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改めて注目を集める理由とは

なぜ、いま「アナログレコード」なのか? “古くて新しい”スタイルが人を惹きつける

2016/04/15 山之内 正
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再生機器でも、レコード盤で音が大きく変わる
その違いを楽しめるのがアナログレコード



レコードはデジタル音源とは比較にならいないほど、音の違いが生まれる要素がたくさんある。デジタルオーディオの視点から見ればそこがアナログの弱点とも言えるわけだが、デジタルは音が均質化してしまい、面白みが少ないという意見にもそれなりの説得力がある。

音の違いを存分に楽しみたいのなら、レコードはまさに最適なメディアと言っていい。レコード盤の製造プロセス自体がアナログ手法の積み重ねで、カッティングやプレスなど、音が変わる要素がたくさんあるし、旧録音の場合はレーベルごとの音の違いも小さくない。同じ音源でもマスターの種類やプレスした国で音がガラリと変わることも珍しくないので、マニアックなレコードファンは音の良い盤の探求に余念がなく、掘り出し物があると聞けばレコードショップに出かけて、自分の耳と目で確かめる。「アナログ・アンティーク」の楽しみはデジタルでは真似のできないもので、とても奥が深いのだ。

再生時にはプレーヤーやカートリッジで劇的に音が変わる。フォノイコライザーアンプやトランスなど、音を増幅するアナログ特有の機器も選択肢が多く、それらの組み合わせを駆使して好みの音に追い込むこともできる。レコードプレーヤーの新製品が複数登場するなど、再生機器のバリエーションが広がってきたので、個性豊かな音を楽しむ環境は以前とは比較にならないほど充実している。


レコードという「モノ」を介して人と人のつながりも生む

最後に、人と人をつなぐメディアとしてのレコードの価値にも注目したい。ネットのオンライン・ミュージックとは異なり、レコードという「モノ」を介した直接的なつながりが生まれる良さがアナログにはあり、「リアルなストアでフィジカルなディスクを手に入れる」ことの面白さに満ちている。「レコード・ストア・デイ」のように、レコードショップ主導で音楽ファンとつながるイベントも人気が高く、その機会を活かして新譜をリリースするミュージシャンも増えてきた。

実体感という貴重な感触を失って久しい音楽の世界にもう一度活気を取り戻す可能性を秘めたアナログレコードは、リターナーもニューカマーも区別なく楽しめる「古くて新しい」楽しみなのだ。

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