルク転送自体は、USBにもともとある転送モードだが、それに付加価値を付けて独自のものとしたのが、インターフェイス社の提唱するBulk Pet転送ということができる。

提唱すると書いたのは、Bulk Pet転送を実現するためにはホスト(PC)側のドライバーと、デバイス(DAC)側のファームウェアの両方に修正が必要だからである。このため、カスタムドライバーをインストールする必要があるとともに、ファームウエアの書き換えが必要となり、USB-DACメーカーの協力が必要となる。また。このためにXMOSによるファームウェアを採用しているUSB-DACでは使用することができない。あくまで、インターフェイス社がUSB-DACの基本ソフトを書いているメーカーに限られる。

しかし、そうしたメーカーのDACでは、ハードの追加なしでさらなる音質向上の可能性が開かれたわけだ。

Bulk Pet転送方式の利点と制限

前のページ 1 2 3 4 次のページ

関連リンク

新着クローズアップ

クローズアップ

アクセスランキング RANKING
1 Apple Musicも聴ける高コスパ ネットワークプレーヤーeversolo「DMP-A8」。音質と使いこなしを徹底検証
2 Amazon Prime Videoの人気8チャンネルが2ヶ月間99円に!GW期間中キャンペーン
3 アップル製品がAmazon/ヨド/ビックなどで最安値級セール。どこが一番安い?
4 コンパクトでハイコスパ、そして音が良い! Kanto Audio「YU2」がデスクでのスピーカー再生を楽しくする
5 ソニー、4スピーカーで立体音響を実現するシアターシステム「HT-A9M2」。新スピーカーで高音質化
6 Netflixで「ご利用世帯の登録」画面が表示された場合の対処法は?
7 クリプトン、内部配線材と吸音材を強化したピアノ仕上げ・密閉型スピーカー「KX-0.5P II」
8 『鬼滅テレビ -柱稽古編放送直前SP-』5/4 13時25分から無料配信。公開生放送の観覧受付開始
9 ソニー、新フラグシップサウンドバー「HT-A9000」。単体で独自立体音響に対応/約36%の小型化も
10 ネット動画も大画面で手軽に楽しめるREGZA「40V35N」が初登場1位 <AV製品売れ筋ランキング3月>
4/30 11:19 更新

WEB