「Google TV」は成功するか

編集部:風間雄介
2010年10月13日
ついに「Google TV」が姿を現した。米Sonyが同機能を内蔵した液晶テレビとBDプレーヤー(関連ニュース)を、Logitechは内蔵STB「Revue」(関連ニュース)を、それぞれ北米で10月に発売する。

実機に触れたわけではなく、各製品の機能やサービスを見ただけだが、現時点では、Google TVが成功するかどうか不透明と感じた。ネットの力でテレビをさらに便利にするという発想の意義は大きいと思うが、現段階のGoogle TV対応機器が、他社製品を凌駕するほど「スマート」かと言うと、首肯しがたいというのが率直な印象だ。

そう感じる大きな理由の一つは、現時点でGoogle TV対応アプリがまだ少ないことだ。

LogitechはNapsterなどのアプリのほか、独自開発のDLNA対応アプリ「Logitech Media Player」も用意。DLNAサーバー内の映像や音楽、静止画などを再生することができる。ただしDLNAクライアント機能は、最新の薄型テレビでは当たり前の機能で、とりたてて強調すべきものでもない。

一方のソニーはCNBC/Napster/NBA/Netflix/Pandora/Twitter/YouTubeの各アプリがプリインストールされ、ほかには同社独自のVODサービス「Video On Demand powered by Qriocity」もアプリ化し搭載しているようだが、いずれにしても数は少ない。これではApple TVやRoku、Boxeeなどの競合製品と代わり映えがしない。

Google TVの成功に、諸手を挙げて賛同できない理由はほかにもある。

Google TV対応機器は、他社製品との差別化要素として、高速表示のフルブラウザーを搭載していることや、テレビ番組やDish DVRで録画した番組、ウェブサイトのシームレスな検索が行える点を挙げている。

だがブラウザー機能については、PC向けに最適化されたサイトを見るだけなら、ソファの傍らにタブレット型デバイスかノートPCを置いておけば済む話、と片付けることもできる。

このような見方を払拭するには、YouTubeが大画面に最適化したUI「LeanBack」を開発したように、テレビでウェブ閲覧する必然性を実感させる、Google TVに最適化されたUIの採用を、引き続き各社に働きかけていく必要があるだろう。だが、どれだけのサイトが実際に最適化するかは全く未知数だ。

一方、テレビ放送やVODサービス、録画番組を統合して検索できる機能は、たしかに便利だろうし、Google TVならではのフィーチャーと言える。ただしこれも、肝心のテレビ放送やVODのコンテンツ情報について、どこまで詳細なデータを検索対象にできるかはまだ分からない。GoogleはRoviとコンテンツメタデータ提供について協議(関連ニュース)しているが、その後の経緯は明らかにされていない。

リモコンの使い勝手も気になる。Logitechはフルサイズキーボードを備えた非常に大型のリモコン、ソニーはゲームコントローラーのような形状のリモコンがそれぞれ付属するが、テレビのリモコンとしてはやや奇抜すぎはしないだろうか。

また、テレビに向かってキーをタイプすることが日常化するのか、という疑問も湧いてくる。もっとも、このあたりはアメリカと日本とで、ユーザーの嗜好の違いが多分にありそうだし、操作機器の本命はスマートフォンやタブレット型デバイスと考えている可能性も高い。

もう一つ付け加えると、Sony Internet TVではウェブとテレビの2画面同時表示ができることを強調しているが、これも取りたててアピールすべき性質のものか疑問だ。日本国内の既存のテレビでも対応しているものが多いからだ。

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Google TVはテレビとインターネット機能を統合した製品を謳いながら、今のところ「どっちつかず」になってしまってはいないだろうか。

テレビ放送やCATVを見るだけなら、手頃な製品がほかにある。インターネットのVODサービスを便利に使いたいのなら、もっと安価なRokuやApple TVに魅力を感じるユーザーも多いだろう。高速なウェブブラウジングがしたいなら、PCやタブレット型デバイス、あるいは最新のスマートフォンでも良いはずだ。

テレビとネットを単純に掛け合わせるだけなら、これまでの製品とそれほど大きくは変わらない。本格的な普及を目指すには、テレビとインターネットを統合したことで初めて可能になる、新たなユーザー体験の提供が必要になるはずだが、それはまだ、おぼろげにしか見えてきていない。

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だが、Google TVはまだ産声を上げたばかり。十分な魅力を発揮するにはまだ時間がかかるというだけかもしれない。

大きな希望は、Google TVはOSをアップデートすることが可能ということだ。Androidが怒濤のスピードで新OSをリリースし、これが普及拡大の背景になっているように、Google TVも継続的にアップデートを行い、機能を増強することで、その魅力を高めていくだろう。

もう一つ、Google TV向けアプリの充実も普及のためには欠かせない。2011年の早期に、AndroidマーケットからGoogle TV対応アプリを手に入れることができるようになる。公式アプリだけでなく、サードパーティーや個人が開発したGoogle TV対応アプリが次々に出てくれば、製品の魅力は大きく高まる。思いもよらぬ手法で「テレビ×インターネット」の可能性を押し広げるアプリが登場する可能性も大いにある。Google TVの成否は、そのようなアプリがどれだけ提供されるかに懸かっていると言っても過言ではない。

いずれにせよ、Google TVの成功は、決してGoogleやソニー、Logitechだけで成し遂げられるものではない。コンテンツホルダーにしてもアプリ開発者にしても、周囲をいかに取り込むかという戦略が重要になる。

Google TVはAndroidと同様、オープンなプラットフォームであり、他者を開発に引き込む基盤は確保してある。となれば、あとはプラットフォームに開発者を呼び込む「数」(普及台数)の力が重要になる。そして、その数を生み出すためには、早期に製品の魅力を高めることが必要となってくる。そのためにはアプリの充実が非常に重要だ。

まるで「ニワトリと卵」のようだが、実際にどちらが先という話ではない。これらを連関させて相互にフィードバックを掛け合い、正の循環を作り出すことが必要となるだろう。まずはソニー、Logitechの対応機器のスタートダッシュが成功するかどうかに注目したい。

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