IMAX画角で溺れる!ノーラン監督の最新作『オデュッセイア』をIMAXで観た!
全編IMAXフィルムカメラにて撮影した圧倒的映像体験
『オッペンハイマー』や『ダークナイト』など、数々の話題作を送り出してきたクリストファー・ノーラン監督の『オデュッセイア』が、いよいよ9月11日(金)に日本公開される。先行して公開された74か国でも高い評価を集め、本年度実写映画ナンバーワンの大ヒットスタートを飾った作品だ。
本作の一番の話題は、全編IMAXフィルムカメラによる撮影が行われていることだろう。ノーラン監督のIMAX愛は映画ファンにはよく知られているし、実際に『オッペンハイマー』等の過去作でも部分的にIMAXカメラで撮影したカットが盛り込まれていた。『ダークナイト』の冒頭、銀行襲撃シーンの俯瞰映像に衝撃を受けた方も多いはずだ。
参考までに、IMAX撮影では70mmフィルムを水平方向に走らせ、通常の3倍の面積(5パーフォレーションのところ、15パーフォレーション)で撮影を行っている。画角は1.43:1で、対応スクリーンを備えた劇場なら、視野全体を覆うほどの映像体験が可能だ。
最新のIMAXキーリー・フィルムカメラで撮るための工夫
このようにIMAXはフィルムのサイズが大きいこともあり、それだけ高精細な映像を撮影できるが、一方で従来のIMAXカメラは動作音が大きく、会話シーンの同録ができないほどだったそうだ。
この点について『オデュッセイア』では、動作音を抑えた最新IMAXキーリー・フィルムカメラを採用することで、全カットでの撮影を実現している。
他にもカメラ本体が大きく、正面から俳優を捉えるカットでは役者同士が向き合うことができない(立ち位置をカメラが占領してしまう)という問題もあった。ここについても、レンズの横に取り付けたペリスコープシステム(二重鏡)に相手の顔を映し、視線の違和感をなくすといった、まさに撮影現場で生み出されたと思しき対策が取られている(一部の映画サイトで撮影時の様子が確認できる)。
上記のようにIMAXフィルムカメラでは通常の3倍の面積で撮影を行っているので、フィルムの使用量も多い。資料によると『オデュッセイア』では210万フィート(約640km)のフィルムを使ったとかで、しかもフィルムのマガジンはひとつ約3分しか撮影できないので、交換もかなり頻繁に行われた模様だ。
そこまで“品質”にこだわった作品づくりを実践するなんて、さすがノーラン監督。4K番組製作はコストがかかるとか言っているどこかの国のテレビ局に喝を入れてもらいたいくらいだ。
グランドシネマサンシャイン池袋のIMAXスクリーンで観た!
今回、そんな『オデュッセイア』の試写会に参加することができた。しかも会場は、日本最大級のIMAXスクリーンを備えたグランドシネマサンシャイン池袋で、期待MAXの状態で会場に足を運んだ次第だ。
題名からもおわかりの通り、この作品は古代ギリシアの吟遊詩人ホメロスの『オデュッセイア』をベースにしている。トロイア戦争終結後の、英雄オデュッセウス(マット・デイモン)の帰国の旅路を、彼を十数年待ち続ける妻のペネロペ(アン・ハサウェイ)と息子エレマコス(トム・ホランド)の苦悩を交えながら描いている。
グランドシネマサンシャイン池袋のIMAXシアターのスクリーンは幅25.8m×高さ18.9mで、画角は1.365:1。このスクリーンならノーランが目指した映像をほぼそのまま鑑賞できるはずで、確かに説得力は半端ない。
以前にもこのスクリーンで、IMAXで撮影された作品を観たことはあるが、あるカットでは映像がスクリーンいっぱい投写され、別のカットでは横長に戻ったりして、“なぜこのシーンをIMAXで撮影したのか?”といった風に監督の意向を推測してしまい、逆に作品にのめり込めないこともあった。しかし『オデュッセイア』ではそんな画角変動(?)もないので、IMAX大画面の恩恵にひたすら浸っていられる。これは存外心地良い。
172分の上映時間いっぱい、IMAX大画面の恩恵に浸る
例えば、冒頭で海岸に置かれたトロイの木馬を見下ろすシーンでの奥行き感、半分砂に埋まった木馬の絶妙なアングルなど、シネスコとも違う大画面の楽しさを感じさせてくれる。
木馬は後半のトロイア陥落シーンで全貌が写し出されるが、そこでの今にも動き出しそうな躍動感のあるフォルム、IMAX画角を活かした画面構成など、ひじょうに印象的に使われている。他にも1つ目巨人キュクロプス(ビル・アーウィン)が覆いかぶさってくる際の圧迫感や暗い洞窟の不気味さ、息苦しさの再現もIMAX画角ならではだ。
一転してオデッセウスが海の女神カリュプソ(シャーリーズ・セロン)と過ごす浜辺は透明感に溢れ、女神の美しさもあって作品の中でもひときわ記憶に残るカットになっている。写し出されるのは海と砂浜、難破船の破片くらいで、映像要素が多いわけではないのに画面の密度が高く感じられるのはIMAX撮影だから、だろうか。
12.0chサラウンドは嵐の海での風や波が重低音たっぷりに押し寄せるし、巨人の洞窟やイタケの石造りの宮殿内部の残響なども自然に再現されている。カリュプソの悲しげな声、ペネロペの怒りを込めた発声などもクリアーに迫ってくる。
『オデュッセイア』は、“ビジュアルで魅せる”ノーラン作品
ストーリーも単なる冒険譚・活劇に留まらず、登場人物それぞれの思いを丁寧に描いている。特に自身の知恵が引き起こした惨劇を目の当たりにしたオデュッセウスの苦悶は、前作のオッペンハイマー博士に通じるものもあり、彼の表情がIMAXスクリーンに大写しになることで深い悲しみが伝わってくる。
本作を観て感じたのは、172分を通してすべての映像がとても美しかったこと。
個人的にはノーラン監督の作品には、ふたつの傾向があると感じている。いずれも作品としての完成度は高いのだが、ノーランの狙いとしてストーリーを語りたいものと、ビジュアルで魅せたいものがあるように思うのだ。本作はもちろん“ビジュアルで魅せたい”作品で、全編をIMAXフィルムで撮影したのもその現れではないだろうか。
本作は9月11日(金)の全国ロードショーに先駆け、9月4日(金)〜10日(木)にIMAX先行上映も行われる。さらにDolby Cinemaなどのプレミアムラージフォーマットを含めて6種9バージョンでの公開も決定している。ぜひお近くの一番大きなスクリーンで堪能していただきたい。
●作品紹介『オデュッセイア』

■監督・脚本:クリストファー・ノーラン ホメロス「オデュッセイア」に基づく
■製作:エマ・トーマス、クリストファー・ノーラン
■エグゼクティブプロデューサー:トーマス・ヘイスリップ
■撮影:ホイテ・ヴァン・ホイテマ
■プロダクションデザイン:ルース・デ・ヨンク
■編集:ジェニファー・レイム
■音楽:ルドウィグ・ゴランソン
■VFXスーパーバイザー:アンドリュー・ジャクソン
■特殊効果スーパーバイザー:スコット・R・フィッシャー
■衣装デザイン:エレン・マイロニック
■出演:マット・デイモン、トム・ホランド、アン・ハサウェイ、ロバート・パティンソン、ルピタ・ニョンゴ、ゼンデイヤ、シャーリーズ・セロン
■公開日:9月11日(金)全国ロードショー
■配給:ビターズ・エンド ユニバーサル映画
photo by Melinda Sue Gordon (c)Universal Studios. All Rights Reserved.

