<HIGH END>B&W「801 D5」、山之内正氏の速報インプレッション。「卓越したベースの音色に本質的進化を感じる」
Bowers & Wilkins(B&W)の800 Diamondシリーズが第5世代「D5」に進化した。ウィーンのハイエンドで発表された当日、少人数でのリスニングセッションで短時間ながら「801 D5」の再生音を確認することができたので、第一印象をお届けしよう。
その前に今回の世代交代の背景を考察してみる。2015年に発売された第3世代や2021年登場の第4世代に比べると、今回の変更は小規模にとどまるように見えるかもしれない。ドライバーユニットの振動板や磁気回路をほぼ前作から踏襲しているのでそう感じてしまうのだが、どこに焦点を合わせるかが異なるだけで、音に直結する本質的な改善が行われている点は今回も変わらない。

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2026/06/04
これはあくまで筆者の推測だが、D5の開発チームは、キャビネットの剛性をさらに高めることを今回の開発目標に設定したように思われる。D3とD4の各世代では、ドライバーユニットを中心に振動系で発生する歪みを徹底的に抑え込み、透明感を高めて質感描写の次元を引き上げることに成功した。
その結果、以前は気付きにくかった音像のにじみや大音圧再生時の低音の僅かな遅れなど、新たな課題が浮かび上がり、キャビネットの共振を最小化する必要があると考えるに至ったのではないか。
D5世代では、800シリーズの基幹技術であるマトリックスの基本構造を大幅に見直した。フロントバッフル、補強桟(ブレーシング)、リアプレート、そして天板までアルミを適材適所に配置する「スペースフレームブレーシング」で堅固な構造を実現したことが大きい。「補強を強化した」との説明を受けたが、率直に言って、今回の見直しはそのレベルではない。
構造材にアルミを大胆かつ大量に導入しているため、本体の質量も増えた。骨格を強化することで運動エネルギーを適切に制御し、有害な振動を排除することが目的だ。フロア型モデルでは、台座も重量を増やし、内蔵するチューンドバス・ダンパーで振動をコントロールする手法も導入した。804 D5についてはミッドレンジ専用にアルミ製キャビネットを採用するなど、思い切った共振対策に踏み込んでいる。
改良箇所を筐体に集約する一方、コンティニュアム振動板やバイオミメティック・サスペンションなどの基本技術は前作を踏襲している。キャビネットの基本形状も含め、変える必要がないと判断した部分はあえて変えていないのだ。一方、トゥイーター用グリルや入力端子など、800 Signatureで導入された改善はもちろんそのまま受け継いでいる。
剛性強化による確実な進化を聴き取る
リスニングセッションが行われた部屋はブース内に仮設されたもので、遮音や反射対策は最小限にとどまる。ソース機器はINNUOS、アンプはマークレビンソンを使っていたので、いつもの組み合わせとは異なるし、D4との聴き比べもできなかった。そんな制約のある環境とはいえ、その再生音から確実な進化を聴き取ることができた。
オデッタ「Hit or Miss」冒頭のドラムは一音一音がソリッドでタイト。ヴォーカルはスムーズさと力強さが両立し、スタジオで聴くようなリアリティが感じられる。エリック・クラプトン「アフター・ミッドナイト」のアコースティックギターの鋭い立ち上がりとドラムの反応の良さなど、これまで聴いてきたサウンドとは一味違う鮮度の高さがあり、余分な付帯音はまったく気にならない。
どちらの曲も特筆すべきはベースの卓越した音色だ。ぼやけたりにじむことがなく、音色と動きのパターンを正確に聴き取れる。新しい録音ではその長所がさらに際立ち、ローラ・マーリングとトム・ヨークの音源に含まれる深い低音のエネルギーがどこにも逃げず、ダイレクトに耳と身体を刺激する。オーディオショウでは大音圧で再生するのが通例で、飽和気味の低音にさらされることが多いのだが、ここまでにじみのないベースに出会える機会は稀だ。
低音の質感と反応が向上すると、その効果は中高音にも及ぶ。アコースティックギターやヴォーカルのダイレクト感、ピアノのクリスタルな透明感はその一例だ。今回のデモンストレーションでは体験できなかったが、オーケストラや室内楽など、クラシックの音源でもその成果を実感できるに違いない。聴き慣れた環境でじっくり聴ける機会が待ち遠しい。




























