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公開日 2008/06/26 20:22

ソニー、2010年度までの中期経営方針を発表 ー BRAVIA/PS3への映像配信を強化

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ソニー(株)は、08年度から10年度までの中期経営方針に関する記者説明会を開催。同社会長のハワード・ストリンガー氏らが出席し、コアビジネスの徹底強化を宣言するとともに、ビデオ配信サービスやネットワーク・ワイヤレス対応製品を強化する方針を打ち立てた。

本日の説明会には同社取締役 代表執行役 会長 兼 CEOのハワード・ストリンガー氏、取締役 代表執行役 社長 兼 エレクトロニクスCEOの中鉢良治氏、執行役 EVP 兼CFOの大根田伸行氏、(株)ソニー・コンピュータエンタテインメント 代表取締役 社長 兼 グループCEOの平井一夫氏らが列席した。

はじめにハワード・ストリンガー会長により、05年から3年間の同社中期経営方針における成果の総括と、08年以降3年間の新たな中期経営方針の概略が説明された。


■05年からの中期経営計画は大きな成果を達成した


ハワード・ストリンガー氏
ストリンガー氏は2005年に同社会長に就任し、「エレクトロニクスの復活」を軸とした中期経営方針を表明した(関連ニュース)。その際にコミットメントとして、07年度に5%の連結営業利益率を目指すこと、選択と集中によるモデル数の20%削減、簡素で効率的な組織体制の構築や、効果的な人員削減と生産拠点の整理を行うことにより、収益性の改善を図っていく方針などが掲げられた。その成果については、5月に開催された07年度の連結業績説明会(関連ニュース)においても明らかにされたとおり、同社全体として4.2%の連結営業利益率を達成。また復活を宣言したエレクトロニクスでは5.4%の営業利益率を達成した。この内容についてストリンガー氏は「設定目標についてはすべて満足のいく成果を得ることができた」と評価。08年からの中期経営方針へとつなぐコメントとして、ストリンガー氏は「ここまでの時点で収益性を劇的に改善し、成功裏に構造改革を行ってきた。しかしながら、改革はまだ終わったわけではない。ソニーの強みを維持しながら、新しいビジネスを創出し、サービスを展開していく。常に改革を継続していくことが大切だ。ハードウェアとコンテンツへの高い評価に匹敵するような、ソニーらしさを追求した質の高いソフトウェアとサービスを実現して行きたい。市場にはまだ多くのビジネスチャンスがあふれている。これらを獲得するために、必要であれば大きな投資も積極的に行いながら、新たな成功を達成して行く考えだ」と語った。

エレクトロニクス事業に関しては、「これまでの3年間に復活を成し遂げた意義は大きい」とストリンガー氏は評価。中でも液晶テレビ“BRAVIA”シリーズのブランディングをワールドワイドで成功させたこと、有機ELテレビを商品化できたこと、デジタルカメラの事業が売上げ・利益に大きく貢献したことなどが成長につながったと指摘した。またブルーレイについては「グループのリソースを一つにして、BDを次世代のデファクトにできたことは大変喜ばしいこと。縦割り構造を廃止し、ビジネスユニットを超えた連携が図ることができた成果だ」と、その歩みを振り返った。


07年度の連結営業利益率、エレクトロニクス営業利益率を報告

PS3/PSPの累計販売台数が世界で5,000万台を達成
またゲーム事業では、人気タイトルがリリースされたことや、BDプレーヤーとしての魅力にフォーカスが当たったことなどにより、PLAYSTATION3(以下:PS3)/PSPを合わせた累計販売台数が世界で5,000万台を達成したことを評価。ストリンガー氏は「08年度には黒字化を見込んでいる」と語った。


■BDも1兆円事業規模に押し上げ“7つの1兆円事業”を創出 ー 08年度の中期経営方針

07年までの中期経営計画が成功を収めたことを踏まえて、ストリンガー氏は08年から10年までの、3年間の中期経営方針を表明した。同社が掲げた中期目標は下記の通りだ。

・すでに売上高が1兆円を超える「液晶テレビ」「デジタルイメージング」「ゲーム」「携帯電話」の4事業に加え、「PC」「BD関連商品」「コンポーネント・半導体」の各事業を1兆円規模のビジネスに成長させ、“7つの1兆円事業”を創出する
・2010年までに製品カテゴリーの90%にネットワーク機能を内蔵、またはワイヤレス対応としていく
・2008年夏にPLAYSTATION Network上でビデオ配信サービスをスタート、以降2010年度までに主要製品へ展開する
・BRICs(ブラジル/ロシア/インド/中国)での年間売上高を2010年末までに倍額の2兆円へ拡大させる

また営業利益率については5%を維持し、イノベーションを実現するためのベースラインとすることが宣言された。そのほか、2010年でのROE(株主資本利益率)10%を目標とすること、同じく2010年までに温室効果ガスの排出を2000年比で7%以上削減すること、今後3年間に重点ビジネスや技術領域に総計1兆8,000億円の投資を行う計画も明らかにされた。

この新たな中期経営の指標について、ストリンガー氏は「過去3年間での成長が土台となり、より大きな成果が得られると期待している。今後も絶え間なく効率化をはかり、利益率の向上を達成していきたい。ゲーム事業については、PS3/PSPをプラットフォームに“ノンゲームのサービス”にも力を入れていく。また“BRAVIA”を軸にしたVODサービスもエレクトロニクス事業を成長へ導く核となるものと期待している。次のステージにおける成功に向けて、ソニーは一致団結して進んでいく」と宣言した。


■10年度までに液晶テレビで「世界No.1」を目指す ー 主要製品ではVODサービスを展開

続いてソニー(株)中鉢良治社長が登壇し、同社のエレクトロニクス事業の方針を説明した。


中鉢良治氏
はじめに先の中期経営計画を振り返り、中鉢氏は「これまでの3年間に選択と集中を推進してきた結果、“商品力”、“技術力”、“現場力”の3つを回復へ導くことができた。BRAVIAの成長、ソニーのエレクトロニクス復活を印象付けるものになったと思う。今後、テレビビジネスの収益性をさらに見直しているところだ。事業環境の変化を踏まえ、これまでの延長戦上にはないアプローチを盛り込みながら量と質の変化をともなう施策を、新たな中期経営戦略に盛り込むこととなった」とコメントした。

中鉢氏より、エレクトロニクス事業の中期成長を実現するための重要施策として掲げられたポイントは「新たな顧客体験の創出」と、「コアビジネスの強化」「Innovationの加速」「環境負荷の低減」である。

中でも「新たな顧客体験の創出」として、これまでに充実させてきたHD商品群を進化させ、ネットワーク対応を促進させていく方針が示された。さらに、今日いっそう複雑化していくデジタルAV機器をもっと簡単に楽しめるよう、ユーザーインターフェースの使いやすさや、接続・設置の手軽さを追求していく考えも中鉢氏は明らかにした。

「コアビジネスの強化」には、テレビ事業のテレビ事業の収益を改善していくために、よりいっそうの差異化を進めていく方針が掲げられた。そのためにLED光源や専用半導体の内製化を推し進め、液晶テレビの薄型、高速応答性能の向上、低消費電力を実現していくという。またコスト競争力を高めていくため、パネルについてはシャープ(株)と設立する合弁会社(関連ニュース)や外部調達を活用しながら安定供給を図る考えが打ち出された。これらの戦略により、2010年までに液晶テレビで「世界No.1」を目指していくと中鉢氏は宣言した。


液晶テレビで世界No.1を目指す
同事業分野については、ストリンガー氏からも「2010年までに製品カテゴリーの90%にネットワーク機能を内蔵、またはワイヤレス対応としていく」方針が示されている。具体的にはPLAYSTATION Network上で、映画やテレビのプレミアムコンテンツ配信サービスを立ち上げ、同社の各製品に対応したVODサービスを2010年を目標に順次展開していく計画が明らかにされた。液晶テレビ“BRAVIA”については、インターネット接続の機能を活かし、STBを介さずに、テレビのユーザーへ限定版コンテンツを直接提供できるサービスモデルが検討されている。今年の11月には米国にて、同社のグループ会社であるソニー・ピクチャーズにより、夏に劇場公開されるウィル・スミス主演作『ハンコック』をDVD発売に先駆けて、ネット対応の“BRAVIA”に提供するVODサービスを提供していく計画も明らかにされた。


VODサービスを2010年までにソニーの主要製品に展開

米国では11月よりVODサービスが開始される
「Innovationの加速」に関する戦略としては、コーポレートR&Dの再編を中鉢氏は掲げた。R&Dの重点領域には「有機ELディスプレイ」や「次世代伝送技術」などのデバイス関連の技術や、「アプリケーション開発」「ユーザーインターフェース」「画像処理技術」などが含まれている。また、半導体・コンポーネントの集中領域への積極的な投資や、豊かな成長を実現するための環境負荷の低減を実現していく方針も中鉢氏により表明された。


■PS3/PSPをプラットフォームにした次世代ネットワークサービスを構築

最後に(株)ソニー・コンピュータエンタテインメントの平井一夫社長がゲーム事業の戦略について説明を行った。


平井一夫氏
これまでの3年間の事業戦略については「PLAYSTATIONは第一義的にゲーム機であることを踏まえ、原点を見つめなおしてきた。その土台を基に、魅力的なゲームを投入してきたことにより、PSP/PS3ともに大きな成長を遂げることができた」と平井氏は振り返った。

今後のゲーム事業の拡大を牽引する“2つのカギ”として、平井氏は「ノン・ゲームと、ネットワークの2つのサービス」を掲げた。PS3/PSPの累計販売台数が発売以来、07年度までに5,000万台を達成したことはストリンガー氏からも報告されたが、平井氏は「この“Network Ready”のユーザーに向けて、ゲーム以外のインタラクティブ・エンタテイメントを提案していきたい」と宣言。ゲームを中心に楽しむユーザーには、ゲーム以外にも拡大するPS3/PSPの魅力を訴求していくとともに、ゲーム外の楽しみ方から両機器を手にするユーザーにもアプローチしていく戦略だ。

ゲーム以外の新サービスを展開するプラットフォームに平井氏は「PLAYSTATION Network」を位置づける。PS3/PSPのユーザー向けにオンラインのサービスを提供する「PLAYSTATION Network」は、両機の所有者の半数近くが接続しており、累計登録者数はワールドワイドで980万アカウントを突破しているという。平井氏は「ここにノンゲームのサービスが飛躍的に伸びる土壌があると考えている」と期待する。具体的な内容については、「PLAYSTATION StoreをプラットフォームにしたVODサービスをPS3/PSP向けに米国でスタートさせ、日本、欧州にも順次展開していく。ネット上で購入したコンテンツはPS3にダウンロードした後、PSPに書き出していつでもどこでも楽しめるようなモデルを描いている。配信タイトルはSDだけでなく、HDでも準備している」と平井氏は説明した。


PLAYSTATION Storeで映画やテレビのタイトルが購入可能に

PLAYSTATION Networkの累計登録者数はワールド・ワイドで980万アカウントを突破しているという
また3Dのキャラクターを使って、ネット上の仮想世界で様々なコミュニケーションが楽しめるPLAYSTATION Homeについて、平井氏は「今秋にベータサービス開始に向けて準備を進めている」とし、説明会ではサービスのデモンストレーションを披露した。また新たなネットワークサービスとして開発が進められている「Life with PlayStation」も簡単なデモが行われた。「PS3と大画面で楽しめる、ネットワークを活用したエンタテインメント」として紹介された同サービスは、画面上に映し出された地球の衛星写真をブラウジングして、ほぼリアルタイムで更新される世界のニュースや天気など、情報を閲覧して楽しめるというもの。本サービスについて平井氏は「いまのところ時間軸を“現在”に固定しているが、今後は過去にユーザーが撮影した動画などを、本サービスを展開するサーバー上へ時系列に保存できる機能なども追加して行きたい。開始時期や具体的な内容については、改めて明らかにする機会を設けたい」と説明を付け加えた。


今秋にベータサービスの開始が予定されている「PLAYSTATION Home」のデモ

新サービス「Life with PlayStation」のロゴ

「Life with PlayStation」のデモ
平井氏は「これらノン・ゲームコンテンツやネットワークサービスをさらに充実させながら、もちろん魅力あるゲームタイトルも積極的に展開していく。ゲーム機自体のコストダウンも加速させながら、08年度に黒字化を実現したい」と宣言した。

以下に本日の会場で行われた質疑応答の一部を紹介する。

■質疑応答

Q:「2010年度に液晶テレビで世界No.1」という目標について、具体的に数量やシェアの目標数値はあるのか。
A:今年が約1,000万台の売り上げでトップのレベルを競っている状況。これから2010年に向けてシェアとしては15%から20%を獲得したい。数量についてはコメントを差し控えたい。(中鉢氏)

Q:グループ全体での売り上げの数値はどの程度になると予測しているか。
A:08年度は9兆円という数字を公開している。当社としてはできるだけ早く10兆円を達成したいと考えているが、いま3年後の数値をコメントすることは控えたい。(大根田氏)

Q:アップルのiPodやiPhoneなど、これまでのコンシューマーエレクトロニクスのカテゴリにはない製品が競合他社から発売されて好調だが、これまで“ソニーらしさ”のある製品を出せてきた自負はあるか。また今後はそのような製品を展開していく考えはあるか。
A:まずはじめにiPodやiPhoneについても、既存の製品の延長線上にある発想から生まれた商品であることを指摘したい。反対に、ソニーの有機ELテレビや“Rolly”は、既成概念を覆す製品であったと自負している。デジタルカメラの“スマイルシャッター”機能も画期的なものだ。PS3のネットワーク機能についても同じことが言える。このように、いくつもの画期的な製品を、様々なカテゴリでソニーは持っている。(ストリンガー氏)

“ソニーらしさ”については、様々な方たちから期待されていると思う。そのベースにはソニーならではの「技術」が盛り込まれていることが大事。開発した技術者たちも輝いていなければならない。これまでは画期的な単体製品を世に出して賞賛を浴びてきたが、これからは「つながって感動を与える」製品が注目されると思っている。ブロードバンドのサービスなども取り込みながら、新しいモバイルサービスも提供していきたい。(中鉢氏)

Q:ソニーのVODサービスは、他のサービスとどこで差別化されるのか。また当初は米国スタートし、徐々に世界展開を広げていくということだが、サービスの内容は世界共通にするのか、あるいは地域ごとに変えていくのか。
A:当社ではマーリンというDRM技術をPLAYSTATION Networkのビデオ配信で採用し、著作権を着実にプロテクトしていく方向で考えている。差別化を図るポイントとして、いかに数多くのタイトルを揃えるかが大事になるだろう。PS3とPSPの連携性も高めながら、ホームとポータブルを高いレベルで融合させていくことも大切。サービスの内容については、やはりそれぞれ地域、国ごとにユーザーが求めているジャンルやカテゴリが異なるはずなので、基本のPLAYSTATION Networkという枠組みは共有化しながら地域や国によってコンテンツは違うものを提供していくことになるだろう。(平井氏)

(Phile-web編集部)

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