公開日 2017/09/19 14:04

【製品批評】ソナス・ファベールの“新たな伝統” ー 「Homage Tradition」を聴く

Amati Traditionなど3スピーカーを試聴
藤岡 誠
  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE
製品批評


スピーカーシステム
Sonus faber
Guarneri Tradition
¥2,000,000(ペア・税抜) ※写真右
Serafino Tradition
¥2,600,000(ペア・税抜) ※写真中央
Amati Tradition
¥3,600,000(ペア・税抜) ※写真左



ソナス・ファベールが設立されたのは1980年(昭和55年)である。私が同社のシステムの聴こえの素晴らしさに感心したのは、かれこれ30年ほど前のこと。2ウェイ・ブックシェルフ型「エレクタ・アマトール」であった。私は取材中にもかかわらず、輸入元へ電話を入れて発注。数日後に、自宅に届いたエレクタ・アマトールは、日本国内導入の第1号機とのことだった。

その後、高級型の「エクストリーマ」も購入した。両機は小・中型システムのレファレンスとして長く働いてくれた。これもあってソナス・ファベールの聴こえは私の聴感覚に濃密に残されている。

そして時は流れ、昨年2016年に同社最新の上位モデル「イル・クレモネーゼ」を聴いたが、その時私は“ソナス・ファベールは新時代を迎えた”と確信した。

伝統の聴こえの方向性を残しつつも、一層のワイドバンド&フラットレスポンスで、嘘、偽りのない本格的低域の伸張。その上で全帯域に亘って固有のキャラクターがなく、音楽的バランスとオーディオ的聴こえの双方を満足させる聴こえだったからだ。それゆえに、それほど遠くない時期に、このイル・クレモネーゼの特質を採り込み生かした姉妹機あるいはシリーズが出現するだろうと予測したものである。

Guarneri Traditionの天板部。ロゴをあしらったガラスが埋め込まれている

その予測は的中! それがここで紹介する『Homage Tradition(オマージュ・トラディション)シリーズ』である。同シリーズは、イル・クレモネーゼの先進性に加え、同社1990年代の「Amati Homage」「Guarneri Homage」といった銘機の"伝統=Tradition“を引き継いだ製品となる。

「Guarneri Tradition(ガルネリ・トラディション)」は、専用スタンド付属の2ウェイ・ブックシェルフ型だ。聴こえは高精度な印象で低域方向もこのクラスとして十分伸張。声楽はナチュラルで息継ぎや子音に強調感がない。ダクトノイズは小さいから安心されたい。ブックシェルフ型だが本シリーズのレファレンスと捉えてもいい。

「Serafino Tradition(セラフィーノ・トラディション)」は、3.5ウェイ・フロア型モデル。聴こえはガルネリ・トラディションの延長線上だが、全体として低域方向にゆとりがある。弦楽合奏のヴァイオリン群は穏やか。ピアノを聴くと、ガルネリ・トラディションの聴こえをアップライトピアノだとすれば、本機はグランドピアノに近い雰囲気である。

Amati Traditionの背面部。バスレフポートのダクトに適度なダンプをかけてチューニングを施すことで、低域をコントロールして再生レンジの拡大を図る独自のStealth Reflexを採用している

「Amati Tradition(アマティ・トラディション)」も3.5ウェイ。上部2ウェイ部はセラフィーノと共通だが、著しい違いはウーファーの口径で本機は22cmを採用する。ピアノを聴くとセラフィーノを確実に凌駕。比較すれば、フル・コンサートグランドピアノ的なスケール感と迫力がある。とにかく、音楽的なエナジーバランスが極めて良好。声楽、弦楽合奏はまさしくソナス・ファベールの伝統を継承している。特にコントラバスの響きと音色は記憶に残る他社にはないオリジナルサウンドである。

最後に、価格を考慮しない前提で私のお薦めの製品だが、ガルネリとアマティが文句なしのお薦め。セラフィーノについては購入後、いつも上級のアマティの存在、あえていえば“幻"が浮上することが必定。そうした後々の後悔を避ける意味からも、無理を承知で私としてはセラフィーノよりもアマティをお薦めしたい。

(藤岡誠)


Specifications
【Guarneri Tradition】●型式:2ウェイ2スピーカー、リア・バスレフ方式 ●ユニット:トゥイーターアロー・ポイントDAD 28mmムービング・コイルドライバー、ウーファーウルトラ・ダイナミック・リニアリティ150mm口径ネオジムマグネット ●クロスオーバー周波数:2.5kHz ●周波数特性:40Hz〜35kHz(ステルス・リフレックス含む) ●入力感度:87dB SPL(2.83V/1m0) ●公称インピーダンス:4Ω ●推奨アンプ出力:30〜250W(クリッピングなし) ●サイズ:本体239W×377H×400Dmm、専用スタンド設置時300W×1135H×400Dmm ●質量:本体16kg、専用スタンド14kg

【Serafino Tradition】●型式:3.5ウェイ4ピーカー、リア・バスレフ方式 ●ユニット:トゥイーターアロー・ポイントDAD28mmムービング・コイルドライバー、ミッドウーファーウルトラ・ダイナミック・リニアリティ150mm口径ネオジムマグネット、ウーファー:サンドウィッチ構造180mmダイアフラムコーン×2 ●クロスオーバー周波数:80Hz/250Hz/2.5kHz ●周波数特性:30Hz〜35kHz(ステルス・リフレックス含む) ●入力感度:90dB SPL(2.83V/1m) ●公称インピーダンス:4Ω ●推奨アンプ出力:80〜350W(クリッピングなし) ●サイズ:396W×1091H×510Dmm ●質量:52kg

【Amati Tradition】●型式:3.5ウェイ4ピーカー、リア・バスレフ方式 ●ユニット:トゥイーターアロー・ポイントDAD 28mmムービング・コイルドライバー、ミッドウーファーウルトラ・ダイナミック・リニアリティ150mm口径ネオジムマグネット、ウーファー:サンドウィッチ構造220mmダイアフラムコーン×2 ●クロスオーバー周波数:80Hz/250Hz/2.5kHz●周波数特性:28Hz〜35kHz(ステルス・リフレックス含む)●入力感度:90dB SPL(2.83V/1m)●公称インピーダンス:4Ω ●推奨アンプ出力:100〜500W(クリッピングなし)●サイズ:411W×1170H×540Dmm ●質量:61kg●取り扱い:(株)ノア


※本記事の完全版は「季刊Analog」56号にてお読みいただけます、購入はこちらから

この記事をシェアする

  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE
クローズアップCLOSEUP
アクセスランキング RANKING
1 「スマホ新法」が12月18日施行へ。アップルへの影響は? ユーザー体験はどう変わる?
2 故障したオーディオ機器でも高値買取!「オーディオサウンド」の自社修理工房担当者の話す“一番多い故障箇所”とは
3 住まいに溶け込み毎日つかえる、エプソンの新世代3in1プロジェクター「EF-72」は期待を超える充実ぶり!
4 技術と音楽的感性の結晶。aurenderの“戦略モデル” 最新ネットワークプレーヤー「A1000」を聴く
5 北欧の名匠・DALIの新たなる挑戦。最新スピーカー「EPIKORE」シリーズを評論家6名がクロスレビュー
6 Fyne Audio、6インチ口径ユニットを用いたフロア型スピーカー「F501S」。従来機からドライバーなど刷新
7 HiBy Digital、初音ミクコラボの限定DAP「M500 Hatsune Miku Edition」。2026年1月下旬発売
8 <ポタフェス>Meze Audio&スタックスの名機が再登場!/BLUESOUNDが高音質ストリーミングをデモ
9 美しさも利便性も妥協なし! 木のぬくもり溢れるLDKにホームシアターをビルトイン
10 <ポタフェス>ビクター「WOOD Master」試聴に長蛇の列/ソニー、1000Xシリーズやモニターヘッドホンなど多彩な展示
12/16 11:06 更新
音元出版の雑誌
オーディオアクセサリー199号
季刊・オーディオアクセサリー
最新号
Vol.199
世界のオーディオアクセサリーブランド大全2025
特別増刊
世界のオーディオアクセサリーブランド大全2025
最新号
プレミアムヘッドホンガイドマガジン vol.23 2025冬
別冊・プレミアムヘッドホンガイドマガジン
最新号
Vol.23
プレミアムヘッドホンガイド Vol.33 2025 SUMMER
プレミアムヘッドホンガイド
(フリーマガジン)
最新号
Vol.33(電子版)
VGP受賞製品お買い物ガイド 2025年冬版
VGP受賞製品お買い物ガイド
(フリーマガジン)
最新号
2025年夏版(電子版)
DGPイメージングアワード2024受賞製品お買い物ガイド(2024年冬版)
DGPイメージングアワード受賞製品お買い物ガイド
(フリーマガジン)
最新号
2025年冬版(電子版)
WEB
  • PHILE WEB
  • PHILE WEB AUDIO
  • PHILE WEB BUSINESS
  • プレミアムヘッドホンガイド
  • ホームシアターCHANNEL
  • デジカメCHANNEL
AWARD
  • VGP
  • DGPイメージングアワード
  • DGPモバイルアワード
  • AEX
  • AA AWARD
  • ANALOG GPX