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【第15回】ミヤザキタケルの気軽にホームシネマ

映画アドバイザーが推す週末サブスクこの1本。『空白』

2022/06/17 ミヤザキタケル
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サブスクで映画を観ることが当たり前となりつつある昨今、その豊富な作品数ゆえに、一体何を観たら良いのか分からない。そんな風に感じたことが、あなたにもありませんか。本コラムでは、映画アドバイザーとして活躍するミヤザキタケルが水先案内人となり、選りすぐりの一本をあなたにお届け。今回は2021年の公開作『空白』をご紹介します!

『空白』(2021年・日本)
(配信:Netflix)

『空白』(C)『空白』製作委員会

『ヒメアノ〜ル』『神は見返りを求める』の吉田恵輔監督作。スーパーで万引きしようとしたところを店長の青柳(松坂桃李)に見つかり、追いかけられた末に車に轢かれて女子中学生が死亡。娘が万引きしようとしたことを受け入れられない父親の添田(古田新太)は、娘の潔白を証明すべく、青柳をはじめとした関係者を厳しく追及していくのだが…。

(C)『空白』製作委員会

生じた理不尽があるのなら、誰だって怒りや悲しみをぶつけたり吐き出すための矛先を欲してしまう。しかし、本作において生じる理不尽には、然るべき矛先が見出しにくい。万引きしようとした添田の娘が悪いのか、彼女を取り逃した青柳やスーパーの方針に穴があったのか、そもそも添田家の親子関係に問題があったのか…。

(C)『空白』製作委員会

怒りに身を任せ矛先を見出そうと奔走する添田。添田に付き纏われ、マスコミに掻き乱され、次第に追い詰められていく青柳。そんな二人の泥沼の人間模様は、当事者にでもならない限り突き詰めて考えないこと、容易に答えなど得られないことに思考を巡らす稀有な時間を与えてくれることだろう。正しさとは何なのか、救いは一体どこにあるのか。多くの問いを投げかけられるのと同時に、キツく胸締め付けられる力作です。

(C)『空白』製作委員会
※本稿記載の配信サービスは執筆時点のものになります。

ミヤザキタケル
1986年生まれ、長野県出身。2015年より「映画アドバイザー」として活動を始める。 WOWOW・宝島社sweet・DOKUSOマガジンでの連載のほか、渋谷クロスFM・Voicy・各種WEB・雑誌・メディア等で映画を紹介。イベント登壇、映画祭審査員、映画のカメオ出演、BRUTUS「30人のシネマコンシェルジュ」など幅広く活動中。

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