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【連載】ガジェットTIPSリターンズ

昭和の子供が夢中になった「鉱石ラジオ」。近い将来聴けなくなるかも?

公開日 2025/08/23 06:40 海上 忍
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平成、令和生まれにはピンとこないかもしれませんが、昭和の子どもは「雑誌の付録」を毎月楽しみにしていたものです。厚紙を組み立てる工作系もあれば、化学反応を見る観察系、スタンプやネームパンチャーなどの実用系...将来ガジェットファンとなる子どもが喜んだ付録は、電池なしでラジオが聴ける「鉱石ラジオ」です。

Image : シャンテック電子

鉱石ラジオとは、アンテナと同調回路、ゲルマニウムダイオードなどの鉱石を用いた検波器、クリスタルイヤホンで構成されるラジオです。部品点数が少ないうえに乾電池などの電源を必要としないため、学習教材として雑誌の付録とするにはピッタリだったのです。

なぜ鉱石ラジオが電源を必要としないかというと、それは「ラジオの聴取に必要な電力を電波そのものから得ているから」。電波から得られる電力はごくわずか、スピーカーや一般的なイヤホン(マグネチックイヤホン)から音を出すとなると、電源を要する増幅回路(アンプ)が必須になりますが、微弱電力でも駆動できるクリスタルイヤホンを使えば音を聴けるというわけです。

しかし、あと数年で鉱石ラジオを聴くことは難しくなるかもしれません。その原因は「AM局の運用休止」。AMラジオ放送事業者が維持コストの大きいAM局を休止し、より負担が小さいFM局やインターネット配信へ転換する方針を固めているのです。

総務省は、一定期間内にAMラジオ放送を休止できるよう特例措置を設けました。第一期特例措置適用期間(2023年11月1日〜2025年1月31日、2026年10月31日まで延長中)に休止中の民間AMラジオ放送事業者は13社/34局、2028年秋には全国的な民放のAM停波が見込まれています。

鉱石ラジオはAM放送向きで、電波が弱いFM放送には適していません。すべてのAM放送局が停波するわけでないにせよ、数年後には鉱石ラジオの音源であり電源でもあるAM放送の電波を受信しにくくなる、選択肢が少なくなることは確かなようです。

 

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