【上海ショウ】パラダイム、ピエガ、T+Aの本国スタッフを直撃!アジア市場での注目モデルは?
筑井真奈上海オーディオショウでは、ハイエンドオーディオを主体とした輸入商社のブースがいくつも展開されていたが、BRIGHTEN HiFiという代理店は、カナダのパラダイム&アンセム&マーティン・ローガン、スイスのピエガ、ドイツのT+Aと3つの重要なブランドを手がけている。それぞれ本国の担当者も来場しており、現在の注力プロダクトとアジア圏の市場動向について教えてもらった。
パラダイム&マーティン・ローガンのサブウーファーも人気
Paradigm(パラダイム)とANTHEM(アンセム)、Martin Logan(マーティン・ローガン)は、カナダのPMLという会社のグループとなっており、ホームシアタールームのほかスピーカーの展示エリアを展開。副社長のジョン・ソーデン氏と、中央/東アジア担当のバルトス・ハボウィッツ氏に詳しい話を聞くことができた。
「パラダイムのスピーカーは、日本で着実にファンを増やしていますよ」と2人に伝えると、笑顔で大きく頷いてくれた。近年 “エクストリーム・ハイエンド” とでも言いたくなる超高価格帯スピーカーも登場するなかで、パラダイムは10万円以下のエントリーモデル(Monitor SE)からラインナップを揃えてる。日本市場にとってもそれは非常に重要なことです、と伝えると、「その通りです、みな最初はエントリーからスタートして、少しずつステップアップしていくのです。その時にしっかり選ばれるブランドでありたいと考えています」とソーデン氏。
上海のブースと日本との大きな違いがあるとすれば、サブウーファーが多く展示されていたことだろう。日本ではあまり見かけない中〜大型モデルまで、ひとつの山のようにサブウーファーが積み上がっていたのが印象的。ハボウィッツ氏も、「日本ではサブウーファーを使うのは “ピュア” じゃない、という声があることも分かります」と理解を示しながら、「特にホームシアター市場の強い中国では、サブウーファーの需要も大きいのです」と教えてくれた。なるほど豊富な製品ラインナップを持つが故に、その国の需要に合わせて適切な展開をしているのだろう。
アンセムは、こちらもカナダのAVアンプやプリ/パワーアンプなどを幅広く手掛けるブランド。現在国内では取り扱いがないが、パラダイムのハイブリッドタイプ(Persona 9Hなど)に搭載されるスピーカーの「低域」を補正するAnthem Room Correction(ARC)技術でその名を聞いたことがある人もいるだろう。
専用マイクとPCを用いて部屋の特性を計測し、ピークを補正しフラットな特性を実現できるものとなる。ルーム補正といえば「Dirac」も有名だが、「より精度の高い補正技術には自信がありますよ」とハボウィッツ氏。
またマーティン・ローガンについても、次なるラインナップの強化を予定しているという。「まだ詳しいことは言えませんが…、振動板の面積をさらに大きくして、さらに周波数レンジを伸ばしたものを考えています。日本でも展開できることを願ってしますよ」と教えてくれた。
ピエガのアクティブモデルも展開!
ピエガはスリムなデザインのアルミ・キャビネットと、リボントゥイーターが特徴のスイスブランド。今回のショウでも、トップラインの「Master Lineシリーズ」、「Coax GEN2シリーズ」、最新の「Premium GEN2シリーズ」、それに小型の「Ace」まで主力ラインナップを一気に展示する。
「ピエガという言葉の意味をご存知ですか?、イタリア語で折りたたむ、という意味です。言葉の響きも美しくて、私たちもとても気に入っています」と教えてくれたのは、ピエガのセールス担当のローマン・コヘリー氏。アルミニウムのキャビネットは、一目でピエガとわかる上質さに溢れている。
ピエガの現在の注目トピックは?と尋ねると、「豊富なカラーバリエーションを用意しました! 全部で8色あり、インテリアや他のシステムと合わせた仕上げをお選びいただけます」とのこと。ちなみに中国市場で人気の色を尋ねると、やはり「ゴールド」と「レッド」。なるほど中国らしいセレクションだ。
ほかにも日本では展開されていないアクティブ・ワイヤレススピーカーとサブウーファーも用意されていた。ピエガらしい外観をまといながら、各種ネットワーク機能(DLNA、Spotify Connect、AirPlay、Roon Ready等)にも対応したモデル。HDMI eARCも搭載しておりテレビとも連携できる。名門ハイエンド・ブランドのアクティブ強化のトレンドはまだまだ続くようだ。
ドイツの総合オーディオブランド、T+A
T+Aは、ドイツ語で「Theory」(理論)と「Application」(実践)の頭文字をとったドイツブランド。1978年創業、スピーカーの開発から事業をスタートさせた総合オーディオブランドである。一時期日本にも代理店が存在したが、現在は途絶えている。今回は、インターナショナルセールス担当のオリヴァー・ジョン氏に、最新のラインナップについて教えてもらった。
T+Aは、スピーカーからアンプ、プレーヤー、ヘッドホンまであらゆるジャンルを手がけており、自社だけでシステムを完結されることができる稀有なブランド(日本では現在、デノンとヤマハくらいだろうか)。エレクトロニクスの中核となるRシリーズでは、CDプレーヤー・プリアンプ・パワーアンプなどを取り揃えており、日本円ではおおよそ180〜300万円程度。決して “安い” 価格ではないが、ドイツ北部のヘルフォードという街でスタートし、現在もその地で開発と製造を担っている。「投資会社の資本の入っていない、ファミリー・カンパニーとして経営を続けています」とオリバー氏。
現在の社長は、創業者の息子であり2代目のコンラディンさん。もともとはスピーカーブランドからスタートしたT+Aだが、コンラディンさんの代になり、若いユーザーへのアプローチを狙ってヘッドホン関連アイテムもより強化するようになったそうだ。メインエリアのスピーカー再生のほか、ヘッドホン関連アイテムを多く展示していた。
オリバー氏によると、今回の上海ショウの注目トピックは、ネットワーク一体型の「Symphonia」。最新のネットワーク・ソリューション「Audiophile Streaming Architecture(ASA G3)」を備えながら、フロントには針式メーターや各種設定ボタンを搭載しており、レトロなデザインも目を惹く。アンプまで一体化されており、スピーカーを繋げるだけでオーディオシステムが完成するシンプルな構成も魅力である。
現在は国内代理店は存在しないが、「日本市場には以前から大きな関心を持っています」とオリバー氏。総合オーディオメーカーとしての確かな実力、日本でも改めて試聴したいものだ。