クルマで楽しむドルビーアトモス。メルセデス・ベンツ×ブルメスター×Apple Musicの新体験!
自動車の電動化や自動運転技術が進む現在。自動車メーカー各社は「車内をいかに快適に過ごすか」に焦点を当てている。そこで欧州を中心に採用が進んでいるのが、立体音響技術であるドルビーアトモスだ。昨年メルセデス・ベンツは各社に先駆け、我が国でのドルビーアトモス再生に対応したので実際に聞いてみた。
自動車でこそドルビーアトモスが生きる
ドルビーアトモスとは、5.1チャンネルをはじめとする従来のサラウンド再生に加え、高さ方向の再現を可能とするオブジェクト指向のサラウンドシステム。
当初は映画館などの業務用であったが、ここ数年は音楽再生の分野にも普及が加速。Apple Musicをはじめとする様々なサブスクリプションサービスが、ドルビーアトモス再生を推進している。
自動車でドルビーアトモスは必要なのか。筆者は自動車だからこそ利用する価値があると考える。
家庭用としてドルビーアトモス対応サウンドバーが増えているが、それはあくまで疑似的なものだ。本来のドルビーアトモス体験を望むなら、天井にスピーカーを設置し、AVアンプを導入するなど敷居や費用がかなりかさむ。だが自動車の場合は、最初から天井面などにスピーカーが設置されている。
音響設計陣からすれば、耳の位置がほぼ固定できるため、狙った音や効果をオーナーに届けることができる。
さらに、電気自動車の普及にともない、欧米と中国を中心に「自動車は第2の部屋(家)」という考え方が広まりつつある。
というのも電気自動車なら停車中でもエンジンを回す必要がなく、周囲と燃料代を気にせずに映画が愉しめるからだ。その後押しもあり、アッパークラスのモデルを中心にドルビーアトモスの導入が増えつつある。
いっぽう日本に目を向けると、その普及は遅れているのが現状だ。それは停車中の車内で映画を観るなどの楽しみを求めている人が少ないからだろう。
その中、メルセデス・ベンツは日本で販売する車種としては初めて、一部の車種でドルビーアトモス再生を解禁した。筆者が聞いた話では、他社もこの動きに追従するようで、2026年後半には、我が国でもドルビーアトモスが愉しめる車種が増えることだろう。
Apple Musicのアプリからアトモス音源をチェック
メルセデス・ベンツでドルビーアトモスを利用するには幾つか条件がある。それは対応するブルメスターのカーオーディオシステムを搭載し、かつ車両側にApple Musicのアプリがインストール済みであること。Apple Musicは現行車種でも搭載していない場合があるようなので注意して頂きたい。
利用するには、手持ちのスマートフォンをデザリング許可にした状態で車両と接続。インターネットが使える状態にする必要がある。
この時、Apple CarPlayやAndroid AUTOが起動するが、アプリをメルセデス側の画面に戻す(またはCarPlayをオフにする)必要がある。ただCarPlayをオフにした場合、車両とのデザリングもオフになる時があるようなので注意が必要だ。
次に車両のメイン画面から「オンラインミュージック」を選択。Apple Musicを選びアカウント等の必要項目を入力すれば、ドルビーアトモスが再生できる環境が整う。実際にドルビーアトモスか否かは、画面上のアイコンで確認できる。
それでは聴いてみよう。なのだが、ドルビーアトモスのロゴが出る=立体的なサウンドが愉しめるというと、そう感じない場合がある。試しに人気グループアイドルの楽曲をかけてみたところ、画面上にはドルビーアトモスのロゴが表示されている。通常のステレオ再生のように聞こえた。
クラシックでも色々と試したが同様であった。このドルビーアトモスと思われる音源が、ステレオ音源に聴こえるのが、メルセデス側の問題なのか、音源側の問題なのか、それともApple Music側の問題なのかは不明だ。ただ、そういうことが起きうる、ということだけは念頭においておいて頂きたい。
立体的に聴こえる音源はないかと捜して見つけたのが、マライア・キャリーのクリスマスソング集だった。有名な「All I Want for Christmas Is You」を再生してみると、ヴォーカルとドラムスは前方から、バックコーラスや演奏はリア側から聴こえる。つまり自分を中心に演奏が行われているという印象。
前席ではマライアの声がステレオ再生よりも明瞭で、独特の歌い方がよくわかる。新しい発見が幾つもある。ステレオ音源に慣れた耳には違和感を覚えなくもないが、これはアリの表現だ!
音像が明瞭でありながら、前後左右の音のつながりも良好で、ドルビーアトモスのテストソースなどは綺麗に音が回る。つまりバラバラに鳴っている感じがしない。
感心したのは後席で、バックコーラス主体の表現でマライアの声は遠く感じるのだが、それが逆にリアリティを増しているように感じさせたのだ。
ステレオ再生の場合、前席はよいけれど後席はおざなり、という車両を散見するが、メルセデス・ベンツとドルビーアトモスの組合せは、後席でもキチンと楽曲が愉しめる。これは凄いことだ!
ブルメスターのシステムでは、フォーカスポイントという設定項目が用意されている。これをドライバー側にすると、バックコーラスの音量が大きくなる。逆にすればマライアの声が大きくなった。これはこれで面白い。
サラウンドにサラウンドをかけることもできる。サラウンドにすると、より包み込まれる感覚が得られるが、少し音像がぼやけるようにも感じられた。これは好みがわかれるところだろう。
安定したネットワーク環境には課題あり
運転中に快適に聴けるかも実験した。ストリーミングサービスを利用するため、高速道路や地方を走行中など、電波状態によっては音が途切れる場合があった。
これは従来のストリーミングサービスでも起こることだ。ただデータ量が多いためか、音切れから復旧までに時間がかかり、音が出たと思ったらステレオ音源だった、ということも。
念のため自宅LANと車両をWi-Fi接続して確認したところ快適に音楽が楽しめたので、通信環境の問題と断言できるだろう。
筆者が車両側の設定項目などを見た限りにおいては、iPhoneのようにApple Musicのドルビーアトモス音源をダウンロードする項目は見当たらなかった。できればダウンロードして音楽を愉しめるようにしてほしいと感じた。
通信の課題はあるものの、車内のあちらこちらから音が聴こえ車内が音で満たされる感覚はとても楽しいものだ。しかもブルメスタークオリティで。このサウンドを自宅で構築したら、いったい幾らかかるだろうか。
自宅はステレオ、自動車はドルビーアトモスという使い分けも面白そうだ。ともあれ自動車から始まる、新しい音楽との付き合い方を見た気がした。
