公開日 2008/11/29 09:12
フィルム復元者と企画担当者が語る「羅生門 デジタル完全版」のすべて
名作が美しく甦ってブルーレイで登場!
別項にてお伝えしたとおり、角川映画は黒澤明監督の名作「羅生門」をBlu-ray Discにて2009年2月6日より発売する。
このたび、本作のフィルム復元を行ったアカデミー・フィルム・アーカイブのポゴゼルスキー氏と、復元された本作のブルーレイ化に携わった角川映画(株)ビデオ事業部 ビデオ制作グループの岩崎大介氏にインタビューする機会を得た。「フィルムの復元」に、そしてそれを元にした「ブルーレイ化」にあたっての詳細なお話を伺えたので、その内容をお伝えしよう。
■ポゴゼルスキー氏が語る「羅生門」デジタル復元プロジェクト− フィルム復元の持つ意義とは

アカデミー・フィルム・アーカイブ マイケル・ポゴゼルスキー氏先日行われた、黒澤明監督「羅生門」の4Kデジタル復元プロジェクトについてのシンポジウムに登壇したアカデミー・フィルム・アーカイブのディレクター・マイケル・ポゴゼルスキー氏にインタビューを行うことができた。
今回のプロジェクトが持つ意味はなんと言っても「フィルム自体を復元したこと」にある。「“デジタルリマスター”と“フィルム復元”の持つ意味は違います」と語るポゴゼルスキー氏。「というのも、フィルムとデジタルデータではもともとの情報量が違います。現在最も高画質な記録が可能なHDCAM SR テープでも、その解像度は1920×1080。一方、フィルムの持つ解像度は2K以上です。映画館での上映はもちろん、DVDやブルーレイ、そしていずれ登場するであろう更なるハイクオリティフォーマットでソフトを作る大元となるフィルムを復元することは、名作をより長く後世に残すことにつながるのです」。
復元作業は、オリジナルネガを4K解像度でスキャンしデータ化することから始まった。データはいったん2K解像度に変換され、デジタル復元ソフトでキズ消しなどの作業を施す。そして最後に4K解像度に戻し、新しいネガを作成する、という流れだ。
「2K解像度で作業を行ったのは、『羅生門』の場合オリジナルネガが失われており、1962年につくられたプリントを元に作業を行ったため。このプリントの持つ解像度が2K相当だったからです」(ポゴゼルスキー氏)とのこと。「ただし、2Kの映像を2Kのままスキャンするよりも、4Kでスキャンしたほうがより詳細なデータが得られます。また、これには諸説あるのですが、そうしてできた2K解像度の映像を2Kのまま上映するよりも、4Kにアップしたほうが見た目上画質が向上するのです」ということだ。
「デジタル復元ソフトでは、隣接するコマとの情報の差異を検出して自動補修を行うのですが、木の葉や煙など動きが速いものは前後の情報が少ないため補完が難しい。そして雨はずっとフィルム上に表示されるため、ノイズとして検出されてしまう……羅生門はそういったシーンが多かったので修復は非常に大変でした」と修復の苦労を語るポゴゼルスキー氏。ソフトによる自動修復が難しい部分は、多くの職人による手作業で修復を行ったという。
「鮮明で質の高い映像を楽しめるブルーレイが登場したことで、よりフィルムに近づいた美しい映像を家庭で楽しめるようになったのは、フィルム保存者としても大変素晴らしいことだと感じています。ブルーレイという新しいフォーマットで古い映画が発売され、みなさんのお手元に届くのは素晴らしいこと。是非お楽しみいただきたいと思います」
■岩崎氏が語るブルーレイ「羅生門」の魅力

角川映画 ビデオ事業部 ビデオ制作グループ 岩崎大介氏このようにポゴゼルスキー氏らによってデジタル復元されたフィルムを元にして製作されたのが、今回発売されるBD版「羅生門」だ。角川映画初のブルーレイ作品となる本作。「非常に気合いが入っています」と語るのは、角川映画 ビデオ事業部 ビデオ制作グループの岩崎大介氏だ。
今回発売されるのは「羅生門 デジタル“完全版”」。ほぼ完全に公開当時と同様の姿に戻せた、という自負から、単なる“復元版”ではなく“完全版”という名称に決めたのだという。以前ポストプロダクション業務に携わった経験があるという岩崎氏。「キズやノイズに対する目は厳しいと自負していますが、デジタル復元されたフィルムは私の目から見ても素晴らしい映像だと感じました」と語る。そしてこの甦った映像の美しさを家庭で余すところなく楽しめるのはブルーレイ、という考えから、ブルーレイのリリースに至ったのだという。
「羅生門」を撮影した宮川一夫カメラマンは「白と黒と鼠、この3つの色でこの映画を撮りたい」と語り、鼠色で無限の色調を描き出そうとした、というエピソードがある。「DVDならばマッハバンドが生じてしまうようなシーンでも、ブルーレイであれば豊かな階調を再現できます。宮川さんが撮影された“色彩を感じるモノクロ”の世界を堪能していただけると思います」。
この映像への自信は、設定メニューにディスプレイの画質調整画面を用意したというこだわりぶりにも表れている。「より映像の素晴らしさを体験していただくために、是非『黒』と『白』のコントラスト、そして『階調表現』を適切に調整して楽しんでいただきたいと考えたのです」(岩崎氏)。お手持ちのシステムのためのリファレンスソフトにもなるのではないだろうか?
また「デジタル復元によってどれだけ美しくなったかを感じていただくためには、復元前の映像と見比べることが一番分かりやすい」との考えから、特典映像に「デジタル復元比較検証映像」も収録。デジタル復元前後の違いを比較視聴できるのも嬉しい要素だ。
このように全編に渡ってこだわりが詰まったBD版「羅生門」は、現在鋭意オーサリング作業中。映画ファンはもちろん、オーディオ&ビジュアルファイルにとっても貴重な1枚になるだろう。
さて、角川映画といえば、角川映画・大映・日本ヘラルド映画などの1,600タイトル以上の名作を保有する映画会社。「多数の貴重なタイトルを持っているだけに、それを保存し、受け継いでいかなければいけないという使命感があります」との岩崎氏が説明するとおり、同社は2004年から「原版保存プロジェクト」を立ち上げ、フィルムの状態チェックと保存を行っている。それら貴重なアーカイブのなかから今後の名作ブルーレイ化にも意欲を示す。主に「新作」と「旧作」の2つの軸で、注目のタイトルを逐次リリースしていく予定とのことだ。
このたび、本作のフィルム復元を行ったアカデミー・フィルム・アーカイブのポゴゼルスキー氏と、復元された本作のブルーレイ化に携わった角川映画(株)ビデオ事業部 ビデオ制作グループの岩崎大介氏にインタビューする機会を得た。「フィルムの復元」に、そしてそれを元にした「ブルーレイ化」にあたっての詳細なお話を伺えたので、その内容をお伝えしよう。
■ポゴゼルスキー氏が語る「羅生門」デジタル復元プロジェクト− フィルム復元の持つ意義とは

アカデミー・フィルム・アーカイブ マイケル・ポゴゼルスキー氏
今回のプロジェクトが持つ意味はなんと言っても「フィルム自体を復元したこと」にある。「“デジタルリマスター”と“フィルム復元”の持つ意味は違います」と語るポゴゼルスキー氏。「というのも、フィルムとデジタルデータではもともとの情報量が違います。現在最も高画質な記録が可能なHDCAM SR テープでも、その解像度は1920×1080。一方、フィルムの持つ解像度は2K以上です。映画館での上映はもちろん、DVDやブルーレイ、そしていずれ登場するであろう更なるハイクオリティフォーマットでソフトを作る大元となるフィルムを復元することは、名作をより長く後世に残すことにつながるのです」。
復元作業は、オリジナルネガを4K解像度でスキャンしデータ化することから始まった。データはいったん2K解像度に変換され、デジタル復元ソフトでキズ消しなどの作業を施す。そして最後に4K解像度に戻し、新しいネガを作成する、という流れだ。
「2K解像度で作業を行ったのは、『羅生門』の場合オリジナルネガが失われており、1962年につくられたプリントを元に作業を行ったため。このプリントの持つ解像度が2K相当だったからです」(ポゴゼルスキー氏)とのこと。「ただし、2Kの映像を2Kのままスキャンするよりも、4Kでスキャンしたほうがより詳細なデータが得られます。また、これには諸説あるのですが、そうしてできた2K解像度の映像を2Kのまま上映するよりも、4Kにアップしたほうが見た目上画質が向上するのです」ということだ。
「デジタル復元ソフトでは、隣接するコマとの情報の差異を検出して自動補修を行うのですが、木の葉や煙など動きが速いものは前後の情報が少ないため補完が難しい。そして雨はずっとフィルム上に表示されるため、ノイズとして検出されてしまう……羅生門はそういったシーンが多かったので修復は非常に大変でした」と修復の苦労を語るポゴゼルスキー氏。ソフトによる自動修復が難しい部分は、多くの職人による手作業で修復を行ったという。
「鮮明で質の高い映像を楽しめるブルーレイが登場したことで、よりフィルムに近づいた美しい映像を家庭で楽しめるようになったのは、フィルム保存者としても大変素晴らしいことだと感じています。ブルーレイという新しいフォーマットで古い映画が発売され、みなさんのお手元に届くのは素晴らしいこと。是非お楽しみいただきたいと思います」
■岩崎氏が語るブルーレイ「羅生門」の魅力

角川映画 ビデオ事業部 ビデオ制作グループ 岩崎大介氏
今回発売されるのは「羅生門 デジタル“完全版”」。ほぼ完全に公開当時と同様の姿に戻せた、という自負から、単なる“復元版”ではなく“完全版”という名称に決めたのだという。以前ポストプロダクション業務に携わった経験があるという岩崎氏。「キズやノイズに対する目は厳しいと自負していますが、デジタル復元されたフィルムは私の目から見ても素晴らしい映像だと感じました」と語る。そしてこの甦った映像の美しさを家庭で余すところなく楽しめるのはブルーレイ、という考えから、ブルーレイのリリースに至ったのだという。
「羅生門」を撮影した宮川一夫カメラマンは「白と黒と鼠、この3つの色でこの映画を撮りたい」と語り、鼠色で無限の色調を描き出そうとした、というエピソードがある。「DVDならばマッハバンドが生じてしまうようなシーンでも、ブルーレイであれば豊かな階調を再現できます。宮川さんが撮影された“色彩を感じるモノクロ”の世界を堪能していただけると思います」。
この映像への自信は、設定メニューにディスプレイの画質調整画面を用意したというこだわりぶりにも表れている。「より映像の素晴らしさを体験していただくために、是非『黒』と『白』のコントラスト、そして『階調表現』を適切に調整して楽しんでいただきたいと考えたのです」(岩崎氏)。お手持ちのシステムのためのリファレンスソフトにもなるのではないだろうか?
また「デジタル復元によってどれだけ美しくなったかを感じていただくためには、復元前の映像と見比べることが一番分かりやすい」との考えから、特典映像に「デジタル復元比較検証映像」も収録。デジタル復元前後の違いを比較視聴できるのも嬉しい要素だ。
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