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新たな開発拠点に展開

ヤマハの歴代名機が勢揃い、浜松に完成したミュージアム 「イノベーションロード」を体験!

2018/12/18 鴻池賢三
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本年5月、ヤマハは浜松本社地区に新たな研究開発拠点「イノベーションセンター」を開設。これに伴い、1階部分には同社の製品や事業の歴史を展示で紹介する企業ミュージアム「イノベーションロード」も今年7月に設け、一般来訪者も予約すれば自由に見学できる。

約130年前のオルガンから懐かしいAV機器、最新のエレクトロニクス、演奏できるピアノや楽器コーナーまで、ヤマハの歴史、日本産業の歴史や文化が体感できる空間で、音楽やオーディオに興味があるであろうファイルウェブの読者なら、一度は訪問をおすすめしたい充実したスポットだ。今回は、「イノベーションロード」の魅力を写真で紹介する!

浜松本社地区に新たに建設された研究開発拠点「イノベーションセンター」


ヤマハの歴代製品を展示するミュージアム「イノベーションロード」をレポート

楽器、スポーツ、オーディオの「ヤマハ株式会社」

「ヤマハ」と聞くと、バイクや船、そしてエンジン、いわゆる発動機を思い浮かべる読者もいると思うが、これは「ヤマハ発動機株式会社」の領域。オーディオや音楽分野でお馴染みの「ヤマハ」は正式には「ヤマハ株式会社」で、「ヤマハ発動機株式会社」とは異なる企業である。

詳細な歴史は公式サイト「ヤマハ ブランドと歴史」(https://www.yamaha.com/ja/about/history/)を参照頂きたいが、源流は同じで、1955年にオートバイ部門が「ヤマハ発動機株式会社」として分離し、現在に至っている。

「イノベーションロード」はヤマハ株式会社(以降ヤマハ)の施設で、同社が扱う楽器、ホームオーディオ、プロオーディオ、スポーツ用具がメインで展示されている。


ヤマハが誇る様々な楽器がお出迎え

入口にはドーンと楽器が並んでお出迎え。プロジェクションマッピングを利用し、鍵盤を叩くと模様が動くなど、未来を感じさせるコンセプトピアノが目を惹く。直ぐにでもアーティストのプロモーションビデオに登場しそうで夢がある。

プロジェクションマッピングされた鍵盤がお出迎え

一歩踏み込むと製品のピアノがズラリ。一千万円級のグランドピアノには何やら注意書きのサインが立ててあり、当然「触らないでください」かと思ったら、「演奏してください」の太っ腹。記念にピアニスト風の写真をパチリ。正装して行けばインスタ映え間違い無しだ。

高級ピアノを実際に演奏することもできる


「触らないでください」かと思ったら、「演奏してください」の表示

実の所、筆者は楽器好き。過去、フルート、クラシックギター、キーボード、リリコン(ヤマハのウィンドコントローラー)、DTM関連で散財し、現在も電子ピアノとエレキギターは手元に置いている。演奏の腕前については聞かないで欲しいが、眺めるのもまた一興だ。

エレキギターコーナーではさらにテンションアップ。高中正義でギターに興味を持った筆者にとって、「SG」は購入しなかったものの憧れの存在。名曲として知られるのは「Blue Lagoon」だが、筆者的には「Turquoise Summer」が気に入って恐ろしいくらい練習したのが懐かしい。

ギターの腕前を披露する鴻池氏


エレキギター/ベースも多数展示。名機がずらりと並ぶ

金管楽器もズラリと並んで壮観。楽器店でもあまりお目に掛からない巨大な白いホーンが美しいスーザホンも展示。しかも肩に担いで記念写真もOK。ここもインスタポイントとして押さえておきたい。

金管楽器も勢揃い。ブラスバンドにとってもヤマハは不可欠な存在だ


スーザホンと記念撮影できるコーナーも

ほか、楽器関係で特に気に入ったのは自動演奏ピアノ「Disklavier ENSPIRE」の高級モデル「C3X-ENPRO」(希望小売価格:3,800,000 円/税抜)。HiFiオーディオの終着点が原音再生なら、生楽器の自動演奏は少し軸が異なるが、ひとつの選択肢ではないだろうか?

またヤマハのピアノは、サラ・マクラクランやボブ・ジェームスなど一流アーティストのオリジナル演奏データも利用できるとのこと。そう、一流アーティストが自宅で生演奏してくれるのだ。音も素晴らしく、冗談抜きで筆者欲しいモノリストの1番に躍り出た。本物のビリー・ジョエルを自宅に迎えるのは絶対に無理だが、このシステムなら可能性がある。夢のある技術ではないか!!

自動演奏機能を備えたピアノ。一流アーティストの演奏データも「再現」できる


ヒストリーウォークで懐かしの名機に遭遇

創業当時のオルガンから近代のオーディオや楽器が年代順に並ぶコーナー。さすがに古いオルガンは馴染みがないので、ありがたくも「はい、そうですか」くらいにやり過ごし、タイムマシンに乗った気分でどんどん近代に近づく。

ヤマハの歴史のスタートとなった貴重なオルガンも展示


ヤマハの歴史を彩る様々なジャンルの製品が年代ごとに並ぶ

1970-1990年コーナーでは懐かしの3ウェイブックシェルフに遭遇。この頃、多くのメーカーから同構成のスピーカーが多数発売され、オーディオ業界が最も活況だった時期だと記憶している。近年はまた3ウェイが復活しつつあり、ヤマハの「NS-5000」も大人気だ。AVアンプ「DSP-A1」は、DTSデコード対応など、デジタルサラウンド時代の先駆けとして記憶に残っている名機のひとつであり、実物を見ると古い友人に会ったような嬉しさを覚えた。デジタルモノは新しいに限るが。

オーディオ黄金時代の名機も多数並んでいる


デジタルサラウンドの先駆けとなったAVアンプ「DSP-A1」

2003年のデジタルオーディオサーバー「MCX-1000」も確かに覚えている。この時点で「Music CAST」のロゴや「gracenote」のロゴが入っていたとは!ここ最近、ネットワークオーディオが流行だが、ハイレゾや配信を除けば源流はこの辺りなので、オーディオファンは雑学として覚えておくと良いだろう。

2003年に発売されたオーディオサーバー「MCX-1000」は時代を先取りしていた

楽器では「DX7」に釘付け。筆者のようなアラフィフのおじさんにとっては、YMO、坂本龍一、DX7は誰もが忘れられないはず。歴史的には、この辺りから電子楽器が音楽に多大な影響を与えたと思う。単にモノを作るだけでなく、新しい文化を生み出すヤマハの偉業のひとつと言っても良いだろう。

「DX7」に釘付け!


最新鋭技術の展示も多数。業務用機器も勢揃い

「イノベーション・ラボ」コーナーは、開発ストーリーや技術要素を展示。中でも気に入ったのが、カジュアル楽器を名乗る「Venova」(ヴェノーヴァ)。樹脂製でリコーダーのように扱いが簡単でありつつ、約30年前に発掘された理論を基にヤマハの技術力を加え、ソプラノサックスのような豊かな音色が出させるという新楽器。伝統も大切だが、技術で多くの人々により手軽に楽器演奏の楽しみを提供しようとする姿勢に感心。聞けば価格も1万円前後とのことでさらに感心し、その場でポチってしまいたいくらいだった。

ハイエンドスピーカー「NS-5000」の技術要素も展示


平面スピーカー「Flatone」のプロトタイプをデモ


鴻池氏が手に持ったセンサーの位置に合わせて定位が変化するヘッドホンサラウンドのデモ


「Venova」をその場でポチろうとする鴻池氏。動画レポートは近日公開予定?
念のため、奥さんの許可を得て翌日発注。気分は既にKenny Gで、近いうちに何処かでお披露目したい、と思っている。

ほか、業務用のミキシング・コンソール、いわゆる「卓」を展示したエリアもスペースが割かれ、民生機と異なる雰囲気を醸し出している。その奥に設置された、ピアノ、ベース、ドラムの自動演奏と映像を融合した「バーチャル」も近未来的。音も「生演奏」なので迫力満点。体験する価値のある展示だ。

プロスタジオ用の業務用機器も多数展示。その奥では自動演奏と映像を組み合わせたバーチャルミュージシャンの演奏も


DTM関連の歴代モデルも展示!


世界中のスタジオで標準機となった“テンモニ”「NS-10M」も


楽器、音楽、そしてオーディオの関係を再考

今回紹介した「イノベーションロード」では、楽器、音楽、そしてオーディオの関係を再考するにも良い機会になった。特にヤマハオーディオが「クリアな音」と高く評価される理由も、思想および技術的に楽器や音楽への造詣が深く、感性に関わるであろう部分が土台になっているに違い無い。エレクトロニクスメーカーが同様のアプローチで迫るのは難しく、ましてや新興のデジタル技術企業は追いつけない領域に感じた。

もちろん、美しい楽器を眺めるだけでも楽しめる。Phileweb読者が好みそうな歴史的オーディオ機器に加え、新旧の楽器も豊富にラインナップ。ファミリーで訪れても楽しめるだろう。楽器を手にして写真撮影も是非!

(鴻池賢三)


施設情報
ヤマハ企業ミュージアム「イノベーションロード」
(入場無料・要予約)

所在地:
〒430-8650 静岡県浜松市中区中沢町10番1号 ヤマハ株式会社本社事業所21号館内

開館日時や予約方法など詳細は、公式サイトを確認のこと。

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