【上海ショウ】ウィルソン・ベネッシュ、ユニゾン・リサーチ、ATC etc…懐かしブランドのイマを上海で見た!
栗原祥光過去日本に輸入されるも、様々な事情で取り扱いを終えた海外のオーディオブランドたちを上海インターナショナルオーディオショウで多く発見。かつて人気を集めたブランドの“今”をご紹介する。
ウィルソン・ベネッシュ -アナログ再生とは思えない静寂-
トーンアームの素材にカーボンを用いたアナログプレーヤーACT1+ACT2でデビュー。カーボンコンポジットを活用した魅力ある製品を次々に世に送り出し、新しい音の魅力を伝えてきた英国のWilson Benesch(ウィルソン・ベネッシュ)。スタンド一体型の小型モデルDiscoveryは日本でも人気を集めた。
上海で展示されていたアナログプレーヤーの「GMT One」は、ダイレクトドライブ方式を採用した超ド級機。プラッターを駆動するオメガドライブモーターは大きさが15インチ、重量14?とオーディオ用としては世界最大であると謳う。
カーボンファイバーを用いたヘッドシェル一体型トーンアームは、従来とは異なる四層タイプとのこと。どうやらワンポイント構造を採るようだ。
メインスピーカーはフラグシップスピーカーの「Eminence」、低域ユニットを向かい合わせに配置することでパワーを得るアイソバリック方式を採用している。Eminenceを用いたデモンストレーションは、浮世離れしたといってもよいハイレゾリューションな音を披露。アナログ再生とは思えない静寂さに圧倒させられた。
ユニゾン・リサーチ -木肌の美しいイタリア真空管アンプ-
木肌を美しく活かしたイタリアンデザインの真空管アンプで人気を集めたUnison Research(ユニゾン・リサーチ)。1988年にヴィチェンツァで生まれ、日本には1990年代初頭と早い段階で上陸。瞬く間に人気ブランドへと成長した。
当初は真空管アンプブランドであったが、ソリッドステートのプリメインアンプやCDプレーヤーなどのライン「ユニコ」シリーズを用意するなど、ラインナップを拡充させていった。残念ながら日本での取り扱いは2010年代の中頃に終了したようだ。
「Simply Itary」は、初期の代表作である「Simply Two」を彷彿させる出力真空管にEL34を用いたシングルアンプ。出力は約10W(6Ω)で、オプションとしてUSB-DACボードを用意するなど、現代スタイルに合わせたアップデートもなされているようだ。
ATC -火傷するほど熱いATCサウンド健在-
英国の新しいスタジオモニターとして、1974年に誕生したATC。パワフルなサウンドは日本でも高い人気を集めた。現在でも我が国ではスタジオ向けのプロダクトの取り扱いは行われているが、コンシューマー向けは終了しているようだ。
会場では大型のフロアスタンディングモデルである「SCM150ASLT」(1本15万人民元/日本円で約300万円)が、PASSのエレクトロニクスを用いての圧倒的な大音量でデモンストレーションを実施。火傷するほど熱いATCサウンドは今も健在だ。
さらに注目は創業50周年の記念モデルである「SCM20ASL」のリミテッドエディション。パワード型スピーカーで、鮮やかなブルーのキャビネットとレザーのフロントバッフルがラグジュアリー感を演出する。ユニットは25mm「S-Spec」デュアルサスペンショントゥイーターと15cmウーファー。トゥイーターは50W、ウーファーは200WのMOS-FETによるクラスAB級パワーアンプで駆動する。150セット限定で、対となるサブウーファー「C4 Sub Mk2」も限定20台で用意されている模様。
ネイム -フォーカルと合同ブースを展開-
英国にはコンパクトながらも良質なオーディオコンポーネントを輩出する土壌がある。1969年に誕生したNaim(ネイム)も、そんなメーカーだ。日本では1983年に誕生したプリメインアンプ「NAIT」が音楽愛好家の間で話題を集めた。だが、いつしかネイムの名は日本から姿を消した。
ネイムは2011年にフランスのスピーカーブランド・フォーカルと合併。オーディオショウへの展開はもちろん、各国で専門のショールームを展開しブランディングを強化している。
上海オーディオショウでは、プレーヤーも内包したオールインワンモデルから、フルサイズのセパレート機、そしてド級の「Statement」(2014年に誕生)まで、ネイムの現ラインアップを展示。
特にフラグシップモデルであるプリアンプとパワーアンプのセット「Statement」とフォーカル「Grande Utopia」によるデモンストレーションは、音圧レベルが高いにも関わらず、耳障りのない音に驚嘆。一見モノリスのようなデザインからは想像できない色香のある音を響かせた。
エグルストンワークス -アンドーラが5世代目に進化-
1992年、アメリカ・テネシー州で産声をあげたEgglestonWorks(エグルストンワークス)。エンクロージャーの側面を花崗岩で挟んだ「Andra」(アンドーラ)は、ピアノの音色の良さで、世界はもちろんのこと、日本でも1996年の輸入開始時に注目を集めた。だが取り扱いは2002年に終了した。
会場ではアンドーラが誕生30周年を迎えたとのことで、最新モデルにあたるアンドーラ5が美音を奏でていた。ソフトドームトゥイーターに2基のミッドレンジ、ウーファーという3ウェイ構成は変わらないが、ミッドレンジがカーボンファイバーコーンとしたほか、フロントバッフルとエンクロージャーの両脇にはアルミ材へと変わっていた。
他にもコンパクト機やブックシェルフ機なども展示。日本の住環境に合うサイズであると思わせた。
ジンガリ -木目の“オムニレイホーン”-
中・高域用にウーファーと同口径の丸くて美しい木目の円形ホーン(オムニレイホーン)が特徴のイタリアのZingali(ジンガリ)。JBLのユニットを採用していたこともあり、1999年中頃に日本に上陸するや人気を集めた。だがドライバーユニット供給が止まり、一時販売は停止に。その後99年頃にドライバーユニットと、仮想同軸配置のトールボーイ機で再上陸したが、いつしか取り扱いは終わっていた。
久しぶりに見たジンガリは、オムニレイホーンこそ残すものの、回析効果の低減を図ったであろう一度見たら忘れられない形へと変化していた。ユニット前面「Client Name 1.5」は、1インチ・コンプレッションドライバーと38cmウーファーを組み合わせた2ウェイ機だ。
さすがにこのデザインは……という人に向けてか、オーセンティックなモデルもラインナップされていた。日本市場では、ホーン型スピーカーが少なくなりつつあるので、もう一度姿を見たいものだ。
メロディ -オーストラリアの現代真空管サウンド-
1999年、電子工学のエンジニアであるアレン・ワン氏がオーストラリアで設立したメロディ。輸出にも積極的で、日本でも取り扱いがあったが、いつしか日本では美しい姿を見ることは叶わなくなった。
会場ではジンガリのスピーカーを使ってのデモンストレーションを実施。温度感の高い濃厚なサウンドは、どこか懐かしさを覚えるものだった。
プリメインアンプの「Everest 211MK2」は、その名の通り出力管に直熱三極管「211」を用いたモデル。初代機より出力をアップさせ18W(4Ω、8Ω)をギャランティしている。
VTL -熱狂的ファンを生んだアメリカの真空管ブランド-
1986年、カルフォルニアで誕生したVTL(Vacuum Tube Logic)。スタジオ由来の無骨な外観ながらも、ダイナミックで底力のある熱い音は日本でも「この音でなければダメ」という熱狂的なファンを生み出した。日本では2004年に輸入が途絶えたが、別ブランドになるものの、設計者であるディビッド・マンレイ氏が手掛けた作品は今も入手可能だ。
久々に見るVTLの製品群は、オシャレなフロントパネルが奢られ、従来の業務機然とした姿は影を潜めていた。「MB185 Series III」は完全バランス回路と謳うパワーアンプで、出力段にはEL34を8本使用し、三極管接続で140W、多極管接続では225W(いずれも5Ω)を出力するという。
オニキス -ブリティッシュサウンドの雄-
アクリル製フロントパネルにゴールドノブが特徴のオニキス。1979年に英国で誕生し、ブリティッシュサウンドの雄として、エクステリアの良さと手ごろな値段も相まって日本でもファンがいた。現在はフランスのYBAとともに、中国メーカー・シャンリンの傘下にある。我が国ではポータブル関連アイテムのみを中心に扱われているが、大型のハイファイコンポーネントも多くラインナップを揃えていた。
ブース内ではアルベドのスピーカーを用いてデモンストレーション。落ち着きのある音色はブリティッシュサウンドを今に伝える貴重なブランドであると再認識した。
ストリーマーにも力を入れているいっぽう、大型モデルも用意している。「OIA82」は瞬間最大出力500W(8Ω)、通常でも200W(8Ω)を誇るというプリメインアンプ。威風堂々とした佇まいに息を飲んだ。担当者によると、日本での取り扱い先を探しているとのこと。日本の再上陸を待たれるブランドだ。
上海インターナショナルオーディオショウには、他にも数多くの懐かしいブランドが出展していた。世界のオーディオの潮流を知るにも上海に足を運ぶ価値はあると思うと共に、こららのブランドが再度日本で聴ける日が来ることを願った。