「50周年モデルだからこそ、妥協は一切存在しなかった」

KEFの最高技術責任者、マーク・ドット氏が語る「LS50」開発秘話

公開日 2013/01/23 15:13 ファイル・ウェブ編集部
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もちろん、LS3/5aが発売された1975年と比較して、解析技術は飛躍的に向上している。LS50開発における解析項目は多岐にわたり、スピーカーのマグネットの変化、ユニット・コーンやキャビネットの共振、ポートや背圧による弊害、ダイアフラムの振動にいたるまであらゆる点がその対象となった。結果、LS50は特徴的なキャビネット、そしてポートを獲得するに至った。

独特な形状のバスレフポート

「バスレフポートは低域を改善するための装置ですが、その弊害として中域にピークが発生してしまうのです。ポート内部に特殊な素材を用いることで、中域のみ筐体内部に逃がせる構造を実現し、中域のピークを解消することに成功しました。また、一般的なポート形状では背圧によって空気の渦が発生してしまい、音質に悪影響を与えてしまいます。LS50においては流体力学的な分析を行うことで、後方への空気の排出が自然で渦も発生しない形状を獲得しました。LS50のバスレフポートが特異なデザインになっているのには、こうした理由があるのです」。

妥協なきLS50の開発は「ただただ楽しかった」

筐体についても、最初に作成したデモ機をあらゆる角度から解析しながら、筐体のどの部分に不要な共振が発生しているのかが執拗なまでに調べられた。

音のスムースで均等な発散を綿密に計算を結果、ラウンド状の筐体となった

「音のスムースで均等な発散を綿密に計算した結果、LS50はご覧の通りのラウンド形状となりました。加えて、筐体の共振を防ぎつつ、筐体素材にテンションをかけるのを避けるため、三重構造のブレーシングを内部に十字に配置しました。キャビネットには高硬性の木材を用いた上で、木材の間に同社独自のダンピング素材を挟み込み、振動対策をさらに完璧なものにしたのです」。

ドット氏は、各種解析の詳細な結果の一部を見せてくれた。企業秘密を含むため残念ながらその資料をここではお見せできないが、筐体やポート、ドライバーにいたるまでの振動の分布、ポートからの背圧の気流について、徹底的な分析が行われていることが見て取れた。こうした努力が、スムーズな特性の実現に寄与したのである。

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