「LP12」アップグレード計画。SMEのトーンアームに交換したら、もっと音楽が楽しくなった!
LINN(リン)のアナログプレーヤー「LP12」を愛用しているクラシック音楽ファシリテーターの飯田有抄さん。使い初めてから3年を経て、今度はトーンアームが気になってきました。ということで、銀座のオーディオショップ・サウンドクリエイトにサポートいただき、SMEトーンアームの使いこなしにチャレンジです!
LP12を愛用してきた3つの理由
私がLINN(リン)のレコードプレーヤ「LP12」を愛用し始めてから、まもなく3年になります。エントリーモデルのプレーヤーから「LP12 Mechanics Retro Walnut」 に買い換えた経緯については、以前にまとめましたが、LP12を選んだ満足感は今なおまったく薄れていません。
LP12の魅力を3つ挙げるとしたら、次のポイントになるでしょうか。
1.モジュールを組み上げて構成されるシステム
LP12は、ターンテーブル、サブシャーシ(アームボード一体型)、ベースボード、電源ユニット、トーンアームなどのモジュールを、それぞれのラインナップから自由に選んで構成できるシステムです。
今回私がアップグレードした「サブシャーシ」ひとつとっても、Standard、KORE、KEEL SEの3種類があり、段階的にステップアップさせることができます。
2.フローティング構造による優れた制振性
LP12の要と言えるのが、精度の高い回転の軸受けと、トッププ
LP12の⽣き⽣きとした⾳質を⽀
3.コンパクトで美しいデザイン性
コンパクトなサイズ感で、温もりある木枠がなんとも美しいプロダクト。部屋に置くと、つい眺めたくなるような、飽きのこないデザインもLP12の大きな魅力です。
こうしてまとめてみたものの、実際に購入するまでは1と2の要素については、「なんとなく」の理解しかありませんでした。
買ってからいろいろと勉強して、やっと仕組みのオリジナリティや利点が見えてきたところです。そもそも1と2は外からは見えないですし、各モジュールを交換するのに気軽にできる仕組みでもお値段でもありません……。
そんな私ですが、ついに3年目にして踏み切りました。モジュールのステップアップです!今回交換したのは、前述の「キモ」であるサブシャーシ、そしてトーンアームです。
SMEのユニバーサルアームを使いたい!
そもそも自分のレコードプレーヤーを持つなら「ユニバーサルアーム」と決めていました。
あるとき、モノラル・レコードをモノラル専用カートリッジで聴き、その引き締まった肉厚のサウンドに心底感動し、「これはもう戻れないな」と。普段は圧倒的にステレオ録音を聴く割合が高いですが、「いざという時」に自分でスッとカートリッジ交換がしたい。
そんな私の希望に応えてくれたのが、銀座のオーディオショップ・サウンドクリエイトさん。
現行LP12の純正アームはすべてストレートアームのため、LP12に取り付けられるユニバーサルアームとサブシャーシを中古製品から組み合わせ、比較的導入しやすい価格プランで組んでくださいました! それが3年前のことです。
そのままの構成でも音質的に満足はしていたのですが、ある時ちょっとしたトラブルが。いくつかのカートリッジを使用していく中で、レコードの盤面をうまくトレースしないことがあったのです。
針圧やインサイドフォース・キャンセラー、カートリッジ重量など原因を探り、調整を重ねた結果、最終的な原因は、アームリフターがわずかに当たっていたという盲点でした。 リフターをほんの少し下げたら、たちまち解決。
「なぁんだ!これで済んだ」のですが、ふと気持ちが変わりました。そろそろステップアップしてみたいかも。アームを替えてみようかな……?
今回サウンドクリエイトさんがご提案してくださったのが、イギリスの老舗メーカーSMEの、ユニバーサルアームとして評価の高い「3010-R」でした。
1981年発売ですから、もはやヴィンテージと言えるかもしれません。しかしLINNが純正アームを開発する前は、LP12にはSMEのトーンアームが標準搭載されていたとのこと(編集部注:当時はSME 3009)。
SME 3010-Rは精度が高く、幅広いカートリッジに対応し、明瞭で安定感のある音像で定評のあるアーム。ついでに見た目も美しい。
そして重要なのがここから。
LINNのサブシャーシには、SME専用サブシャーシがあるのです! これまで私のLP12につけていたサブシャーシは、はアルミ(シャーシ部分)とMDF(アームボード部分)の組み合わせ。しかしSME KOREは厚みのあるアルミ一体型です。
LP12が得意とする制振構造の要がサブシャーシですから、「アーム交換」を目的とした今回の選択が、結果的にサブシャーシの強化という嬉しいアップグレードにもつながりました!
LP12と親和性の高いユニバーサルアームと、より強固なサブシャーシを備えた“マイLP12”の完成です。
SME「3010-R」調整のポイント
サウンドクリエイトさんに交換作業をお願いし、納品時にSME 3010-Rの針交換の際のセッティング方法を習いました。お持ちの方や、導入をご検討のかたのご参考までに。
1.インサイドフォース・キャンセラーの錘をはずす。
アーム左側に吊り下がる小さな錘が、天蚕糸の輪でアーム上部の棒状パーツに掛けられているのでそっと外し、アーム左側の滑車から外さないようにそっと置く。
2.アームのゼロバランスを取る。
カウンターウェイト右側に定規状パーツの錘を、ネジを緩めて一番奥まで移動。アーム後端の調整リングを回してカウンターウェイトを前後に動かし、アームが水平になる位置(ゼロバランス)を探る。
3.針圧調整
水平が取れたら、アームをアームレストに戻し針圧調整を行う。定規状パーツのメモリは、奥から1.0g、2.0g、3.0g、4.0gのところが太く刻まれている(間に0.25gの刻みあり)。カートリッジの針圧に合わせて、適切な位置へ。
4.インサイドフォース・キャンセラーをかける
天蚕糸を元の棒状パーツに戻す。メモリは手前から1.0g、2.0g、3.0g、4.0gの箇所が太く赤く刻まれている。適切な位置に天蚕糸をかける。
5.角度調整
トーンアームをレコード盤の外周に置いた際に、インサイドフォース・キャンセラーの天蚕糸と、4の棒状パーツとが直角になるように、アーム基部左側のネジを緩めて角度を合わせ、固定する。
深く太めでコクのある音楽に。愛聴盤を聴き直す幸せ
交換してみると、サブシャーシの安定性によるものか、これまでよりもS/Nが向上し、音の輪郭がより引き締まり、オーケストラの響きは精細に、ポップスやジャズは立体感豊かに楽しめるようになりました。静けさから音が立ち上がる感触がより明瞭になったのも嬉しいポイントです。
システムをステップアップさせると、以前からの愛聴盤をあれこれと聴き返したくなりますよね。
グルダとチック・コリアのピアノ、アーノンクール指揮、アムステルダム・コンセルトヘボウ管によるモーツァルトの《2台のピアノのための協奏曲》は、2人の奏者の掛け合いもオーケストラとの対話も闊達で、ホール残響はまろやかに響きます。
ドナルド・フェイゲンの名盤『ナイトフライ』では、ドラムやギターのパンチ、コーラスが真っ直ぐ届く気持ちよさが際立ちました。
洗練され、精密に音を届けながらも、線が細くなることはなく、深く太めでコクのある音楽を届けてくれます。今回のステップアップは、大成功と言えそうです!

