“サブウーファー”のプラスオンで音楽再生が広がる!POLK AUDIOのブックシェルフ「ES15」で効果を検証
フロア型とブックシェルフ型はどう使い分ける?
スピーカー選びで実に悩ましいのが、「フロア型にするか、ブックシェルフ型にするか」という問題だろう。一般的には、豊かな低域を求めるならフロア型、コンパクトさと明瞭な音を重視するならブックシェルフ型、という選択になる。
しかし、ここにサブウーファーを加えると、話は大きく変わってくる。
今回はPOLK AUDIOの「Signature Elite」シリーズから、フロア型の「ES60」と、ブックシェルフ型「ES15」+サブウーファー「ES8」という2つのシステムを比較試聴。現代の音楽再生において、果たしてどちらが魅力的なのかを探ってみたい。
「Signature Elite」シリーズの技術ポイント
ES60は、シリーズのフラグシップに位置するフロア型スピーカーだ。ソフトドーム型ながら40kHzまで再生可能な2.5cm径テリレン・ドーム・トゥイーターと、3基の16.5cm径マイカ強化ポリプロピレン・ウーファーを搭載し、スリムなキャビネットから広帯域かつ力強いサウンドを引き出す。

一方のES15は、2.5cm径テリレン・ドーム・トゥイーターと13cm径ウーファーによる2ウェイ・ブックシェルフ型。コンパクトながら、Signature Eliteシリーズらしい開放的で快活なサウンドを楽しめる。両機とも「Power Port」や「Dynamic Balance」などの独自技術によって、クリアで爽快な音楽表現を実現している。

そして今回組み合わせたES8は、20cm径ウーファーと100Wアンプを搭載するサブウーファー。ES15では再生しにくいローエンドを補い、システム全体の再生レンジを拡張する。

対してブックシェルフ型は、最低限のユニット構成によるまとまりの良さと、シンプルで快活な音楽表現を楽しみやすい。低域が過多になりにくく、音像の明瞭度も得やすい。そこにサブウーファーを組み合わせれば、メインスピーカーの個性を生かしながら、必要な低域だけを後から加えるという柔軟なシステム構築が可能になる。
そもそも、いまサブウーファーが改めて注目される背景には、音楽ソースそのものの変化があると言えるだろう。洋楽的なサウンドメイクが一般化した現在では、邦楽でもエレクトリックなキックドラムやベースが多用され、30〜60Hz付近の深い低域まで充実したソフトが珍しくない。この帯域を十分に再生できるかどうかは、音楽のスケール感やグルーヴ感にも大きく影響する。
さらに、HDMI入力を備えたプリメインアンプが増え、リビングシアターとステレオオーディオを一つのシステムで兼用するケースも増えている。映画やドラマにはサブウーファー専用のLFE信号を含むコンテンツも多く、深いローエンドを再生できる環境の重要性は高まっている。
もちろん音楽再生でも、ブックシェルフ型にサブウーファーを加えることで、音楽全体のスケール感は大きく変わる。しかもサブウーファーは音量やクロスオーバーを調整できるため、部屋や音量に合わせて低域を柔軟に補える。
単に「低音を増やす」のではなく、メインスピーカーの得意な部分を生かしながら、必要なところだけを補える。そこにこそ現代のサブウーファー活用の面白さがあると筆者は考えている。
ヴォーカルやベースの密度と音楽全体の重心が増していく
では、実際の音はどうか。まずフロア型のES60は、単体ですでにかなり低い域まで再生できる。ケイコ・リー『Fragile』では、エレクトリックベースのプレゼンスが豊かで、厚みと存在感がありながら、音楽が重くならない軽やかさも備えている。
ヴォーカルや各楽器の音像が手前へ引き寄せられるような描写も印象的だ。テリレン・ドーム・トゥイーターによる高域は柔らかく滑らかでありながらフォーカスがあり、シェイカーやシンバルも明瞭に浮かび上がる。
バッハ・コレギウム・ジャパンの『J.S.バッハ:ロ短調ミサ』では、暖色系のソフトな音色と豊かなスケール感が心地よく、通奏低音を担う楽器の動きや、空間に漂う残響まで柔らかく描き出す。
試しに、ここにES8を加えてみると低域の厚みは増すものの、ES60ではその効果を十分に生かし切れない印象だった。そもそもES60単体でも、ES8と同じく32Hz(-3dB)の深さにまでリーチするためだ。最も低いクロスオーバーと控えめな音量でも低音の厚みは加わるため、低域楽器の量感を求めるなら意味はある。しかし、ステレオ音楽再生を中心に考えるなら、ES60単体の完成度を優先したいと筆者は感じた。
一方、ES15はブックシェルフ型ながら低域の量感もしっかりしている。ビル・チャーラップ・トリオ『Notes From New York』ではウッドベースが腰高にならず、適度なふくよかさを伴って描かれる。『Fragile』ではさすがに深い低域に限界を感じるものの、しなやかでしっとりした質感と明瞭な輪郭を両立。ロ短調ミサでも各楽器の姿を刺々しさなく、見通しよく描き出した。
ここにES8を加えると、印象は大きく変わる。50Hz付近の低い設定で控えめに加えると、サブウーファーが鳴っていることを意識させないまま、ヴォーカルやベースの密度と音楽全体の重心が増していく。ロ短調ミサでは空間の広がりとエネルギー感が増し、木管楽器の瑞々しさもいっそう引き立った。チャーラップではピアノの滑らかさや存在感、ウッドベースの力感が増し、シンバルが上方へ舞い上がる感覚やドラムセットの立体感も向上する。
自然に低音を足すためにはサブウーファーの設定が大事
ここで重要なのは、ES8を「低音を足す装置」として使わないこと。ES15の音楽を下から支えるように、パッと聴きでは判別できないほど、ごく控えめに加えることによって、ブックシェルフ型ならではの快活さを保ったまま、音楽のスケールを拡張できるのである。
サブウーファーのセッティングは、まずクロスオーバー周波数を設定可能な範囲の最も低い位置からスタート使用。音量を大まかに合わせたら、ヴォーカルを含むソースを再生しながら、声の存在感や音色が不自然にならない範囲で少しずつクロスオーバーを上げていく。クロスオーバーを決めた後、最後に音量を微調整するのがポイントだ。
位相は、サブウーファーを加えたときに低域の量感や音像が明確に増す位置を選びたい。低音が奥へ引っ込んだり弱くなったりする場合は、反対側の設定を試すと良い。設置位置も重要で、左右スピーカーのウーファーとサブウーファーの振動板までの距離をできるだけ揃える。そのため、左右スピーカーと一直線ではなく、少し奥に置いたほうが自然になる場合もある。
また、部屋の中央付近は定在波の影響が強く出ることがある。その際は、サブウーファーの振動板やバスレフポートの中心軸を、部屋の中心から左右へ少しオフセットすると、低域の偏りを抑えやすい。
理想をいえばステレオ2台での運用だが、1台でも十分な効果は得られる。ポップスやロックでは低域成分がモノラルに近い形で収録・ミックスされることが多いためだ。特にブックシェルフ型との組み合わせなら、1台でも音楽のスケール感を大きく高められる。
サブウーファーを加える魅力は、単に低音を増やすことではない。メインスピーカーの個性を保ったまま、弱点となりやすいローエンドだけを自在に補えることにある。今回のES15+ES8では、サブウーファーを意識させないレベルに抑えても、ヴォーカルや楽器の厚み、音楽全体の重心、空間のスケール感が確実に向上した。
低域をほんの少し加えるだけで、同じスピーカーが一回り大きなシステムのように鳴り始める。その変化を耳で確かめながらセッティングを追い込むことも、オーディオの楽しみの一つだろう。
ブックシェルフ型を愛用しているなら、まずは1台のサブウーファーから試してみたい。ブックシェルフ型ならではの快活さを残したまま、音楽のスケールを一段広げる。そんなオーディオの楽しみ方を、ぜひとも体験していただきたい。
(提供:株式会社ディーアンドエムホールディングス)本記事は『季刊・Audio Accessory vol.202』からの転載です

